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第18話 公爵令嬢なのに
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ジョンと一緒に教室へ戻ると、今朝初めて教室へ入った時よりも冷たい視線を投げつけられた…気がした。原因は分っている。恐らくジョンに無理やり私に謝罪しるよう命じられたマリーベルとその一味達の仕業だろう。その証拠にじっと意味深な目でこちらを睨み付けているからだ。
それにしても一応私は公爵令嬢。それなのに何故クラスメイト達はこんな態度を私に取れるのだろうか…?
俯きながら自分の席に着席したものの、非常に居心地の悪さを感じていた。隣に座るジョンだって私同様男子生徒達から妬みの目で見られているのに平然としている。…これが大人の余裕なのだろうか?
「だけど…本来なら私だって…」
思わずポツリと呟き、我に返った。
え?今…私だって…?
その後、何を言おうとしていたのだろう?ほんのついさっきの事なのに頭に靄がかかっているようで、まるで思い出せないのが悩ましい。
「はぁ~…もう何なのよ…」
小さくため息をついたときに、2時限目と3限目の授業を受け持つ女教師が教室に現れた。そして2時限通しで間に休憩時間が入ることも無く、『魔法学』という訳の分らない授業が開始された―。
****
12時15分―
キーンコーンカーンコーン…
チャイムの音と共に、ようやく2時限立て続けの授業、『魔法学』が終わりを告げた。この授業…魔法が一つも使えない私に取っては、最早『悪夢の授業』と呼んでも過言では無かった。何しろ誰でも出来るとされている指先から炎を出す魔法すら使えなかったのだ。クラスメイト達が次々と合格を貰っていく中、私とノリーンだけが魔法を使う事が出来ずにいた。
そして、そんな私達を見てクラスメイト達が嘲笑う様子を『魔法学』の女教師は冷淡な笑みを浮かべ、黙認している。そんな有様に、流石のジャンもこの状況に我慢が出来なくなったのか、とうとう禁断の手法…つまり自分のお得意の変身魔法?を使い、私の代理で試験を受けてくれたお陰でいかさまで合格する事が出来たのだったが…。
「つ、疲れた~…」
ようやく悪魔の授業から解放された私は机の上につっぷしていた。そんな私を隣の席で見ていたジョンが声を掛けて来た。
「ユリア、昼休みなったから一緒に食事に行こう。その分だと、どうせ場所も分らないだろう?」
「ええ。そうね…ところでジョンは学食の場所を知っているの?」
「当然だろう?俺は一カ月の間、ずっと学園の外でユリアの護衛をしていたんだから学園の地図位頭に入っているさ。何しろ、ここが違うからな」
ジョンは人差し指で自分の頭をつつきながら言う。
「ええ、そうね…。貴方は頭もいいし、魔力だって超一流。だからと言って…あれはいくら何でもちょっとやりすぎだったんじゃないかしら?」
「何がやりすぎだったんだ?」
「どうしてあんな派手な魔法を使ってしまったのよ」
ジョンが立ち上がったので、私も席を立つとジョンを軽く睨み付けた。
「え?あんな派手な魔法って…何の事だ?」
あくまで惚けるつもりなのだろうか…?並んで歩きながら私はジョンに言った。
「さっき、『魔法学』の授業で私の姿に変えて指先から炎を出す魔法を使った時の話よ。何故、火の玉なんか作ったのよ。クラス中が大騒ぎになったじゃないの。挙句にその火の玉を…よりにもよって先生に投げつけるなんて…!」
キッとジョンを睨み付けると明らかに不満そうな態度で私に言い返して来た。
「クラス中笑いものにされていながら、それを止めもしない教師が果たして良い教師だと言えるのか?あんな理不尽な扱いを受けても…ユリアは我慢するつもりだったのか?」
「そ、それは確かにそうなのだけど…私に魔法の才能がまるきりないのは事実だし…。でもこれではっきり分ったわ」
「何が分ったんだ?」
ジャンが尋ねて来る。
「私は公爵令嬢という立場にあるのに何故クラスの人達から嫌われ、馬鹿にされているか、その理由が分ったのよ。嫌われているのは…今は記憶が無いから何とも言えないけど私の性格が悪いから。そして馬鹿にされているのは私が魔法を使えないから…そうでしょう?」
隣を歩くジャンを見上げた。
「…」
しかし、ジャンは質問に答えずに肩をすくめた。
「さぁね…俺はこの学園の生徒じゃないから何も分らないな。そんな事より、学食に到着だ」
着いた場所は広いホールとなっており、長テーブルと丸テーブルの席とに別れており、大勢の学生達でひしめきあっていた。
「うわぁ…すごく混んでいるけど、席見つかるかしら?」
すると、ジャンが言った。
「俺が空いている席が無いか探してくるから、ユリアはここで待っていてくれ」
「ええ、ありがとう」
「何所にも行くなよ」
それだけ言うと、ジャンはひしめき合う学生たちの間を縫うように席を探しに向かった。
「…口は悪いけど、結局親切なのよね…」
ポツリと言うと、背後で声を掛けられた。
「何だ、誰かと思えば…またお前か。ユリア」
うっ…。
不機嫌そうなその声は…。
恐る恐る振り向くと、そこには朝出会った金の髪の青年。そして当然の如く彼に寄り添う銀色の髪の美しい少女。そして2人をまるで守るかの如く傍に立つ3人の青年達が鋭い視線を私に向けて立っていた―。
それにしても一応私は公爵令嬢。それなのに何故クラスメイト達はこんな態度を私に取れるのだろうか…?
俯きながら自分の席に着席したものの、非常に居心地の悪さを感じていた。隣に座るジョンだって私同様男子生徒達から妬みの目で見られているのに平然としている。…これが大人の余裕なのだろうか?
「だけど…本来なら私だって…」
思わずポツリと呟き、我に返った。
え?今…私だって…?
その後、何を言おうとしていたのだろう?ほんのついさっきの事なのに頭に靄がかかっているようで、まるで思い出せないのが悩ましい。
「はぁ~…もう何なのよ…」
小さくため息をついたときに、2時限目と3限目の授業を受け持つ女教師が教室に現れた。そして2時限通しで間に休憩時間が入ることも無く、『魔法学』という訳の分らない授業が開始された―。
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12時15分―
キーンコーンカーンコーン…
チャイムの音と共に、ようやく2時限立て続けの授業、『魔法学』が終わりを告げた。この授業…魔法が一つも使えない私に取っては、最早『悪夢の授業』と呼んでも過言では無かった。何しろ誰でも出来るとされている指先から炎を出す魔法すら使えなかったのだ。クラスメイト達が次々と合格を貰っていく中、私とノリーンだけが魔法を使う事が出来ずにいた。
そして、そんな私達を見てクラスメイト達が嘲笑う様子を『魔法学』の女教師は冷淡な笑みを浮かべ、黙認している。そんな有様に、流石のジャンもこの状況に我慢が出来なくなったのか、とうとう禁断の手法…つまり自分のお得意の変身魔法?を使い、私の代理で試験を受けてくれたお陰でいかさまで合格する事が出来たのだったが…。
「つ、疲れた~…」
ようやく悪魔の授業から解放された私は机の上につっぷしていた。そんな私を隣の席で見ていたジョンが声を掛けて来た。
「ユリア、昼休みなったから一緒に食事に行こう。その分だと、どうせ場所も分らないだろう?」
「ええ。そうね…ところでジョンは学食の場所を知っているの?」
「当然だろう?俺は一カ月の間、ずっと学園の外でユリアの護衛をしていたんだから学園の地図位頭に入っているさ。何しろ、ここが違うからな」
ジョンは人差し指で自分の頭をつつきながら言う。
「ええ、そうね…。貴方は頭もいいし、魔力だって超一流。だからと言って…あれはいくら何でもちょっとやりすぎだったんじゃないかしら?」
「何がやりすぎだったんだ?」
「どうしてあんな派手な魔法を使ってしまったのよ」
ジョンが立ち上がったので、私も席を立つとジョンを軽く睨み付けた。
「え?あんな派手な魔法って…何の事だ?」
あくまで惚けるつもりなのだろうか…?並んで歩きながら私はジョンに言った。
「さっき、『魔法学』の授業で私の姿に変えて指先から炎を出す魔法を使った時の話よ。何故、火の玉なんか作ったのよ。クラス中が大騒ぎになったじゃないの。挙句にその火の玉を…よりにもよって先生に投げつけるなんて…!」
キッとジョンを睨み付けると明らかに不満そうな態度で私に言い返して来た。
「クラス中笑いものにされていながら、それを止めもしない教師が果たして良い教師だと言えるのか?あんな理不尽な扱いを受けても…ユリアは我慢するつもりだったのか?」
「そ、それは確かにそうなのだけど…私に魔法の才能がまるきりないのは事実だし…。でもこれではっきり分ったわ」
「何が分ったんだ?」
ジャンが尋ねて来る。
「私は公爵令嬢という立場にあるのに何故クラスの人達から嫌われ、馬鹿にされているか、その理由が分ったのよ。嫌われているのは…今は記憶が無いから何とも言えないけど私の性格が悪いから。そして馬鹿にされているのは私が魔法を使えないから…そうでしょう?」
隣を歩くジャンを見上げた。
「…」
しかし、ジャンは質問に答えずに肩をすくめた。
「さぁね…俺はこの学園の生徒じゃないから何も分らないな。そんな事より、学食に到着だ」
着いた場所は広いホールとなっており、長テーブルと丸テーブルの席とに別れており、大勢の学生達でひしめきあっていた。
「うわぁ…すごく混んでいるけど、席見つかるかしら?」
すると、ジャンが言った。
「俺が空いている席が無いか探してくるから、ユリアはここで待っていてくれ」
「ええ、ありがとう」
「何所にも行くなよ」
それだけ言うと、ジャンはひしめき合う学生たちの間を縫うように席を探しに向かった。
「…口は悪いけど、結局親切なのよね…」
ポツリと言うと、背後で声を掛けられた。
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うっ…。
不機嫌そうなその声は…。
恐る恐る振り向くと、そこには朝出会った金の髪の青年。そして当然の如く彼に寄り添う銀色の髪の美しい少女。そして2人をまるで守るかの如く傍に立つ3人の青年達が鋭い視線を私に向けて立っていた―。
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