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川口直人 41
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それは土曜日の出来事だった。加藤さんのシフトは今日が遅番だと聞いていたから21時半になった頃を見計らって電話を掛ける事にした。
何コール目かの電話で加藤さんが出た。
『もしもし?』
「あ、今電話大丈夫かな?」
『うん。大丈夫だよ』
「そっか…なら良かった。今どこにいるんだい?何時頃迎えに行こうか聞いておきたくて」
『う~ん…ちょっと待ってね。すぐにかけなおすから』
「え?う、うん…分かった。電話待ってるよ」
そして電話は一度切れた。
「一体今のは何だったんだ…?」
脳裏に何となく嫌な予感が走った。
「まぁ気にしないでおくか…」
そして加藤さんを迎えに行くべく、出掛ける準備を始めた。それから5分程の間が空いた後、スマホが部屋に鳴り響いた。
「もしもし?」
急いで取ったので1コール目で電話に出る事が出来た。
『あのね、22時過ぎ位には着きそうだよ?』
「分かった。22時過ぎだな?駅の改札で待つよ」
『ううん。駅前で待っていてくれると助かるかな』
『駅前…?分かったよ、それじゃ』
電話を切ると、首をひねった。駅前で待つ…?電車で帰ってくるわけではないのだろうか…?
首を傾げながらも手持無沙汰だった俺は部屋の片づけ始めた―。
****
21時55分―
新小岩駅の駅前で俺は加藤さんを待っていた。一体どこにいるんだろう?
人混みの中をキョロキョロ見渡していると、背後から急に名前を呼ばれた。
「川口さん、お待たせ」
「え…?どうしてそんなところから…?」
電車で帰ってこなかったのだろうか…?すると加藤さんからの説明で幼馴染のあの男に駅前まで車で送って貰ったそうだ。
また…あいつと一緒だったのか…。
恋人でも無いのに、どうしようもない嫉妬心が芽生えて来る。
自転車を押す加藤さんと2人でポツリポツリと会話しながら歩くマンションまでの道のり。
明日は加藤さんと2人、公園で俺が淹れたコーヒーを飲む約束をしている。本来ならそんなまどろっこしい真似をせずに、どちらかの部屋でコーヒーを飲む約束が出来ればいいのに、それすら俺は出来ない。あいつは平気で加藤さんのマンションに出入りしているのに…。
やがて互いのマンションの前に到着した。
加藤さんは自転車置き場に自分の自転車を入れると振り向き、言った。
「今夜も迎えに来てくれてありがとう」
「…加藤さん」
神妙な顔つきで加藤さんを見る。
「何?」
「何か…あった?」
「何かって?」
「幼馴染と…だよ」
「べ、別に何も無いよ」
その素振りには何か隠しているように見えた。けれど…俺には言うつもりは無いのだろうな…。
「そう…ならいいんだ。ハハ…駄目だな。俺って…加藤さんの事が好きだからつい気になって…彼氏でもないのに…ごめん」
自嘲気味に笑った。…片思いがこんなに辛いとは思わなかった。
やっぱり俺じゃ駄目なんだろうな…。
そう思った矢先―。
「ねえ…川口さん」
神妙な顔つきで加藤さんが俺に声を掛けてきた。
「何?」
「お友達としてじゃなくて…付き合う?」
「え…?」
一瞬加藤さんが何を言っているのか理解出来なかった。
「それって…?」
尋ねる声が震えてしまう。
「うん…彼氏と彼女の関係として…!」
言いかけている加藤さんの腕を掴んで引き寄せ、気付けば強く胸に抱きしめていた。
すると、加藤さんの手が俺の背中に回さられる。…始めてだった。加藤さんの方から俺を抱きしめてくるなんて…。
加藤さん…。
抱きしめていた腕の力を緩め、加藤さんの顎をつまんで上を向かせた。
「…」
そこには潤んだ大きな瞳で俺を見つめ綺麗な彼女の姿が。
その唇に…キスをしたい…。
徐々に顔を近づけると、加藤さんが目を閉じる。
加藤さん…。
そして俺は…彼女の唇にキスをした―。
何コール目かの電話で加藤さんが出た。
『もしもし?』
「あ、今電話大丈夫かな?」
『うん。大丈夫だよ』
「そっか…なら良かった。今どこにいるんだい?何時頃迎えに行こうか聞いておきたくて」
『う~ん…ちょっと待ってね。すぐにかけなおすから』
「え?う、うん…分かった。電話待ってるよ」
そして電話は一度切れた。
「一体今のは何だったんだ…?」
脳裏に何となく嫌な予感が走った。
「まぁ気にしないでおくか…」
そして加藤さんを迎えに行くべく、出掛ける準備を始めた。それから5分程の間が空いた後、スマホが部屋に鳴り響いた。
「もしもし?」
急いで取ったので1コール目で電話に出る事が出来た。
『あのね、22時過ぎ位には着きそうだよ?』
「分かった。22時過ぎだな?駅の改札で待つよ」
『ううん。駅前で待っていてくれると助かるかな』
『駅前…?分かったよ、それじゃ』
電話を切ると、首をひねった。駅前で待つ…?電車で帰ってくるわけではないのだろうか…?
首を傾げながらも手持無沙汰だった俺は部屋の片づけ始めた―。
****
21時55分―
新小岩駅の駅前で俺は加藤さんを待っていた。一体どこにいるんだろう?
人混みの中をキョロキョロ見渡していると、背後から急に名前を呼ばれた。
「川口さん、お待たせ」
「え…?どうしてそんなところから…?」
電車で帰ってこなかったのだろうか…?すると加藤さんからの説明で幼馴染のあの男に駅前まで車で送って貰ったそうだ。
また…あいつと一緒だったのか…。
恋人でも無いのに、どうしようもない嫉妬心が芽生えて来る。
自転車を押す加藤さんと2人でポツリポツリと会話しながら歩くマンションまでの道のり。
明日は加藤さんと2人、公園で俺が淹れたコーヒーを飲む約束をしている。本来ならそんなまどろっこしい真似をせずに、どちらかの部屋でコーヒーを飲む約束が出来ればいいのに、それすら俺は出来ない。あいつは平気で加藤さんのマンションに出入りしているのに…。
やがて互いのマンションの前に到着した。
加藤さんは自転車置き場に自分の自転車を入れると振り向き、言った。
「今夜も迎えに来てくれてありがとう」
「…加藤さん」
神妙な顔つきで加藤さんを見る。
「何?」
「何か…あった?」
「何かって?」
「幼馴染と…だよ」
「べ、別に何も無いよ」
その素振りには何か隠しているように見えた。けれど…俺には言うつもりは無いのだろうな…。
「そう…ならいいんだ。ハハ…駄目だな。俺って…加藤さんの事が好きだからつい気になって…彼氏でもないのに…ごめん」
自嘲気味に笑った。…片思いがこんなに辛いとは思わなかった。
やっぱり俺じゃ駄目なんだろうな…。
そう思った矢先―。
「ねえ…川口さん」
神妙な顔つきで加藤さんが俺に声を掛けてきた。
「何?」
「お友達としてじゃなくて…付き合う?」
「え…?」
一瞬加藤さんが何を言っているのか理解出来なかった。
「それって…?」
尋ねる声が震えてしまう。
「うん…彼氏と彼女の関係として…!」
言いかけている加藤さんの腕を掴んで引き寄せ、気付けば強く胸に抱きしめていた。
すると、加藤さんの手が俺の背中に回さられる。…始めてだった。加藤さんの方から俺を抱きしめてくるなんて…。
加藤さん…。
抱きしめていた腕の力を緩め、加藤さんの顎をつまんで上を向かせた。
「…」
そこには潤んだ大きな瞳で俺を見つめ綺麗な彼女の姿が。
その唇に…キスをしたい…。
徐々に顔を近づけると、加藤さんが目を閉じる。
加藤さん…。
そして俺は…彼女の唇にキスをした―。
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