上 下
43 / 126

第43話 誤解を招く発言

しおりを挟む
 え?婚約破棄?本当にしてくれるのだろうか?でも、もしそうなら願ったり叶ったりだ。

「はい、どうぞ宜しくお願い致します」

笑みを浮かべて頭を下げる。

「…へ?」

一瞬ベルナルド王子は固まり…次の瞬間、我に返ったかのように言った。

「おい、今俺は婚約破棄させてもらうぞ?と言ったんだぞ?」

「はい。是非、婚約破棄して下さい。そうですね…。出来れば早急にお願い出来ますか?今日中に出来ればいいのですけど…。あ、ひょっとして婚約破棄って上を通さなければならないのでしょうか?」

「な、何だ?上を通すとは…」

「ええ。ですから…通常だと大事な決定を仰ぐには上司の許可が必要なのですが、この場合だと、上というのは国王陛下の事をさします。つまりベルナルド王子のお父様です」

「あ、ああ。確かに父の許可は必要かも知れないが…」

「ならお城に帰宅後、速やかに国王陛下にお伝え願えますか?ご在宅ですよね?私も父に婚約破棄された事になったと伝えておきますので。それでは早急に手続きお願い致します」

そして頭を下げた。

「お、お前…。本気でそんな事言っているのか?」

「ええ、本気です。第一…ベルナルド王子は私のことを嫌っておいでですよね?」

「うっ!」

「お話によると、別に私達の婚約は政治が絡んだ婚約ではありません。私が無理やりベルナルド王子と婚約関係を結ばせてしまったわけですよね?本当に申し訳ございませんでした。もう二度とベルナルド王子にはまとわりつきません。お約束致します」

「…」

何故か呆気に取られた顔で私を見つめる王子。しかし、次の瞬間…。

「フワッハッハッハッ!!」

両手を腰に当てて胸を反らせて大笑いする。…何だろう?嬉しすぎて笑っているのだろうか?そこで私は言った。

「そんなに嬉しいのですね?私もとても嬉しいです。これで丸く収まりますね」

しかし、私の言葉にカチンときたのか、王子の顔が険しくなる。

「おい!何故お前まで喜ぶっ!喜んでいいのはこの俺だけだっ!お前は本来俺に婚約破棄を言い渡されて嘆き悲しむべき立場にあるはずだろうっ?!」

「え?私が?何故ですか?」

どうして私が婚約破棄を言い渡されて喜んではいけないのだろう?

「そうか…分かったぞ…?」

「何が分かったのですか?」

「お前…ひょっとすると、さっきの男と浮気していたなっ?!いや、あの男に鞍替えしたな?!あいつはお前の恋人なのだろうっ?!」

「は?」

私があのジョンと浮気?鞍替え?いやいや、絶対ありえないでしょう?何故私があんな俺様気質の性根が腐ったジョンと恋人同士にならなければいけないのだ?

「そうか…あの指輪も実はあいつから貰った物だったのだな?」

「ええ、そうですね」

そこは事実だから否定をしない。

「このバカッ!」

すると耳元でジョンの声が聞こえた。

「キャアッ!!な、何?何?!」

あまりの驚きで口から心臓が飛び出しそうになった。しかし、私のそんな様子にお構いなく、ベルナルド王子は続ける。

「ほら、見ろ。やはり認めたな…?これで決定だな。お前とあの男は恋人同士だという事が…。何故今指輪をはめていないのかは不明だが…もしかするとあいつと結婚の約束でもしたか?それで今朝になって突然俺に対して態度がおかしくなったのだろう?!だがな…これだけは言っておく。お前は利用されているだけだ。何故ならお前は公爵令嬢だからな?あの男は欲にまみれてお前を…ギャアッ!熱っ!!」

突然ベルナルド王子が悲鳴を上げた―。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷

またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。

朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。 婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。 だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。 リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。 「なろう」「カクヨム」に投稿しています。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

処理中です...