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27話 オリビエの反撃 3

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 オリビエはエントランスに向かって廊下を歩いていた。

ふと窓を見れば、外は先ほどよりも雨足が強くなっている。

(これは酷い降り方ね。服が濡れてしまわないように正面口まで馬車で迎えに来て貰いましょう)

そんなことを考えながら廊下を進んでいると、使用人達が大勢集まって騒いでいる姿が目に入った。誰もが話に夢中になっている為、オリビエの存在に気付いていない。

「……それで、シャロン様は部屋に引きこもってしまったそうよ」

「ミハエル様と口論されたらしいな。珍しいこともあるものだ」

「原因はオリビエ様らしいわ」

「奥様と旦那様も激しい言い争いをしていたみたいだが、結局はオリビエ様のせいだって話だ」

「え!? あの厄介者のオリビエ様が原因なのか?」

その言葉に、オリビエは足を止めた。

確かにシャロンとのトラブルは自分が発端になったものだが、もとはと言えば彼女の専属メイド2人が吹っ掛けてきたものだ。

飛んできた火の粉を振り払っただけで、オリビエは何もしていない。彼らが勝手に自滅していっただけの話だ。

オリビエは両手をグッと握りしめ……真っすぐ使用人達を見つめた。

周囲に嫌われたくない為に自分を押し殺し、言われっぱなしだった弱いオリビエはもう、何処にもいない。

『何故、我慢しなければならないのかしら?』

尊敬するアデリーナの声が再び頭の中に蘇る。

(そう……私はフォード家の家人。使用人達に言われっぱなしで我慢する私は、もう終わりよ)

決意を固めたその時。

「お、おい。あそこにいるのはオリビエ様じゃないか」

フットマンがオリビエの姿に気付き、周囲の使用人達に伝えた。すると1人のフットマンがニヤニヤしながら進み出て来た。

「おやぁ? 本当だ。影が薄いんで、全く気づかなかった」

そのフットマンはミハエル専属のフットマンで、やはり先ほどのメイド達のようにオリビエに散々嫌がらせをしてきた人物である。

「あなたも相変わらず影が薄いわね。話しかけられるまで私も全く存在に気付かなかったわ」

オリビエの発した言葉に、その場にいた使用人達が騒めいたのは言うまでもない。

「え……? 今、反論した?」
「まさか言い返してきたのか?」
「あのオリビエ様が?」
「使用人の顔すら伺っていたくせに……」

「な、な、なんだと……!」

一方、怒りで肩を震わせているのは影が薄いと言われたミハエルのフットマンだ。

「オリビエ様、今……俺のこと、影が薄いって言いましたね? 言っておきますが、俺は……」

「ええ。ミハエルお兄様の専属フットマンのニールだったわよね?」

「ふ~ん。分かっているじゃありませんか。俺はフォード家の次期当主であるミハエル様専属のフットマンなんですよ? その俺に対して影が薄いなどと言っていいと思っているんですか? このことをミハエル様に告げれば、自分の立場がますます悪くなりますよ。 でもまぁ、俺は心が広いですからね。今ここで謝罪してくれれば許して差し上げないこともありませんよ?」

まるで上から目線の態度で、勝ち誇ったかのようにニヤリと笑う

「そうね……だったらあなたがお使いを頼むのに丁度いいわね」

オリビエも口元に笑みを浮かべる。

「え……?」

その態度にニールは勿論、集まっていた使用人達も騒めく。

「ニール。私は大学へ行かなくてはならないの。馬繋場の御者の所へ行って、私の為に正面口まで馬車を持ってくるように伝えて来て頂戴、今すぐに!」

オリビエはニールを指さし……上品な笑みを浮かべた――






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