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川口直人 38
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目の前で泣いて目をゴシゴシ擦る加藤さんがあまりにも儚げで…消えてしまうのではないかと思った瞬間、気付けば腕を掴んで引き寄せ、強く自分の胸に抱きしめていた。
くそっ…!あの男…こんなにも加藤さんを悲しませて…。俺なら、俺だったならぜったいに加藤さんを悲しませないのに…!
「あ、あの…か、川口さん…」
不意に加藤さんの声が耳に入って来た。
しまった…っ!俺は…恋人でも無いのに抱きしめてしまった…!
「ご、ごめんっ!い、いきなり抱きしめたりして…っ!驚いたよね…?」
慌てて身体を離すと加藤さんを見た。
「う、うん…確かに驚きはしたけど…。でもどうしたの…?急にあんな事して…」
そうだよな…驚くのは当然だろう。だけど、もし怖がられていたら?
俺は取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない。
「加藤さんが…泣いていたから…俺だったら…そんな悲し気な顔させないのにって思って…つい、気付いて見ればあんなことを…本当にごめん…」
だから…頼む。俺をどうか怖がらないで欲しい…。
「川口さん…」
加藤さんは微妙な表情で俺を見ている。
「本当にごめん…もう今後は加藤さんの許可なく勝手に触れたりしないから…これからも会ってくれるかな…?」
「うん、いいよ…それじゃ、私…もう行くから。お休みなさい」
「うん、お休み」
加藤さんは背を向けると足早にマンションの中へと入って行った。その様子が…まるで俺から逃げるような素振りに見えてしまった。
「加藤さん…」
1人残された俺は…愛しい彼女の名を呟いた―。
「はぁ~…」
部屋に戻り、床に座ると深いため息がもれてしまった。どうしよう…俺はまたしても加藤さんを抱きしめてしまった。もしかして、彼女の中ではもう俺は危険人物扱いされているんじゃないだろうか…?
そう考えるといても立ってもいられなかった。
「俺は最低だ…」
頭を抱えると、もう一度深いため息をついた…。
****
翌朝―
「どうしよう…電話を入れてもいいだろうか…?」
スマホを前に思い悩んでいた。加藤さんからは毎日電話を入れてもいいと許可を貰ってはあったが…昨夜、あんなことをしてしまったのだ。そんな相手からの電話…ひょっとすると恐怖を感じるかもしれない。
けれど…それでも俺は加藤さんと話がしたかった。
「ごめん…!加藤さん…」
俺はスマホをタップした―。
5コール目で加藤さんが電話に出てくれた。
『もしもし?』
「おはよう、加藤さん」
平静を装いながら俺は元気そうなふりをして電話を入れた。
『うん、おはよう』
「どう?体調の方は?」
そうだ、さり気なく体調を気遣う様な話をすればいいんだ。
『大丈夫だよ、薬も飲んだし…これからコーヒーも飲むところだから。あ、それでね、今日仕事の帰りに川口さんが教えてくれた駅前のカフェによってコーヒー豆を買って挽いてもらおうかと思って』
良かった…加藤さんも普通に接してくれている。
「そうなんだ。あの店は結構遅い時間まで空いているからね。ところで今日は何時に家出るの?」
「8時には出るよ。今日は早番だしね」
「そうか、それじゃ忙しいね。ごめん、切るよ。それじゃまた夜に電話入れさせてもらっていいかい?
さり気なく夜の電話の約束を入れた。
『うん。いいよ』
「ありがとう、それじゃ」
『うん、また』
そして電話を切ると俺は思わず自分の顔が緩んでいることに気が付いた―。
くそっ…!あの男…こんなにも加藤さんを悲しませて…。俺なら、俺だったならぜったいに加藤さんを悲しませないのに…!
「あ、あの…か、川口さん…」
不意に加藤さんの声が耳に入って来た。
しまった…っ!俺は…恋人でも無いのに抱きしめてしまった…!
「ご、ごめんっ!い、いきなり抱きしめたりして…っ!驚いたよね…?」
慌てて身体を離すと加藤さんを見た。
「う、うん…確かに驚きはしたけど…。でもどうしたの…?急にあんな事して…」
そうだよな…驚くのは当然だろう。だけど、もし怖がられていたら?
俺は取り返しのつかないことをしてしまったのかもしれない。
「加藤さんが…泣いていたから…俺だったら…そんな悲し気な顔させないのにって思って…つい、気付いて見ればあんなことを…本当にごめん…」
だから…頼む。俺をどうか怖がらないで欲しい…。
「川口さん…」
加藤さんは微妙な表情で俺を見ている。
「本当にごめん…もう今後は加藤さんの許可なく勝手に触れたりしないから…これからも会ってくれるかな…?」
「うん、いいよ…それじゃ、私…もう行くから。お休みなさい」
「うん、お休み」
加藤さんは背を向けると足早にマンションの中へと入って行った。その様子が…まるで俺から逃げるような素振りに見えてしまった。
「加藤さん…」
1人残された俺は…愛しい彼女の名を呟いた―。
「はぁ~…」
部屋に戻り、床に座ると深いため息がもれてしまった。どうしよう…俺はまたしても加藤さんを抱きしめてしまった。もしかして、彼女の中ではもう俺は危険人物扱いされているんじゃないだろうか…?
そう考えるといても立ってもいられなかった。
「俺は最低だ…」
頭を抱えると、もう一度深いため息をついた…。
****
翌朝―
「どうしよう…電話を入れてもいいだろうか…?」
スマホを前に思い悩んでいた。加藤さんからは毎日電話を入れてもいいと許可を貰ってはあったが…昨夜、あんなことをしてしまったのだ。そんな相手からの電話…ひょっとすると恐怖を感じるかもしれない。
けれど…それでも俺は加藤さんと話がしたかった。
「ごめん…!加藤さん…」
俺はスマホをタップした―。
5コール目で加藤さんが電話に出てくれた。
『もしもし?』
「おはよう、加藤さん」
平静を装いながら俺は元気そうなふりをして電話を入れた。
『うん、おはよう』
「どう?体調の方は?」
そうだ、さり気なく体調を気遣う様な話をすればいいんだ。
『大丈夫だよ、薬も飲んだし…これからコーヒーも飲むところだから。あ、それでね、今日仕事の帰りに川口さんが教えてくれた駅前のカフェによってコーヒー豆を買って挽いてもらおうかと思って』
良かった…加藤さんも普通に接してくれている。
「そうなんだ。あの店は結構遅い時間まで空いているからね。ところで今日は何時に家出るの?」
「8時には出るよ。今日は早番だしね」
「そうか、それじゃ忙しいね。ごめん、切るよ。それじゃまた夜に電話入れさせてもらっていいかい?
さり気なく夜の電話の約束を入れた。
『うん。いいよ』
「ありがとう、それじゃ」
『うん、また』
そして電話を切ると俺は思わず自分の顔が緩んでいることに気が付いた―。
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