337 / 519
第20章 3 寒い夜
しおりを挟む
亮平は一体何を言い出すの? 川口さんの事忘れられなかったのかって…。
「そ、それは…確かに忘れろって方が‥無理なんじゃないかな…?あ、も・勿論ヨリを戻したいって言ってるわけじゃないよ?だってそんな事は無理なの分り切ってる から…ただ、あんな別れ方をしてしまったから…川口さんの事が気になって…」
チラリと亮平を見ると何やら腕組みして物凄い顔でこっちを見ている。うう…どうして亮平相手にこんな言い訳じみた話をしなければいけないのだろう?
「と、とにかくそう言う訳だから!はい、以上っ!この話はこれでおしまいっ!」
そう言うと私はコップの水をグイッと一気に飲み干した。
「鈴音、お前…」
亮平はポカンとした顔でこちらを見ていたが、ボソリと言った。
「まぁ‥別にお前がそれでいいなら俺は構わないけどな」
「うん。とにかく…太田先輩との交際は無しだから。今頃はバリ島で満天の星空を眺めながらビンタンビールでも飲んでるんじゃないかな?」
それだけ言うと私は残りのビーフシチューを口に運んだ―。
****
「うわっ!さっむ~いっ!!早く帰ろう!」
ファミレスを出ると、外はもの凄い寒さだった。冷たい風が吹いてコートの中にまで冷たい風が吹き込んできそうだった。歩きながら思わずブルリと震えてしまった。
「何だ?そんなに寒いか?」
亮平は寒さに強いのか、ケロリとしている。あ、もしかして…。
「分った、亮平…さてはカイロを持ってるんじゃないの?」
「そんな物、持ってるわけ無いだろう?それよりそのキャリーケース貸せよ」
亮平は私の持っているキャリーケースのハンドルを掴むと、私の代わりにガラガラと引きずって歩きだした。そしてポツリと言う。
「…悪かったな」
「え?何が?」
隣を歩く亮平を見上げながら尋ねた。
「いや、俺が余計な事を言ったから…お前先輩の告白を受けなかったんじゃないのか?」
「亮平…」
「それにさ…おまえ、海が綺麗な場所が大好きだろう?バリ島なんかお前の理想だったんじゃないか?」
「…」
私はすぐに答える事が出来なかった。でも…ふとお姉ちゃんの顔が脳裏に浮かんだ。
「住むのと‥‥遊びに行くのは…やっぱり別だよ」
「鈴音…」
「やっぱりお姉ちゃん置いて…別の国へ行けない…かな?だって心配だから」
すると亮平が言った。
「別に忍の事は気にする事はないんじゃないか?」
「え?」
「俺がいるんだしさ。」
亮平が白い息を吐きながら言う。
「う、うん…そうだよね…」
亮平から視線をそらせて返事をした。亮平、それって…お姉ちゃんには自分が付いているから、もう私は必要ないって事なの…?でも、そんな事聞けなかった。もしそんな事尋ねて、ああその通りだと亮平に肯定されるのが怖かったから…。
そして、その後…私と亮平は他愛も無い話をしながら家路についた―。
****
家に着いたのは午後9時を過ぎていた。
「じゃあな。鈴音」
「うん、お休み」
互いに家の門の前で手を振って別れると門をくぐって、玄関の前の扉に立って呼び鈴を押した。
ピンポーン
「…」
少しの間、玄関の前で少しだけ待っていると、ガチャリと扉が開かれて中からお姉ちゃんが顔を出して来た。
「お帰りなさい、鈴音ちゃん」
「うん、ただいま」
「外はすごく寒かったでしょう?お風呂もう一度沸かし直してくるから湧いたらすぐに入った方がいいわ」
「ありがとう」
早速靴を脱いで上がると、お姉ちゃんがお風呂場へ向かって行く姿が見えた。上着を脱いでフックに掛けた時にふとテーブルの上に雑誌が広げられているのが目に入った。
「ふ~ん‥‥お姉ちゃん雑誌読んでたんだ。何見てたのかな…」
そして次の瞬間、息を飲んだ。
お姉ちゃんが開いていたページはブライダル特集のページだったから―。
「そ、それは…確かに忘れろって方が‥無理なんじゃないかな…?あ、も・勿論ヨリを戻したいって言ってるわけじゃないよ?だってそんな事は無理なの分り切ってる から…ただ、あんな別れ方をしてしまったから…川口さんの事が気になって…」
チラリと亮平を見ると何やら腕組みして物凄い顔でこっちを見ている。うう…どうして亮平相手にこんな言い訳じみた話をしなければいけないのだろう?
「と、とにかくそう言う訳だから!はい、以上っ!この話はこれでおしまいっ!」
そう言うと私はコップの水をグイッと一気に飲み干した。
「鈴音、お前…」
亮平はポカンとした顔でこちらを見ていたが、ボソリと言った。
「まぁ‥別にお前がそれでいいなら俺は構わないけどな」
「うん。とにかく…太田先輩との交際は無しだから。今頃はバリ島で満天の星空を眺めながらビンタンビールでも飲んでるんじゃないかな?」
それだけ言うと私は残りのビーフシチューを口に運んだ―。
****
「うわっ!さっむ~いっ!!早く帰ろう!」
ファミレスを出ると、外はもの凄い寒さだった。冷たい風が吹いてコートの中にまで冷たい風が吹き込んできそうだった。歩きながら思わずブルリと震えてしまった。
「何だ?そんなに寒いか?」
亮平は寒さに強いのか、ケロリとしている。あ、もしかして…。
「分った、亮平…さてはカイロを持ってるんじゃないの?」
「そんな物、持ってるわけ無いだろう?それよりそのキャリーケース貸せよ」
亮平は私の持っているキャリーケースのハンドルを掴むと、私の代わりにガラガラと引きずって歩きだした。そしてポツリと言う。
「…悪かったな」
「え?何が?」
隣を歩く亮平を見上げながら尋ねた。
「いや、俺が余計な事を言ったから…お前先輩の告白を受けなかったんじゃないのか?」
「亮平…」
「それにさ…おまえ、海が綺麗な場所が大好きだろう?バリ島なんかお前の理想だったんじゃないか?」
「…」
私はすぐに答える事が出来なかった。でも…ふとお姉ちゃんの顔が脳裏に浮かんだ。
「住むのと‥‥遊びに行くのは…やっぱり別だよ」
「鈴音…」
「やっぱりお姉ちゃん置いて…別の国へ行けない…かな?だって心配だから」
すると亮平が言った。
「別に忍の事は気にする事はないんじゃないか?」
「え?」
「俺がいるんだしさ。」
亮平が白い息を吐きながら言う。
「う、うん…そうだよね…」
亮平から視線をそらせて返事をした。亮平、それって…お姉ちゃんには自分が付いているから、もう私は必要ないって事なの…?でも、そんな事聞けなかった。もしそんな事尋ねて、ああその通りだと亮平に肯定されるのが怖かったから…。
そして、その後…私と亮平は他愛も無い話をしながら家路についた―。
****
家に着いたのは午後9時を過ぎていた。
「じゃあな。鈴音」
「うん、お休み」
互いに家の門の前で手を振って別れると門をくぐって、玄関の前の扉に立って呼び鈴を押した。
ピンポーン
「…」
少しの間、玄関の前で少しだけ待っていると、ガチャリと扉が開かれて中からお姉ちゃんが顔を出して来た。
「お帰りなさい、鈴音ちゃん」
「うん、ただいま」
「外はすごく寒かったでしょう?お風呂もう一度沸かし直してくるから湧いたらすぐに入った方がいいわ」
「ありがとう」
早速靴を脱いで上がると、お姉ちゃんがお風呂場へ向かって行く姿が見えた。上着を脱いでフックに掛けた時にふとテーブルの上に雑誌が広げられているのが目に入った。
「ふ~ん‥‥お姉ちゃん雑誌読んでたんだ。何見てたのかな…」
そして次の瞬間、息を飲んだ。
お姉ちゃんが開いていたページはブライダル特集のページだったから―。
0
お気に入りに追加
793
あなたにおすすめの小説
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
偽りの結婚生活 ~私と彼の6年間の軌跡
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
偽りの結婚をした男性は決して好きになってはいけない私の初恋の人でした―
大手企業に中途採用された「私」。だけどその実態は仮の結婚相手になる為の口実・・。
これは、初恋の相手を好きになってはいけない「私」と「彼」・・そして2人を取り巻く複雑な人間関係が繰り広げられる6年間の結婚生活の軌跡の物語—。
<全3部作:3部作目で完結です:終章に入りました:本編完結、番外編完結しました>
※カクヨム・小説家になろうにも投稿しています
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
政略結婚だけど溺愛されてます
紗夏
恋愛
隣国との同盟の証として、その国の王太子の元に嫁ぐことになったソフィア。
結婚して1年経っても未だ形ばかりの妻だ。
ソフィアは彼を愛しているのに…。
夫のセオドアはソフィアを大事にはしても、愛してはくれない。
だがこの結婚にはソフィアも知らない事情があって…?!
不器用夫婦のすれ違いストーリーです。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる