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亮平 9
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忍との交際を両親に反対されているのは十分過ぎる位分っていた。何故なら両親は昔から忍の事を良く思ってはいなかったからだ。父さんと母さん曰く、『忍は何を考えているのか全く分からないから怖い』との事だった。それとは逆に鈴音の事は2人揃って気に入っていた。
『鈴音ちゃんが亮平と結婚してくれればいいのに』
それが両親の口癖だった。けれど、俺はその事を言われるたびにますます心の中で反発心が起きていた。は?何で俺が鈴音を嫁に貰わないといけないんだ?女らしくもないし、美人でも無い。けれど忍は鈴音とは全く真逆のタイプだった。女らしくて美人で、しかも心だって優しい…。鈴音とは大違いだ。だけど、俺の心のそこで警告している。何言ってるんだ。忍よりも鈴音の方が良く見れば美人じゃないか。その証拠に鈴音は昔からよくモテていた。本人は全くの無自覚だったが、一番近くで見ていた俺が一番その事は分っているじゃないか?
それに忍が心優しい?本当にそうなのか?心が優しければ…あんなふうに鈴音が忍の事で悩んでガリガリに痩せてしまうか?以前の鈴音は健康的な身体をしていた。なのに今では驚くほど痩せてしまった。
鈴音があの家を出た原因は何だ?新入社員で給料だってまだそれほどもらっていないのに普通家を出たりするか?鈴音の職場は自宅からそれほど遠くないのに?忍があの家に住めなくなった理由を思い出してみろ。
大体…忍がおかしくなってから、鈴音の様子もおかしくなった。俺は鈴音もそれほど忍の恋人の死がショックだったのかと思ったが…そうじゃ無かったんだ。おかしくなってしまった忍に辛く当たられ、鈴音はあの家で居場所を失ってしまったんじゃないか。なのに俺は少しもそれを理解してはいなかった。
忍の頭は俺が気付かないうちに徐々にゆっくりとおかしくなっていき…狂ってしまった。そしてその事に気付いたのは鈴音だった。
けれど、忍がおかしくなればなるほどに俺の心にもある変化が起きていた。鈴音が俺と、両親の前でボロボロと涙を流しながら俺と忍の事を認めて欲しいと頭を下げて訴えてきた時、思った。
こんなに鈴音を泣かせてまで、俺は忍と将来一緒になりたいのか?逆に今、俺の目の前で細い両肩を震わながら泣き崩れる鈴音がどうしようもなく愛しくてたまらない。
鈴音を強く出し決め、なぐさめてやりたい。そんな気持ちに駆られていた。
ひょっとすると…俺が好きだったのは忍では無く、本当は鈴音だったのかもしれない。
自分の本当の心に気付いた頃には…全てが手遅れになっていた―。
****
クリスマスイブの日…。
鈴音の引っ越しの日だった。俺は本当は手伝いに行きたかったのに、忍に強く止められた。
「何よっ!進さんっ!やっぱり…やっぱり私よりも鈴音ちゃんの方がいいのねっ?!酷いわっ!」
忍は怒って暴れて、クッションで何度も俺を叩いて来た。
「ごめん!悪かった。鈴音の処にはいかないと誓うから…!」
何とか忍からクッションを取り上げてソファに一緒に座り、強く抱きしめながら忍の長い髪をそっと撫でて子供の様にあやしてやると、ようやく忍の興奮は収まり、暴れたせいか…眠りに就いてくれた。
「…忍?」
「…」
忍の反応は無い。
そっと忍をソファに寝かせ、床に落ちていた毛布を拾い上げ、そっと忍の身体にかけてやる。
「すみません…お待たせしました」
奥の部屋に待機していた家政婦の女性に声を掛ける。
「もう落ち着きましたから、後はお願いします」
「ほ、本当にもう大丈夫なんでしょうね…?」
家政婦の女性がビクビクしながら尋ねて来る。
「はい、一度暴れれば落ち着くので大丈夫です。すみません。1時間程で戻りますので後はよろしくお願いします!」
俺は家政婦に頭を下げて、母から預かった鈴音へのクリスマス料理を持って車に乗り込むと鈴音の新居へ向かった。
もうすぐ、鈴音に会える。
そう思うだけで、胸が弾んだ―。
『鈴音ちゃんが亮平と結婚してくれればいいのに』
それが両親の口癖だった。けれど、俺はその事を言われるたびにますます心の中で反発心が起きていた。は?何で俺が鈴音を嫁に貰わないといけないんだ?女らしくもないし、美人でも無い。けれど忍は鈴音とは全く真逆のタイプだった。女らしくて美人で、しかも心だって優しい…。鈴音とは大違いだ。だけど、俺の心のそこで警告している。何言ってるんだ。忍よりも鈴音の方が良く見れば美人じゃないか。その証拠に鈴音は昔からよくモテていた。本人は全くの無自覚だったが、一番近くで見ていた俺が一番その事は分っているじゃないか?
それに忍が心優しい?本当にそうなのか?心が優しければ…あんなふうに鈴音が忍の事で悩んでガリガリに痩せてしまうか?以前の鈴音は健康的な身体をしていた。なのに今では驚くほど痩せてしまった。
鈴音があの家を出た原因は何だ?新入社員で給料だってまだそれほどもらっていないのに普通家を出たりするか?鈴音の職場は自宅からそれほど遠くないのに?忍があの家に住めなくなった理由を思い出してみろ。
大体…忍がおかしくなってから、鈴音の様子もおかしくなった。俺は鈴音もそれほど忍の恋人の死がショックだったのかと思ったが…そうじゃ無かったんだ。おかしくなってしまった忍に辛く当たられ、鈴音はあの家で居場所を失ってしまったんじゃないか。なのに俺は少しもそれを理解してはいなかった。
忍の頭は俺が気付かないうちに徐々にゆっくりとおかしくなっていき…狂ってしまった。そしてその事に気付いたのは鈴音だった。
けれど、忍がおかしくなればなるほどに俺の心にもある変化が起きていた。鈴音が俺と、両親の前でボロボロと涙を流しながら俺と忍の事を認めて欲しいと頭を下げて訴えてきた時、思った。
こんなに鈴音を泣かせてまで、俺は忍と将来一緒になりたいのか?逆に今、俺の目の前で細い両肩を震わながら泣き崩れる鈴音がどうしようもなく愛しくてたまらない。
鈴音を強く出し決め、なぐさめてやりたい。そんな気持ちに駆られていた。
ひょっとすると…俺が好きだったのは忍では無く、本当は鈴音だったのかもしれない。
自分の本当の心に気付いた頃には…全てが手遅れになっていた―。
****
クリスマスイブの日…。
鈴音の引っ越しの日だった。俺は本当は手伝いに行きたかったのに、忍に強く止められた。
「何よっ!進さんっ!やっぱり…やっぱり私よりも鈴音ちゃんの方がいいのねっ?!酷いわっ!」
忍は怒って暴れて、クッションで何度も俺を叩いて来た。
「ごめん!悪かった。鈴音の処にはいかないと誓うから…!」
何とか忍からクッションを取り上げてソファに一緒に座り、強く抱きしめながら忍の長い髪をそっと撫でて子供の様にあやしてやると、ようやく忍の興奮は収まり、暴れたせいか…眠りに就いてくれた。
「…忍?」
「…」
忍の反応は無い。
そっと忍をソファに寝かせ、床に落ちていた毛布を拾い上げ、そっと忍の身体にかけてやる。
「すみません…お待たせしました」
奥の部屋に待機していた家政婦の女性に声を掛ける。
「もう落ち着きましたから、後はお願いします」
「ほ、本当にもう大丈夫なんでしょうね…?」
家政婦の女性がビクビクしながら尋ねて来る。
「はい、一度暴れれば落ち着くので大丈夫です。すみません。1時間程で戻りますので後はよろしくお願いします!」
俺は家政婦に頭を下げて、母から預かった鈴音へのクリスマス料理を持って車に乗り込むと鈴音の新居へ向かった。
もうすぐ、鈴音に会える。
そう思うだけで、胸が弾んだ―。
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