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第40話 訪問者
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「ふぅ~…やっと家に帰れたわ…」
自室にたどり着くなり、私はベッドの上に仰向けに寝転がった。しかし…。
「嫌だわ…こんな部屋…。落ち着くどころか、イライラが募ってしようがないわ。本来自分の部屋というものはリラックスする為にあるべきなのに、逆にいるだけで疲れてくるとはどういう事よ…」
黄金色に輝く高い天井なんて、金目の物に目がない人間にとっては歓喜するほど嬉しいかも知れないが、あいにく私にはそのような趣味はない。
「やっぱり落ち着く天井は白地にもっと低い天井で、壁紙も白地で、カーテンは落ち着く薄いベージュ色のような…そして部屋もこじんまりした広さがいいわよね…」
そこまで言いかけて、私ははたと気がついた。今、一瞬自分の脳裏に先程口にしたばかりの部屋のイメージが浮かんだのだ。
「え…?何?今の記憶は…?」
大の字に寝っ転がったまま目を閉じてもう一度今頭に浮かんだ映像を思い出そうとしても浮かばない。代わりに頭に浮かんだのは意地悪そうな笑みを浮かべた恐ろしいほど顔の整ったジョンの姿である。
「もうっ!何でこんなに苛つく部屋で苛つく男の顔を思い出さなくちゃならないのよ!」
ガバッとベッドから起き上がった時、すぐ側で声が聞こえた。
「苛つく男…もしかしてそれは私のことでしょうか?ユリアお嬢様」
「キャアッ!い、いきなり背後から声を掛けないでよ!し、心臓が止まるかと思ったでしょう?!」
バクバクする心臓を抑えながら私はジョンを見て抗議した。
「すみません、しかし気配を消して行動するのも護衛騎士の務めです。ユリアお嬢様の命を狙う輩に近付くには気配を消して置かなければなりませんからね」
「だ、だけどここは私の部屋。命を狙う輩なんているはずないでしょう?」
すると突然声色を変えてジョンが言う。
「本当にそうでしょうか…?」
「え…?な、何よ…」
「本当にこの屋敷にはユリアお嬢様の命を狙う不届き者はいないと言い切れるでしょうか?」
「ちょ、ちょっとやめてよ…そんなおっかない声で恐ろしいことを言うのは…」
鳥肌を立てながら私はジョンを見る。すると彼は言った。
「屋敷の中は安心だと思うのがそもそもの間違いです。いいですか?ユリアお嬢様が落ちた池はこの屋敷の敷地内にあるのですよ?何故あの時池に落ちたのか…記憶喪失のユリアお嬢様に言っても無駄な事ですが、少なくとも池に落ちる前まではユリアお嬢様は今とまるきり人格が違いました。…やはり池に落ちたショックで頭がおかしくなってしまったのでしょうか?」
まるで全てを見越しているかのようなジョンの瞳に見つめられ、私の胸が高鳴ってくる…はずがないっ!
「ちょっと…人を小馬鹿にするような笑みを浮かべないでくれる?それにね、この際だから言っておくけどいくら私の護衛騎士で、部屋が扉1枚で繋がってるとは言え、勝手にレディの部屋へ入ってこないでよ」
「それは失礼致しました。では次回からは事前に声を掛けてからお部屋に侵入させて頂きます」
頭を下げるジョンだが、言い回しが気に入らない。
「ねぇ、お願いだから侵入という言葉は使わないでくれる?私が許可したら部屋に入ってくるようにしてよ?」
「注文が多い方だ…」
ジョンがボソリと呟く言葉は私の耳にバッチリ聞こえている。
「ちょっと…聞こえているわよ。今の台詞」
「ええ、当然です。聞こえるように言ったのですから」
しれっと言うジョンにブチ切れそうになる。
「あ、あのねぇ…っ!そもそも私のところに来たということは、何か私に用があったのでしょう?」
「ええ、そうです。実はベルナルド王子が先程ユリアお嬢様を訪ねていらしているのです」
私はその言葉に耳を疑った。
「え?い、今…何て言ったの…?」
「ええ、ですからベルナルド王子が30分ほど前にユリアお嬢様を訪ねて屋敷にいらしておりますと伝えに参りました」
「な、何ですってっ?!た、大変!」
慌ててベッドから飛び降りた私にジョンは尋ねる。
「何をそんなに焦っているのですか?」
何故かジョンの顔が険しくなる。
「当然でしょう?相手は仮にも王子様なのよ?そんな偉い身分の人をお待たしていたなんて失礼じゃないの?何とか謝って許して頂かないと…」
するとジョンは何故か嬉しそうな笑みを浮かべた。
「成程…つまりユリアお嬢様が焦っていたのは愛しい婚約者をお待たせしていたからではなく、仮にもこの国の王族であるベルナルド王子をお待たせしてしまったから…というわけですね?」
「ええそうよ?それ以外にどんな理由があるの?」
大体あの王子に私は恋愛感情など持っていないし、興味も関心も無い。それどころか婚約者であるという事実は私を憂鬱な気分にさせるだけであった。
「一体何しに来たのかしら…」
「そんな事よりも今はベルナルド王子の元へ向かったほうが宜しいですよ?
「そ、そうね、これ以上苛立たせたら大変だわ。ジョン、案内して頂戴っ!」
「はい、こちらです」
私はジョンに案内され、ベルナルド王子が待つ部屋へと急ぎ足で向かった―。
自室にたどり着くなり、私はベッドの上に仰向けに寝転がった。しかし…。
「嫌だわ…こんな部屋…。落ち着くどころか、イライラが募ってしようがないわ。本来自分の部屋というものはリラックスする為にあるべきなのに、逆にいるだけで疲れてくるとはどういう事よ…」
黄金色に輝く高い天井なんて、金目の物に目がない人間にとっては歓喜するほど嬉しいかも知れないが、あいにく私にはそのような趣味はない。
「やっぱり落ち着く天井は白地にもっと低い天井で、壁紙も白地で、カーテンは落ち着く薄いベージュ色のような…そして部屋もこじんまりした広さがいいわよね…」
そこまで言いかけて、私ははたと気がついた。今、一瞬自分の脳裏に先程口にしたばかりの部屋のイメージが浮かんだのだ。
「え…?何?今の記憶は…?」
大の字に寝っ転がったまま目を閉じてもう一度今頭に浮かんだ映像を思い出そうとしても浮かばない。代わりに頭に浮かんだのは意地悪そうな笑みを浮かべた恐ろしいほど顔の整ったジョンの姿である。
「もうっ!何でこんなに苛つく部屋で苛つく男の顔を思い出さなくちゃならないのよ!」
ガバッとベッドから起き上がった時、すぐ側で声が聞こえた。
「苛つく男…もしかしてそれは私のことでしょうか?ユリアお嬢様」
「キャアッ!い、いきなり背後から声を掛けないでよ!し、心臓が止まるかと思ったでしょう?!」
バクバクする心臓を抑えながら私はジョンを見て抗議した。
「すみません、しかし気配を消して行動するのも護衛騎士の務めです。ユリアお嬢様の命を狙う輩に近付くには気配を消して置かなければなりませんからね」
「だ、だけどここは私の部屋。命を狙う輩なんているはずないでしょう?」
すると突然声色を変えてジョンが言う。
「本当にそうでしょうか…?」
「え…?な、何よ…」
「本当にこの屋敷にはユリアお嬢様の命を狙う不届き者はいないと言い切れるでしょうか?」
「ちょ、ちょっとやめてよ…そんなおっかない声で恐ろしいことを言うのは…」
鳥肌を立てながら私はジョンを見る。すると彼は言った。
「屋敷の中は安心だと思うのがそもそもの間違いです。いいですか?ユリアお嬢様が落ちた池はこの屋敷の敷地内にあるのですよ?何故あの時池に落ちたのか…記憶喪失のユリアお嬢様に言っても無駄な事ですが、少なくとも池に落ちる前まではユリアお嬢様は今とまるきり人格が違いました。…やはり池に落ちたショックで頭がおかしくなってしまったのでしょうか?」
まるで全てを見越しているかのようなジョンの瞳に見つめられ、私の胸が高鳴ってくる…はずがないっ!
「ちょっと…人を小馬鹿にするような笑みを浮かべないでくれる?それにね、この際だから言っておくけどいくら私の護衛騎士で、部屋が扉1枚で繋がってるとは言え、勝手にレディの部屋へ入ってこないでよ」
「それは失礼致しました。では次回からは事前に声を掛けてからお部屋に侵入させて頂きます」
頭を下げるジョンだが、言い回しが気に入らない。
「ねぇ、お願いだから侵入という言葉は使わないでくれる?私が許可したら部屋に入ってくるようにしてよ?」
「注文が多い方だ…」
ジョンがボソリと呟く言葉は私の耳にバッチリ聞こえている。
「ちょっと…聞こえているわよ。今の台詞」
「ええ、当然です。聞こえるように言ったのですから」
しれっと言うジョンにブチ切れそうになる。
「あ、あのねぇ…っ!そもそも私のところに来たということは、何か私に用があったのでしょう?」
「ええ、そうです。実はベルナルド王子が先程ユリアお嬢様を訪ねていらしているのです」
私はその言葉に耳を疑った。
「え?い、今…何て言ったの…?」
「ええ、ですからベルナルド王子が30分ほど前にユリアお嬢様を訪ねて屋敷にいらしておりますと伝えに参りました」
「な、何ですってっ?!た、大変!」
慌ててベッドから飛び降りた私にジョンは尋ねる。
「何をそんなに焦っているのですか?」
何故かジョンの顔が険しくなる。
「当然でしょう?相手は仮にも王子様なのよ?そんな偉い身分の人をお待たしていたなんて失礼じゃないの?何とか謝って許して頂かないと…」
するとジョンは何故か嬉しそうな笑みを浮かべた。
「成程…つまりユリアお嬢様が焦っていたのは愛しい婚約者をお待たせしていたからではなく、仮にもこの国の王族であるベルナルド王子をお待たせしてしまったから…というわけですね?」
「ええそうよ?それ以外にどんな理由があるの?」
大体あの王子に私は恋愛感情など持っていないし、興味も関心も無い。それどころか婚約者であるという事実は私を憂鬱な気分にさせるだけであった。
「一体何しに来たのかしら…」
「そんな事よりも今はベルナルド王子の元へ向かったほうが宜しいですよ?
「そ、そうね、これ以上苛立たせたら大変だわ。ジョン、案内して頂戴っ!」
「はい、こちらです」
私はジョンに案内され、ベルナルド王子が待つ部屋へと急ぎ足で向かった―。
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