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第20章 15 先輩になった私
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あれから時が流れ‥季節はいつの間にか4月になっていた。私は直人さんの事を忘れる為に必死で働き、今年からは2人の新人が代理店に入って来て、先輩と言う立場になっていた。
「先輩。これ…何所に運べばいいっすか?」
体育系大学卒業で今年入社してきた新田君、浅黒い肌に大きな身体を持つ彼が私を見下ろしながらカートに乗った大量のチラシを持っている。
「あ、それはこっちの倉庫に運んでくれる。しまう場所教えてあげるね」
新田君の先頭に立って歩いていると、頭の上から声を掛けられた。
「加藤先輩、聞きたい事あるんすけど」
「何?また何か仕事で分らない事出て来た?」
立ち止まって新田君の方をふり向き…上を見上げた。それにしても大きい人だ。首が痛くなりそうだ。
「加藤先輩は彼氏いるんすか?」
「は?」
あまりに突拍子もない言葉に目が点になった。
「何…仕事の事じゃなかったの?」
「いえ、加藤先輩はここの社員だから仕事の話になりますよね?」
「私に彼氏がいるかいないかは…業務に関係無いんじゃないかなぁ…あ、ほら。ここだよ、このEの棚に乗せて」
「はい。でも加藤先輩に彼氏がいるかいないかで俺の仕事のモチベーションに繋がるんですよね」
新田君はチラシを棚に乗せながらブツブツ言っている。真面目に聞いていると頭痛がしてくる。
「私に彼氏がいるかいないかは新田君には関係無い話でしょう。それじゃ全部棚にしまっておいてね。先に戻ってるからね」
「は~い」
素直に返事をする新田君を見て思わずクスリと笑ってしまった。身体は大きくて、ちょっといかつい感じがするけど、根は素直な男性だ。
店舗に戻ると、すぐに別の新人の茂木さんに声を掛けられた。
「先輩、すみませんがこのファイル、私…どこにデータが入っているか忘れてしまって」
彼女はスマホは得意だけども、あまりPCは得意じゃないみたいで、度々PC操作を聞かれる。
「ああ、それならここだよ。この共有ファイルにはいっているからね」
カチカチとマウスを操作してファイルの場所を教えてあげる。こんな風に今の私は新人教育?と日常業務で忙しい日々を過ごしていた。
午後6時―
「すみません。お先に失礼します」
早番だった私は代理店を出た。今日は金曜日で珍しく明日はお休みを入れる事が出来た。実はお姉ちゃんと亮平と一緒に今夜は3人でカラオケに行く約束をしていたのだ。
「まだ時間はあるし…一度マンションに帰ろうかな」
そして私は代理店に止めた自転車に乗ると自分のマンションを目指した―。
****
午後10時半―
「あ~楽しかったな…」
カラオケの帰り道、亮平が空を見上げながら言った。
「ええ、そうね。やっぱり大きな声で歌うって楽しいわね」
最近週に3日だけ、社会復帰の為に小さな会社でパート事務を始めたお姉ちゃんはとても楽し気に話す。
「そうでしょう?忍さん。また一緒に行きましょう」
「ええ。そうね」
2人で笑いあいながら話している亮平とお姉ちゃん。最近2人の距離が以前よりずっと縮まった気がする。
「そう言えば、亮平。最近ずっと忙しそうにしてたよね?中々家にも顔出してなかったし」
私が尋ねると亮平が答えた。
「ああ、色々忙しかったけどな…最近ようやく落ち着いたんだよ」
「ふ~ん…仕事大変だったんだね」
「「…」」
しかし、亮平はそれには答えずに何故かお姉ちゃんと2人で視線を合わす。
「?」
そして次に亮平はお姉ちゃんに言った。
「よし、今夜は加藤家で飲みなおそう!忍さん。お酒買って帰りましょう」
「ええ。そうね。そうしましょう」
「え?!お姉ちゃん。お酒飲んで平気なの?!」
「ええ。それじゃそこのコンビニへ入りましょう」
そして亮平とお姉ちゃんは2人そろってコンビニへと入って行った。そこを慌てて追いかける私。
「あ、待ってよ。2人とも!置いてかないでよ!」
私も慌ててコンビニの中へ入った。
そう、少なくともこの時の私は鈍くって…まだ、自分の周りで何が起きていたのか…全く気づいていなかったのだ―。
「先輩。これ…何所に運べばいいっすか?」
体育系大学卒業で今年入社してきた新田君、浅黒い肌に大きな身体を持つ彼が私を見下ろしながらカートに乗った大量のチラシを持っている。
「あ、それはこっちの倉庫に運んでくれる。しまう場所教えてあげるね」
新田君の先頭に立って歩いていると、頭の上から声を掛けられた。
「加藤先輩、聞きたい事あるんすけど」
「何?また何か仕事で分らない事出て来た?」
立ち止まって新田君の方をふり向き…上を見上げた。それにしても大きい人だ。首が痛くなりそうだ。
「加藤先輩は彼氏いるんすか?」
「は?」
あまりに突拍子もない言葉に目が点になった。
「何…仕事の事じゃなかったの?」
「いえ、加藤先輩はここの社員だから仕事の話になりますよね?」
「私に彼氏がいるかいないかは…業務に関係無いんじゃないかなぁ…あ、ほら。ここだよ、このEの棚に乗せて」
「はい。でも加藤先輩に彼氏がいるかいないかで俺の仕事のモチベーションに繋がるんですよね」
新田君はチラシを棚に乗せながらブツブツ言っている。真面目に聞いていると頭痛がしてくる。
「私に彼氏がいるかいないかは新田君には関係無い話でしょう。それじゃ全部棚にしまっておいてね。先に戻ってるからね」
「は~い」
素直に返事をする新田君を見て思わずクスリと笑ってしまった。身体は大きくて、ちょっといかつい感じがするけど、根は素直な男性だ。
店舗に戻ると、すぐに別の新人の茂木さんに声を掛けられた。
「先輩、すみませんがこのファイル、私…どこにデータが入っているか忘れてしまって」
彼女はスマホは得意だけども、あまりPCは得意じゃないみたいで、度々PC操作を聞かれる。
「ああ、それならここだよ。この共有ファイルにはいっているからね」
カチカチとマウスを操作してファイルの場所を教えてあげる。こんな風に今の私は新人教育?と日常業務で忙しい日々を過ごしていた。
午後6時―
「すみません。お先に失礼します」
早番だった私は代理店を出た。今日は金曜日で珍しく明日はお休みを入れる事が出来た。実はお姉ちゃんと亮平と一緒に今夜は3人でカラオケに行く約束をしていたのだ。
「まだ時間はあるし…一度マンションに帰ろうかな」
そして私は代理店に止めた自転車に乗ると自分のマンションを目指した―。
****
午後10時半―
「あ~楽しかったな…」
カラオケの帰り道、亮平が空を見上げながら言った。
「ええ、そうね。やっぱり大きな声で歌うって楽しいわね」
最近週に3日だけ、社会復帰の為に小さな会社でパート事務を始めたお姉ちゃんはとても楽し気に話す。
「そうでしょう?忍さん。また一緒に行きましょう」
「ええ。そうね」
2人で笑いあいながら話している亮平とお姉ちゃん。最近2人の距離が以前よりずっと縮まった気がする。
「そう言えば、亮平。最近ずっと忙しそうにしてたよね?中々家にも顔出してなかったし」
私が尋ねると亮平が答えた。
「ああ、色々忙しかったけどな…最近ようやく落ち着いたんだよ」
「ふ~ん…仕事大変だったんだね」
「「…」」
しかし、亮平はそれには答えずに何故かお姉ちゃんと2人で視線を合わす。
「?」
そして次に亮平はお姉ちゃんに言った。
「よし、今夜は加藤家で飲みなおそう!忍さん。お酒買って帰りましょう」
「ええ。そうね。そうしましょう」
「え?!お姉ちゃん。お酒飲んで平気なの?!」
「ええ。それじゃそこのコンビニへ入りましょう」
そして亮平とお姉ちゃんは2人そろってコンビニへと入って行った。そこを慌てて追いかける私。
「あ、待ってよ。2人とも!置いてかないでよ!」
私も慌ててコンビニの中へ入った。
そう、少なくともこの時の私は鈍くって…まだ、自分の周りで何が起きていたのか…全く気づいていなかったのだ―。
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