16 / 126
第16話 悪意の目
しおりを挟む
「ごめん。君達には悪いけど、俺は彼女に案内を頼むことにしたよ。それじゃ早速行こうかい?ユリア」
「え?私?!」
何故かジョンは私に声を掛けて来た。そ、そんな…。折角この居心地の悪い空間から解放されると思っていたのに…。
「い、いえ。あの私は…」
するとジョンが言った。
「つれないなぁ…俺達、今朝一緒に学校へ馬車で来た仲じゃないか?」
「ヒッ!」
明らかに好意を寄せる女生徒達の前でジョンはとんでもない事を言って来た。
「まぁ!ユリア様と一緒にですかっ?!」
「一体それはどういう事ですのっ?!」
「教えて下さいませっ!」
「大体ユリア様は王子様の婚約者ではありませんか?」
「それなのに別の殿方と同じ馬車に乗るなんて…!」
彼女達は私の方をチラチラと見ながらジョンに詰め寄っている。それにしても…。私はある違和感を感じていた。確か私は公爵令嬢で、この学園に通う王子様の次に爵位が高いはず。普通、こういう場合…爵位が私より低い彼女たちは私の事を時折睨みながらこんな台詞を言えるのだろうか…?
すると、ジョンもその事に気付いたのだろう。彼女達に言った。
「ねぇ、君達…」
「はい、何でしょうか?スミス様!」
リーダと思われる金髪の長い髪の女生徒が頬を赤らめて返事をする。
「君達の爵位は何だい?」
いきなりその女生徒を指さした。
「え?あ、あの、私は…」
恐らく今まで人に指など差された事は無いのだろう。焦りの表情を浮かべながら彼女はジョンを見つめている。
「どうしたんだい?俺は君に尋ねているんだけど?」
「あ…わ、私は…侯爵家の一人娘の…マリーベルですわ…」
マリーベル?は名前を聞かれてもいないのに、ちゃっかり自分の名前を言いつつ爵位を告げる。
「ふ~ん…君は侯爵家か…?それじゃそこの君は?」
続けてジョンはマリーベルの隣に立つ女生徒を指さしながら言った。
「あ、あの私は…伯爵家です。名前は…」
しかし、ジョンは待たずに次の女生徒を指さす。
「今度は君だ」
「は、はい…伯爵家です…」
そして残りの2人も伯爵家の女生徒だった。
「ふ~ん…」
ジョンは冷たい目で腕組みしながら彼女たちを一瞥すると言った。
「つまり君達は、全員ユリアより爵位が下だって事だね?それなのに…仮にも公爵根のユリアを睨み付けたり、貶めるような事を言える立場なのかな?あ、それともこの学園の中では爵位なんか全く関係ないって事かな?この学園には王子もいるんだよね?彼にも今の様な態度を取れるって事だよね?」
「ま、まさか…!そんな恐れ多い事出来る筈ありません!だって王族の方ですよ?!」
マリーベルは驚いたように目を見開く。他の女生徒達も無言で一斉に首を振る。
「それじゃ、ユリアにしたことも同じじゃないかな?彼女は何といっても公爵家なんだよ?」
「「「「「…」」」」」
ジョンの言葉に女生徒全員が黙ってしまう。
「黙っていたら分らないな」
ジョンは冷たい目で彼女たちを見る。
「あ…も、申し訳ありませんでした…」
マリーベルの言葉に、全員が次々とジョンに謝罪の言葉を述べる。
するとジョンは言った。
「謝罪する相手を間違えていないか?君達が謝罪する相手は俺じゃない。ユリアだろう?」
「「「「「!!」」」」」
全員驚いたように私を見たが、渋々謝罪の言葉を述べていく。
「どうも申し訳ございませんでした」
「生意気な口を聞いて申し訳ございません」
「大変失礼致しました」
「御無礼を働きました事、心よりお詫び申し上げます」
「本当に申し訳ございませんでした」
しかし…私の目から見ても、誰もが嫌々私に謝罪しているのは明らかだった。ジョンもその事に気付いているのか、明らかに不満気そうに見えたが、私に視線を移した。
「それじゃ、行こうか?ユリア」
「え、ええ…」
今ではこの教室の方が居心地が悪くなってしまった。ジョンが立ち上がり、廊下へ歩いていくので私も立ち上がって彼女たちに背を向けた時…。
「ふん、調子に乗って」
「王子に嫌われている婚約者のくせに」
「!」
小さな声だが、はっきりと私に聞こえるような声が聞こえた。…駄目だ、これくらいの事気にしていたら…。
私は聞こえなかったふりをして、ジョンの後を追うように教室を出た―。
「え?私?!」
何故かジョンは私に声を掛けて来た。そ、そんな…。折角この居心地の悪い空間から解放されると思っていたのに…。
「い、いえ。あの私は…」
するとジョンが言った。
「つれないなぁ…俺達、今朝一緒に学校へ馬車で来た仲じゃないか?」
「ヒッ!」
明らかに好意を寄せる女生徒達の前でジョンはとんでもない事を言って来た。
「まぁ!ユリア様と一緒にですかっ?!」
「一体それはどういう事ですのっ?!」
「教えて下さいませっ!」
「大体ユリア様は王子様の婚約者ではありませんか?」
「それなのに別の殿方と同じ馬車に乗るなんて…!」
彼女達は私の方をチラチラと見ながらジョンに詰め寄っている。それにしても…。私はある違和感を感じていた。確か私は公爵令嬢で、この学園に通う王子様の次に爵位が高いはず。普通、こういう場合…爵位が私より低い彼女たちは私の事を時折睨みながらこんな台詞を言えるのだろうか…?
すると、ジョンもその事に気付いたのだろう。彼女達に言った。
「ねぇ、君達…」
「はい、何でしょうか?スミス様!」
リーダと思われる金髪の長い髪の女生徒が頬を赤らめて返事をする。
「君達の爵位は何だい?」
いきなりその女生徒を指さした。
「え?あ、あの、私は…」
恐らく今まで人に指など差された事は無いのだろう。焦りの表情を浮かべながら彼女はジョンを見つめている。
「どうしたんだい?俺は君に尋ねているんだけど?」
「あ…わ、私は…侯爵家の一人娘の…マリーベルですわ…」
マリーベル?は名前を聞かれてもいないのに、ちゃっかり自分の名前を言いつつ爵位を告げる。
「ふ~ん…君は侯爵家か…?それじゃそこの君は?」
続けてジョンはマリーベルの隣に立つ女生徒を指さしながら言った。
「あ、あの私は…伯爵家です。名前は…」
しかし、ジョンは待たずに次の女生徒を指さす。
「今度は君だ」
「は、はい…伯爵家です…」
そして残りの2人も伯爵家の女生徒だった。
「ふ~ん…」
ジョンは冷たい目で腕組みしながら彼女たちを一瞥すると言った。
「つまり君達は、全員ユリアより爵位が下だって事だね?それなのに…仮にも公爵根のユリアを睨み付けたり、貶めるような事を言える立場なのかな?あ、それともこの学園の中では爵位なんか全く関係ないって事かな?この学園には王子もいるんだよね?彼にも今の様な態度を取れるって事だよね?」
「ま、まさか…!そんな恐れ多い事出来る筈ありません!だって王族の方ですよ?!」
マリーベルは驚いたように目を見開く。他の女生徒達も無言で一斉に首を振る。
「それじゃ、ユリアにしたことも同じじゃないかな?彼女は何といっても公爵家なんだよ?」
「「「「「…」」」」」
ジョンの言葉に女生徒全員が黙ってしまう。
「黙っていたら分らないな」
ジョンは冷たい目で彼女たちを見る。
「あ…も、申し訳ありませんでした…」
マリーベルの言葉に、全員が次々とジョンに謝罪の言葉を述べる。
するとジョンは言った。
「謝罪する相手を間違えていないか?君達が謝罪する相手は俺じゃない。ユリアだろう?」
「「「「「!!」」」」」
全員驚いたように私を見たが、渋々謝罪の言葉を述べていく。
「どうも申し訳ございませんでした」
「生意気な口を聞いて申し訳ございません」
「大変失礼致しました」
「御無礼を働きました事、心よりお詫び申し上げます」
「本当に申し訳ございませんでした」
しかし…私の目から見ても、誰もが嫌々私に謝罪しているのは明らかだった。ジョンもその事に気付いているのか、明らかに不満気そうに見えたが、私に視線を移した。
「それじゃ、行こうか?ユリア」
「え、ええ…」
今ではこの教室の方が居心地が悪くなってしまった。ジョンが立ち上がり、廊下へ歩いていくので私も立ち上がって彼女たちに背を向けた時…。
「ふん、調子に乗って」
「王子に嫌われている婚約者のくせに」
「!」
小さな声だが、はっきりと私に聞こえるような声が聞こえた。…駄目だ、これくらいの事気にしていたら…。
私は聞こえなかったふりをして、ジョンの後を追うように教室を出た―。
23
お気に入りに追加
2,841
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
またね。次ね。今度ね。聞き飽きました。お断りです。
朝山みどり
ファンタジー
ミシガン伯爵家のリリーは、いつも後回しにされていた。転んで怪我をしても、熱を出しても誰もなにもしてくれない。わたしは家族じゃないんだとリリーは思っていた。
婚約者こそいるけど、相手も自分と同じ境遇の侯爵家の二男。だから、リリーは彼と家族を作りたいと願っていた。
だけど、彼は妹のアナベルとの結婚を望み、婚約は解消された。
リリーは失望に負けずに自身の才能を武器に道を切り開いて行った。
「なろう」「カクヨム」に投稿しています。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる