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第27話 現れた王子
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理事長室を出て、教室へ向かっているとジョンが声を掛けてきた。
「良かったな、ユリア。感謝しろよ?俺のお陰で退学を免れたのだから」
「だから、私はずっと退学したいと言ってるじゃないの。むしろ退学をしたくないのはジョン。貴方でしょう?」
しかし、ジョンは言う。
「ユリア、退学なんて甘えた考えは捨てるんだ。嫌だからと言って逃げてどうする?」
尤もらしい事を言うが、ジョンの本心は分かっている。途中退学して報酬額から天引きされるのが嫌なだけなのだ。
「だから、私はこの学園を退学して別の学園に移りたいだけよ。だってこんなに学園中から嫌われているのよ?むしろ記憶喪失になったのをきっかけに、私のことを誰も知らない場所へ行って、新しく人生をやり直したいわ」
「だったら、2ヶ月我慢しろ。それ以降は好きにしていいから」
「出たっ!ほら、やっぱりそれが本音じゃないのっ!単に自分の報酬額が天引きされるのが嫌なだけでしょう?でも、仕方ないから2ヶ月は我慢してもいいけど…その代わり、反省文とレポートは代わりにやってくれるのでしょう?」
するとジョンが呆気にとられたような顔で私を見る。
「何故俺がやらなければならない?そんな事はユリアが1人でやるべきことだろう?」
私はその言葉に耳を疑った。
「な、何ですって…?元はと言えば、こんな事になったのはジョン!貴方が私の姿に変身してキャロライン先生に炎の玉を投げつけて、髪を焦がしたのが原因でしょう?反省文とレポートだって貴方が提案したのだからジョンが書くのが筋でしょう?」
「だが、はい分かりましたと返事をしたのは俺じゃない。ユリアだろう?自分で返事をしたのだから、責任を持って自分でやる事。分かったな?」
「何ですって~っ!」
気づけば私とジョンは廊下を歩きながら言い争いをしていた。そんな私達を興味深げに見ている学生たち。
その時―。
「おい、ユリア!」
背後で声を掛けられた。勿論声の主は…。
「あ…ベルナルド王子…」
またしても面倒な人が現れた。しかも今回は3人の腰巾着に銀の髪の…確かテレシアと言う名前だっただろうか?彼女も一緒だ。
「何ですか?我々に何の用です?今取り込み中なので、何か用件があるなら後にして頂けませんか?」
ジョンが仮にも王子に向かってとんでもない言い方をする。案の定…。
「おい!貴様っ!」
「口を慎めっ!」
「仮にもベルナルド様はこの国の王子なのだぞっ?!」
1人は銀の髪の青年、もう1人は黒髪の青年、そして残りは青い髪の青年が次々に言う。王子を含め、3人共ハンサムではあったが…ジョンの比では無かった。ベルナルド王子にしても、ジョンの前ではその美しさが霞んで見える。王子も自分でその事を自覚しているのだろうか…どこか苛立ちを込めた目で私ではなく、ジョンを睨みつけている。
「まぁいい…。用があるのはユリア、お前だからな?」
ベルナルド王子は私に視線を移した。
「え…?私にですか?」
何だろう?今度はどんな文句を言ってくるのだろう?私は余程嫌だったのだろうか。ベルナルド王子は私を見ると言った。
「何なんだっ?!お前のその露骨に嫌そうな顔は!」
「いえ、その様な事は決してありません。それで?どの様なご用件でしょうか?」
厄介事はゴメンだ。出来ればさっさと済ませて欲しい
「な、何だと?いつもならどんなに追い払われようとしつこく俺につきまとってきたくせに…?それなのに何だ?今度はその男につきまとっているのか?」
ベルナルド王子は眉間にシワを寄せて私を見る。
え?つきまとう?ベルナルド王子には私がジョンにつきまとっているように見えるのだろうか?
「いいではありませんか、ベルナルド様。ユリア様など放っておきましょうよ」
テレシアはベルナルド王子の腕を掴み、立ち去ろうとするも王子はその場から動こうとせずに、テレシアを見ると言った。
「だめだ、テレシア。俺は今ユリアに話があるのだ。悪いが先に教室へ戻っていてくれ」
するとすかさずジョンが口を挟む。
「申し訳ございませんが、見てお分かりになりませんか?俺とユリアは今取り込み中なのです。彼女の言う通り、ご自分の教室へお戻り下さい」
「な、何だと…?おい、ユリアッ!」
今は王子に構っている暇は無い。ジョンと話し合って反省文とレポートの行方を決めなければならないのだから。
「申し訳ございません。今ジョンと大事な話をしておりますので…失礼致します。行きましょう、ジョン」
そして私はジョンの腕を取ると、ベルナルド王子達から逃げるようにその場を後にした―。
「良かったな、ユリア。感謝しろよ?俺のお陰で退学を免れたのだから」
「だから、私はずっと退学したいと言ってるじゃないの。むしろ退学をしたくないのはジョン。貴方でしょう?」
しかし、ジョンは言う。
「ユリア、退学なんて甘えた考えは捨てるんだ。嫌だからと言って逃げてどうする?」
尤もらしい事を言うが、ジョンの本心は分かっている。途中退学して報酬額から天引きされるのが嫌なだけなのだ。
「だから、私はこの学園を退学して別の学園に移りたいだけよ。だってこんなに学園中から嫌われているのよ?むしろ記憶喪失になったのをきっかけに、私のことを誰も知らない場所へ行って、新しく人生をやり直したいわ」
「だったら、2ヶ月我慢しろ。それ以降は好きにしていいから」
「出たっ!ほら、やっぱりそれが本音じゃないのっ!単に自分の報酬額が天引きされるのが嫌なだけでしょう?でも、仕方ないから2ヶ月は我慢してもいいけど…その代わり、反省文とレポートは代わりにやってくれるのでしょう?」
するとジョンが呆気にとられたような顔で私を見る。
「何故俺がやらなければならない?そんな事はユリアが1人でやるべきことだろう?」
私はその言葉に耳を疑った。
「な、何ですって…?元はと言えば、こんな事になったのはジョン!貴方が私の姿に変身してキャロライン先生に炎の玉を投げつけて、髪を焦がしたのが原因でしょう?反省文とレポートだって貴方が提案したのだからジョンが書くのが筋でしょう?」
「だが、はい分かりましたと返事をしたのは俺じゃない。ユリアだろう?自分で返事をしたのだから、責任を持って自分でやる事。分かったな?」
「何ですって~っ!」
気づけば私とジョンは廊下を歩きながら言い争いをしていた。そんな私達を興味深げに見ている学生たち。
その時―。
「おい、ユリア!」
背後で声を掛けられた。勿論声の主は…。
「あ…ベルナルド王子…」
またしても面倒な人が現れた。しかも今回は3人の腰巾着に銀の髪の…確かテレシアと言う名前だっただろうか?彼女も一緒だ。
「何ですか?我々に何の用です?今取り込み中なので、何か用件があるなら後にして頂けませんか?」
ジョンが仮にも王子に向かってとんでもない言い方をする。案の定…。
「おい!貴様っ!」
「口を慎めっ!」
「仮にもベルナルド様はこの国の王子なのだぞっ?!」
1人は銀の髪の青年、もう1人は黒髪の青年、そして残りは青い髪の青年が次々に言う。王子を含め、3人共ハンサムではあったが…ジョンの比では無かった。ベルナルド王子にしても、ジョンの前ではその美しさが霞んで見える。王子も自分でその事を自覚しているのだろうか…どこか苛立ちを込めた目で私ではなく、ジョンを睨みつけている。
「まぁいい…。用があるのはユリア、お前だからな?」
ベルナルド王子は私に視線を移した。
「え…?私にですか?」
何だろう?今度はどんな文句を言ってくるのだろう?私は余程嫌だったのだろうか。ベルナルド王子は私を見ると言った。
「何なんだっ?!お前のその露骨に嫌そうな顔は!」
「いえ、その様な事は決してありません。それで?どの様なご用件でしょうか?」
厄介事はゴメンだ。出来ればさっさと済ませて欲しい
「な、何だと?いつもならどんなに追い払われようとしつこく俺につきまとってきたくせに…?それなのに何だ?今度はその男につきまとっているのか?」
ベルナルド王子は眉間にシワを寄せて私を見る。
え?つきまとう?ベルナルド王子には私がジョンにつきまとっているように見えるのだろうか?
「いいではありませんか、ベルナルド様。ユリア様など放っておきましょうよ」
テレシアはベルナルド王子の腕を掴み、立ち去ろうとするも王子はその場から動こうとせずに、テレシアを見ると言った。
「だめだ、テレシア。俺は今ユリアに話があるのだ。悪いが先に教室へ戻っていてくれ」
するとすかさずジョンが口を挟む。
「申し訳ございませんが、見てお分かりになりませんか?俺とユリアは今取り込み中なのです。彼女の言う通り、ご自分の教室へお戻り下さい」
「な、何だと…?おい、ユリアッ!」
今は王子に構っている暇は無い。ジョンと話し合って反省文とレポートの行方を決めなければならないのだから。
「申し訳ございません。今ジョンと大事な話をしておりますので…失礼致します。行きましょう、ジョン」
そして私はジョンの腕を取ると、ベルナルド王子達から逃げるようにその場を後にした―。
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