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第15話 責任取れば?
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「皆さん…いきなりですが、本日は転校生を紹介致します。さぁ、君。自己紹介しなさい」
頭が禿げかかった男性教師に促され、ジョンは一歩前に進み出ると言った。
「皆さん、初めまして。ジョン・スミスです。どうぞよろしく」
ジョンが挨拶すると、女生徒たちは全員ポ~ッとした顔で彼を見つめている。
うん、うん。その気持ち…よく分る。何しろジョンは性格は最悪だが、外見だけは驚くべき程の美形の持ち主なのだから。私がジッと見つめていることに気付いたのか、ジョンがパチリとウィンクした。すると、途端に女生徒の間から黄色い歓声が沸き起こる。
「キャッ!見た見た?あの人…私にウィンクしたわ」
「何言ってるのよっ!私にしたに決まっているでしょうっ?!」
「ああ…何て素敵な方なのかしら…」
等々…。一方、気に入らないのは男子学生達だった。彼らは皆、つまらなそうな顔をしているか。もしくは敵意のある目でジョンを見ている。
「き、君達…静かにして下さい…」
一方、一番情けないのは禿げ教師の方だった。オロオロしながらも必死で女生徒達を静かにさせようと試みるも、誰一人言う事を聞かないのだから。そんな教室の様子を興味無さげに見渡しているジョン。全く…こんなに大騒ぎにさせたのだから責任を取ればいいのに…。退屈だった私は窓の外から見える景色を眺めていた。…それにしてもなんて美しい景色なんだろう…。まさか学校の中に噴水があるなんて…。
その時、突然教室がシンと静まり返った。
え?な、何?!
慌てて教壇の方を振り向くと、そこには呆然とした顔の教師の他に驚いた様子で私を見るクラス中の生徒達。い、一体何なんなの…?何故皆…私に注目しているの?訳が分からず、緊張しながら椅子に座っていると禿げ教師が言った。
「え~…そ、それでは君の席は…アルフォンスさんの席の隣がいいと言う事なので…どうぞ席に行って下さい」
「有難うございます」
ジョンは笑みを浮かべると、さらに教室中には女生徒達のうっとりした溜息が響き渡る。そしてジョンは私の方へ向かってツカツカと歩いて来る。
嘘でしょう?私の隣の席には…別の男子学生が座っているのにっ?!
隣を見ると、気弱そうな青年がオドオドしながら近づいて来るジョンを見ている。やがてジョンは青年の前でピタリと止まると言った。
「君、悪いけど…何所か空いている席に移動してくれないかな?」
「は、はいっ!」
ガタンと青年は立ち上がると自分の荷物を手早くまとめて、偶然にも?空席になっている席にそそくさと移動すると椅子を引いて素早く席に着いた。
ジョンは席が空くと、ドサリと椅子に座り私をじっと見ると口だけ動かした。
< こ れ か ら よ ろ し く >
ジョンの口は、そう語っていた―。
****
キーンコーンカーンコーン…
1限目の授業が無事終了した。
「つ、疲れた…」
授業が終わった私は思わず机の上に突っ伏してしまった。それを横目でチラリと見つめるジョン。そう言えば彼は勉学は得意だと言っていた…。恐らく学校の授業なんて彼にとっては何て事も無いのだろう。
1時限目は歴史の授業だったのだ。当然の如く、記憶喪失の私には授業内容が何の事だかさっぱり分らなかったし、世界史の授業のはずなのに聞いたことも無い歴史ばかりだった。大体、偉大なる魔法使いヨーゼフ3世って一体誰の事なのだろう?
「私がこんなにも勉強が分らないのは…きっと記憶喪失のせいね」
ポツリと言うと、ジョンが言った。
「何言ってるんだ?君は元々学校の勉強はまるで駄目だったじゃないか。記憶喪失のせいにするのはどうかしているな」
「え?そうなの?」
何処か人を馬鹿にしたような物言いにムッとなる気持ちを押さえて私はジョンを見た。その時―。
「あの…スミスさん」
そこへ5人の女生徒達がやって来た。
「あのね、今…私達が貴方に学校案内をしてあげようと思ったのだけど…どうかしら?」
リーダー頭?のような女生徒が声を掛けて来た。
ええ、どうぞ行って来て下さい。大体ジョンが隣にいるとなんだか落ち着かなくて居心地が悪いのだから。
「う~ん…そうだな…」
何故かジョンは私の顔をじっと見つめて来た―。
頭が禿げかかった男性教師に促され、ジョンは一歩前に進み出ると言った。
「皆さん、初めまして。ジョン・スミスです。どうぞよろしく」
ジョンが挨拶すると、女生徒たちは全員ポ~ッとした顔で彼を見つめている。
うん、うん。その気持ち…よく分る。何しろジョンは性格は最悪だが、外見だけは驚くべき程の美形の持ち主なのだから。私がジッと見つめていることに気付いたのか、ジョンがパチリとウィンクした。すると、途端に女生徒の間から黄色い歓声が沸き起こる。
「キャッ!見た見た?あの人…私にウィンクしたわ」
「何言ってるのよっ!私にしたに決まっているでしょうっ?!」
「ああ…何て素敵な方なのかしら…」
等々…。一方、気に入らないのは男子学生達だった。彼らは皆、つまらなそうな顔をしているか。もしくは敵意のある目でジョンを見ている。
「き、君達…静かにして下さい…」
一方、一番情けないのは禿げ教師の方だった。オロオロしながらも必死で女生徒達を静かにさせようと試みるも、誰一人言う事を聞かないのだから。そんな教室の様子を興味無さげに見渡しているジョン。全く…こんなに大騒ぎにさせたのだから責任を取ればいいのに…。退屈だった私は窓の外から見える景色を眺めていた。…それにしてもなんて美しい景色なんだろう…。まさか学校の中に噴水があるなんて…。
その時、突然教室がシンと静まり返った。
え?な、何?!
慌てて教壇の方を振り向くと、そこには呆然とした顔の教師の他に驚いた様子で私を見るクラス中の生徒達。い、一体何なんなの…?何故皆…私に注目しているの?訳が分からず、緊張しながら椅子に座っていると禿げ教師が言った。
「え~…そ、それでは君の席は…アルフォンスさんの席の隣がいいと言う事なので…どうぞ席に行って下さい」
「有難うございます」
ジョンは笑みを浮かべると、さらに教室中には女生徒達のうっとりした溜息が響き渡る。そしてジョンは私の方へ向かってツカツカと歩いて来る。
嘘でしょう?私の隣の席には…別の男子学生が座っているのにっ?!
隣を見ると、気弱そうな青年がオドオドしながら近づいて来るジョンを見ている。やがてジョンは青年の前でピタリと止まると言った。
「君、悪いけど…何所か空いている席に移動してくれないかな?」
「は、はいっ!」
ガタンと青年は立ち上がると自分の荷物を手早くまとめて、偶然にも?空席になっている席にそそくさと移動すると椅子を引いて素早く席に着いた。
ジョンは席が空くと、ドサリと椅子に座り私をじっと見ると口だけ動かした。
< こ れ か ら よ ろ し く >
ジョンの口は、そう語っていた―。
****
キーンコーンカーンコーン…
1限目の授業が無事終了した。
「つ、疲れた…」
授業が終わった私は思わず机の上に突っ伏してしまった。それを横目でチラリと見つめるジョン。そう言えば彼は勉学は得意だと言っていた…。恐らく学校の授業なんて彼にとっては何て事も無いのだろう。
1時限目は歴史の授業だったのだ。当然の如く、記憶喪失の私には授業内容が何の事だかさっぱり分らなかったし、世界史の授業のはずなのに聞いたことも無い歴史ばかりだった。大体、偉大なる魔法使いヨーゼフ3世って一体誰の事なのだろう?
「私がこんなにも勉強が分らないのは…きっと記憶喪失のせいね」
ポツリと言うと、ジョンが言った。
「何言ってるんだ?君は元々学校の勉強はまるで駄目だったじゃないか。記憶喪失のせいにするのはどうかしているな」
「え?そうなの?」
何処か人を馬鹿にしたような物言いにムッとなる気持ちを押さえて私はジョンを見た。その時―。
「あの…スミスさん」
そこへ5人の女生徒達がやって来た。
「あのね、今…私達が貴方に学校案内をしてあげようと思ったのだけど…どうかしら?」
リーダー頭?のような女生徒が声を掛けて来た。
ええ、どうぞ行って来て下さい。大体ジョンが隣にいるとなんだか落ち着かなくて居心地が悪いのだから。
「う~ん…そうだな…」
何故かジョンは私の顔をじっと見つめて来た―。
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