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第60話 衝撃
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「随分親し気に話しているようにも見えますね…。ここからだと遠すぎて何を話しているのか会話の内容を聞くことが出来ませんね。非常に残念です…。あ!テレシアさんがジョンさんに何か手紙の様な物を押し付けてきましたよ。どうするんでしょう…。まぁ!手紙を受け取りましたよ!しかもその場で開封して中身を見ています。…随分真剣に読んでいますね。それにしても本人の目の前でラブレターを読むなんてジョンさんも凄いですね。尤もテレシアさんもある意味凄いですけど。何しろご自分の書いたラブレターを目の前で読まれてしまっているのですから…」
ノリーンが感想と実況を交えながら興奮した様子で語っている。
けれど…。
「本当に…あれはラブレターなのかしら…?」
思わずポツリと呟く私にノリーンが不思議そうな顔で私を見る。
「ユリア様…?」
「いいえ、恐らくあれはラブレターなんかじゃないわ。だってあのジョンが素直に受け取る筈ないもの。恐らく恋文のような物を渡された段階で、鼻で笑って炎の魔法でその場で燃やしかねないわ…いいえ、彼なら絶対にやるに決まっているわ!」
「ど、どうしたんですか?ユリア様?」
ノリーンが声を掛けて来たその時…。
クルリとジョンがこちらを振り向いた。まさか見つかったっ?!
「隠れて、ノリーンッ!!」
言うや否や、私はノリーンの頭を掴んでグイッと下げさせた。
「いい?ノリーン。このまま背をかがめた状態で窓の下に身体が隠れて外から見えないように教室まで歩くのよ」
「ええ?!な、何故そんな恰好で歩かなければいけないのですか?」
「ジョンに見つからない為よ!」
背中を丸めながら歩く私とノリーン。
「で、でも何故ジョンさんに見つかってはいけないのですか?」
「…分らないわ」
「は?」
「理由は分らないけど…私の勘が言ってるのよ。今、絶対にジョンに見つかってはいけないって」
「は、はぁ…」
そして私とノリーンは周囲の冷たい視線と嘲笑を浴びながら教室へと戻った―。
****
ガラガラガラガラ…
走る馬車の中、私は本を呼んでいるジョンの様子をチラチラと伺っていた。
「…何ですか?ユリアお嬢様。先程から私の顔をチラチラと見て…」
まただ、学園を出るとガラッと態度が変わるジョン。
「…ねぇ、ジョン…」
「何ですか?」
「私に何か言うことはないかしら?」
「言うこと…ありますね」
嘘っ?テレシアの話…教えてくれるの?!
「本当っ?!何っ?!言ってみて頂戴っ!」
「ええ、いいでしょう。まず今日帰宅してからの予定ですが、最初に歴史の授業から始めましょう。歴史は割と面白い分野ですので勉強が苦手なユリアお嬢様でも親しみやすいと思いますので」
「何だ…そっちのほうなのね…」
思わず、口から本音が出てしまった。
「何ですか?そっちの方って…」
「いいえ、別に何でも無いわ」
そして扉に寄りかかるように馬車の窓から外を眺めていたその時―。
ガタンッ!
突然馬車が大きく傾いた。
「え?」
「何だ?!」
ジョンが慌てて立ち上がり、御者台に目を向けて大声を上げた。
「大変だっ!御者がいないっ!」
「え?!」
見ると御者台に人の姿は無く、馬だけが走っている。
「大変だっ!あの先は崖だっ!」
ジョンが叫ぶ。
「えっ?!」
ガチャッ!!
その時、寄りかかっていた馬車の扉が何故か突然開いた。
「!」
そのまま疾走する馬車から落ちる私。
「ユリアッ!!」
私が最後に見たのはジョンが手を差し伸べて私の腕をつかもうとしているところだった。
ダンッ!!
激しい振動と共に、私の意識は闇に沈んだ―。
ノリーンが感想と実況を交えながら興奮した様子で語っている。
けれど…。
「本当に…あれはラブレターなのかしら…?」
思わずポツリと呟く私にノリーンが不思議そうな顔で私を見る。
「ユリア様…?」
「いいえ、恐らくあれはラブレターなんかじゃないわ。だってあのジョンが素直に受け取る筈ないもの。恐らく恋文のような物を渡された段階で、鼻で笑って炎の魔法でその場で燃やしかねないわ…いいえ、彼なら絶対にやるに決まっているわ!」
「ど、どうしたんですか?ユリア様?」
ノリーンが声を掛けて来たその時…。
クルリとジョンがこちらを振り向いた。まさか見つかったっ?!
「隠れて、ノリーンッ!!」
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「いい?ノリーン。このまま背をかがめた状態で窓の下に身体が隠れて外から見えないように教室まで歩くのよ」
「ええ?!な、何故そんな恰好で歩かなければいけないのですか?」
「ジョンに見つからない為よ!」
背中を丸めながら歩く私とノリーン。
「で、でも何故ジョンさんに見つかってはいけないのですか?」
「…分らないわ」
「は?」
「理由は分らないけど…私の勘が言ってるのよ。今、絶対にジョンに見つかってはいけないって」
「は、はぁ…」
そして私とノリーンは周囲の冷たい視線と嘲笑を浴びながら教室へと戻った―。
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ガラガラガラガラ…
走る馬車の中、私は本を呼んでいるジョンの様子をチラチラと伺っていた。
「…何ですか?ユリアお嬢様。先程から私の顔をチラチラと見て…」
まただ、学園を出るとガラッと態度が変わるジョン。
「…ねぇ、ジョン…」
「何ですか?」
「私に何か言うことはないかしら?」
「言うこと…ありますね」
嘘っ?テレシアの話…教えてくれるの?!
「本当っ?!何っ?!言ってみて頂戴っ!」
「ええ、いいでしょう。まず今日帰宅してからの予定ですが、最初に歴史の授業から始めましょう。歴史は割と面白い分野ですので勉強が苦手なユリアお嬢様でも親しみやすいと思いますので」
「何だ…そっちのほうなのね…」
思わず、口から本音が出てしまった。
「何ですか?そっちの方って…」
「いいえ、別に何でも無いわ」
そして扉に寄りかかるように馬車の窓から外を眺めていたその時―。
ガタンッ!
突然馬車が大きく傾いた。
「え?」
「何だ?!」
ジョンが慌てて立ち上がり、御者台に目を向けて大声を上げた。
「大変だっ!御者がいないっ!」
「え?!」
見ると御者台に人の姿は無く、馬だけが走っている。
「大変だっ!あの先は崖だっ!」
ジョンが叫ぶ。
「えっ?!」
ガチャッ!!
その時、寄りかかっていた馬車の扉が何故か突然開いた。
「!」
そのまま疾走する馬車から落ちる私。
「ユリアッ!!」
私が最後に見たのはジョンが手を差し伸べて私の腕をつかもうとしているところだった。
ダンッ!!
激しい振動と共に、私の意識は闇に沈んだ―。
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