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川口直人 52
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俺は会社に休職願いを出した。家業が大変で、手伝わなくてはならなくなったからだと伝えると、意外とあっさり会社は受け入れてくれたのだ。
「家業が落ち着いたら、またいつでも戻ってきてくれよ」
それが上司の言葉だった―。
午前9時―
スーツ姿で新宿南口の改札前のカフェに入ると入口付近に父が座っていた。
「来てくれたか?直人」
父が嬉しそうにう声を掛けてきた。
「早いね、もう来ていたんだ」
椅子に座ると父からメニュー表を受け取った。
「何にする?」
「そうだな…それじゃアメリカンにするよ」
するとタイミングよく男性店員がやってきた。
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」
「アメリカンを下さい」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
店員が去っていくと早速父が話しかけてきた。
「実はあの後、色々な企業を訪問したんだ。するとある会社の社長が話を聞いてくれることになったんだ。いずれお前が会社を継いでくれるかどうかは…まだ分からないが…跡継ぎにも会わせて欲しいと言ってきたんだよ」
「そうか…それで俺を呼んだ訳だ」
その時―
「お待たせいたしました。アメリカンでございます」
先程の店員がコーヒーを持って現れ、テーブルの上に置く。
「ごゆっくりどうぞ」
頭を下げて去って行くと再び父が口を開いた。
「会社の名前は常盤商事、業界屈指の大手商事会社だ。不動産業やサービス業等多くの業界に参入している。今回、家電にも参入しようと協力してくれる企業を探していたらしいんだ。直人、これはひょっとしたらうまくいくかもしれない。業務提携出来れば会社を救えるかもしれないぞ?」
父の声に熱がこもる。
「分かった、『常盤商事』に一緒に行けばいいんだろう?」
返事をすると父は満足そうに頷いた―。
****
『常盤商事』は新宿高層ビル街の一角に地上45階建てのビルを構えていた。
「すみません。本日10時の予約で社長とお会いすることになっております川口家電の川口と申しますが」
父は受付の女性に丁寧に頭を下げた。
「川口家電様ですね?少々お待ち下さい」
女性は受付にあるタブレットを操作すると言った。
「はい、承っております。社長室は最上階にございます。右側のエレベーターよりお乗り下さい」
「「ありがとうございます」」
父と2人で頭を下げると、2人でエレベーターホールへと向かいながら父が小声で話しかけてきた。
「流石は『常盤商事』だな。確か創業は今年で120年になるらしい。これだけの大企業ならきっと業務提携に協力してくれるだろう」
父は笑顔で言うが、俺は内申不安な気持ちで一杯だった。父の右腕とも言える副社長を務めている叔父の話では、今まで色々な企業に協力を求めて気にも関わらず全て断られてきたらしい。それが今回俺を連れてくれば話を聞くと条件を提示してきたと言う。
…この話には何か裏があるのではないだろうか…?
そして、俺の予感は的中する―。
「家業が落ち着いたら、またいつでも戻ってきてくれよ」
それが上司の言葉だった―。
午前9時―
スーツ姿で新宿南口の改札前のカフェに入ると入口付近に父が座っていた。
「来てくれたか?直人」
父が嬉しそうにう声を掛けてきた。
「早いね、もう来ていたんだ」
椅子に座ると父からメニュー表を受け取った。
「何にする?」
「そうだな…それじゃアメリカンにするよ」
するとタイミングよく男性店員がやってきた。
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」
「アメリカンを下さい」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」
店員が去っていくと早速父が話しかけてきた。
「実はあの後、色々な企業を訪問したんだ。するとある会社の社長が話を聞いてくれることになったんだ。いずれお前が会社を継いでくれるかどうかは…まだ分からないが…跡継ぎにも会わせて欲しいと言ってきたんだよ」
「そうか…それで俺を呼んだ訳だ」
その時―
「お待たせいたしました。アメリカンでございます」
先程の店員がコーヒーを持って現れ、テーブルの上に置く。
「ごゆっくりどうぞ」
頭を下げて去って行くと再び父が口を開いた。
「会社の名前は常盤商事、業界屈指の大手商事会社だ。不動産業やサービス業等多くの業界に参入している。今回、家電にも参入しようと協力してくれる企業を探していたらしいんだ。直人、これはひょっとしたらうまくいくかもしれない。業務提携出来れば会社を救えるかもしれないぞ?」
父の声に熱がこもる。
「分かった、『常盤商事』に一緒に行けばいいんだろう?」
返事をすると父は満足そうに頷いた―。
****
『常盤商事』は新宿高層ビル街の一角に地上45階建てのビルを構えていた。
「すみません。本日10時の予約で社長とお会いすることになっております川口家電の川口と申しますが」
父は受付の女性に丁寧に頭を下げた。
「川口家電様ですね?少々お待ち下さい」
女性は受付にあるタブレットを操作すると言った。
「はい、承っております。社長室は最上階にございます。右側のエレベーターよりお乗り下さい」
「「ありがとうございます」」
父と2人で頭を下げると、2人でエレベーターホールへと向かいながら父が小声で話しかけてきた。
「流石は『常盤商事』だな。確か創業は今年で120年になるらしい。これだけの大企業ならきっと業務提携に協力してくれるだろう」
父は笑顔で言うが、俺は内申不安な気持ちで一杯だった。父の右腕とも言える副社長を務めている叔父の話では、今まで色々な企業に協力を求めて気にも関わらず全て断られてきたらしい。それが今回俺を連れてくれば話を聞くと条件を提示してきたと言う。
…この話には何か裏があるのではないだろうか…?
そして、俺の予感は的中する―。
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