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亮平 69
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俺は鈴音を連れて焼き鳥屋へ行った。鈴音がどんな食べ物を好きなのかは十分承知している。何しろ俺と鈴音は子供の頃からずっと一緒だったんだから。
それに焼き鳥屋を選んだのはわけがある。何故なら焼き鳥屋と言えば鈴音が川口と良く行っていたからだ。そして予定通りなら今日、川口は結婚することになっていた。そして鈴音は今もそれを信じている…。川口の事を意識させつつ、俺は思い切ってあの言葉を言うんだ。
そこで俺は自分を勇気づけるために度数の強い焼酎を水のようにがぶ飲みした。そしてそんな俺を鈴音は不思議そうに見つめながら梅酒をゆっくり飲んでいる。
よ、よし…そろそろ頃合いだろう…。俺はじっと鈴音を見つめた。
「な、何よ?」
ぼんじりを食べている鈴音に俺は言った。
「なぁ…鈴音」
心臓は早鐘を打ち、今にも口から飛び出しそうだ。
「何?」
「俺たちも…一緒に…。…結婚…するか?」
そして鈴音の顔をじっと見る。鈴音は…何と返事をしてくれるだろうか…?
「は?」
鈴音はポカンとした顔で俺を見ている。そして次の言葉に俺は凍りつく。
「何言ってるのよ。亮平はお姉ちゃんていう結婚相手がいるだろうけど、私はつきあってる人もいない、お一人様なのは知ってるでしょう?大体…今日は直人さんの結婚式だったんだから…」
「…やっぱりまだ川口の事忘れられていなかったんだな…」
唇を噛み締めながら言う。
「それは…そうだよ…だって、あんな別れ方したんだもの…」
予想はしていたけど…それでもショックだった。おまけに鈴音が俺の言葉を本気で捉えていないという事が悲しいくらい分かってしまう。
鈴音はしんみりした様子で梅酒を口に入れた。
「そうか、分かったよ。鈴音の気持ちは。結局そうなるか…」
結局…俺では駄目だって事なのか…?思わず目頭が熱くなりそうになった。
「亮平…?どうかしたの?」
どうかした?おおありだよ!
「ほら、そんな事より折角の焼き鳥が冷めるだろう?早く食べろよ」
胸の痛みを堪えながら俺は鈴音に言う。
「お前は…俺が幸せにしてやるよ。幼馴染だからな?」
うまく笑って言えただろうか…?
「う、うん…?」
鈴音は不思議そうな表情を浮かべながらも、俺の言葉に頷いた―。
****
その日の夜、俺は川口に電話を入れた。
『もしもし?』
5コール目で川口が電話に出た。
「ああ、久しぶりだな。どうだ?今日…本来はお前の結婚式だったはずだろう?」
『…それは取りやめになったのは知ってるだろう?あれから色々な手続きを済ませるために…どれくらい大変だったかお前に分かるか?』
「そんなの…俺の知ったことかよ。実はな、今夜鈴音を誘って焼き鳥屋へ行ったんだよ」
『何だって?』
川口の声に殺気が宿る。
「どうだ?羨ましいか?鈴音はなぁ…今日はお前と婚約者の結婚式だったと信じて疑っていなかったぞ?」
『そうか…くそっ!彼女があんな事言い出さなければ…鈴音の前に堂々と姿を見せる事が出来るのに…ッ!』
川口は心底悔しそうに言う。だが、お前はまだ知らないだろう?鈴音が…どれほどお前の事を今も思っているかなんて…。悔しいからお前には教えてやるものか。
「それで…今も元婚約者と会っているのか?」
『まさか!会うはず無いだろうっ?!俺は完全に彼女とは縁を切ったんだから…』
「そうかよ。とにかく、あと半年…せいぜい世間の目を騙すんだな。それじゃ」
『え?何だ?一体何故俺に電話かけてきたんだよ?!』
「え…?」
そう言えば…俺は何故川口に電話をかけたんだ?ひょっとして…鈴音に振られたからその腹いせに…今はまだ鈴音と会うことも出来ない川口を嫉妬させたかったのかも知れない。
「さあな、今どうしてるか気になっただけだよ。じゃあな」
『お、おい…っ!』
プツッ
まだ何か話したげにしていた川口の電話を俺は一方的に切ってしまった―。
それに焼き鳥屋を選んだのはわけがある。何故なら焼き鳥屋と言えば鈴音が川口と良く行っていたからだ。そして予定通りなら今日、川口は結婚することになっていた。そして鈴音は今もそれを信じている…。川口の事を意識させつつ、俺は思い切ってあの言葉を言うんだ。
そこで俺は自分を勇気づけるために度数の強い焼酎を水のようにがぶ飲みした。そしてそんな俺を鈴音は不思議そうに見つめながら梅酒をゆっくり飲んでいる。
よ、よし…そろそろ頃合いだろう…。俺はじっと鈴音を見つめた。
「な、何よ?」
ぼんじりを食べている鈴音に俺は言った。
「なぁ…鈴音」
心臓は早鐘を打ち、今にも口から飛び出しそうだ。
「何?」
「俺たちも…一緒に…。…結婚…するか?」
そして鈴音の顔をじっと見る。鈴音は…何と返事をしてくれるだろうか…?
「は?」
鈴音はポカンとした顔で俺を見ている。そして次の言葉に俺は凍りつく。
「何言ってるのよ。亮平はお姉ちゃんていう結婚相手がいるだろうけど、私はつきあってる人もいない、お一人様なのは知ってるでしょう?大体…今日は直人さんの結婚式だったんだから…」
「…やっぱりまだ川口の事忘れられていなかったんだな…」
唇を噛み締めながら言う。
「それは…そうだよ…だって、あんな別れ方したんだもの…」
予想はしていたけど…それでもショックだった。おまけに鈴音が俺の言葉を本気で捉えていないという事が悲しいくらい分かってしまう。
鈴音はしんみりした様子で梅酒を口に入れた。
「そうか、分かったよ。鈴音の気持ちは。結局そうなるか…」
結局…俺では駄目だって事なのか…?思わず目頭が熱くなりそうになった。
「亮平…?どうかしたの?」
どうかした?おおありだよ!
「ほら、そんな事より折角の焼き鳥が冷めるだろう?早く食べろよ」
胸の痛みを堪えながら俺は鈴音に言う。
「お前は…俺が幸せにしてやるよ。幼馴染だからな?」
うまく笑って言えただろうか…?
「う、うん…?」
鈴音は不思議そうな表情を浮かべながらも、俺の言葉に頷いた―。
****
その日の夜、俺は川口に電話を入れた。
『もしもし?』
5コール目で川口が電話に出た。
「ああ、久しぶりだな。どうだ?今日…本来はお前の結婚式だったはずだろう?」
『…それは取りやめになったのは知ってるだろう?あれから色々な手続きを済ませるために…どれくらい大変だったかお前に分かるか?』
「そんなの…俺の知ったことかよ。実はな、今夜鈴音を誘って焼き鳥屋へ行ったんだよ」
『何だって?』
川口の声に殺気が宿る。
「どうだ?羨ましいか?鈴音はなぁ…今日はお前と婚約者の結婚式だったと信じて疑っていなかったぞ?」
『そうか…くそっ!彼女があんな事言い出さなければ…鈴音の前に堂々と姿を見せる事が出来るのに…ッ!』
川口は心底悔しそうに言う。だが、お前はまだ知らないだろう?鈴音が…どれほどお前の事を今も思っているかなんて…。悔しいからお前には教えてやるものか。
「それで…今も元婚約者と会っているのか?」
『まさか!会うはず無いだろうっ?!俺は完全に彼女とは縁を切ったんだから…』
「そうかよ。とにかく、あと半年…せいぜい世間の目を騙すんだな。それじゃ」
『え?何だ?一体何故俺に電話かけてきたんだよ?!』
「え…?」
そう言えば…俺は何故川口に電話をかけたんだ?ひょっとして…鈴音に振られたからその腹いせに…今はまだ鈴音と会うことも出来ない川口を嫉妬させたかったのかも知れない。
「さあな、今どうしてるか気になっただけだよ。じゃあな」
『お、おい…っ!』
プツッ
まだ何か話したげにしていた川口の電話を俺は一方的に切ってしまった―。
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