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第19章 15 耳を疑う話
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翌朝―
遅番で出勤してきた私は、既に出勤してきている社員の人達に挨拶をして回った。太田先輩もまだ出勤していない。きっと遅番なんだろうな。そして最後に隣のデスクに座る井上君に声を掛けた。
「おはよう、井上君」
「ああ…おはよう…」
何故か井上君はげっそりした顔をしている。
「ねぇ、大丈夫?何かあったの…?」
「あ…いや…実はさ…結局佐々木の奴、あのまま酔いつぶれてしまったから俺の部屋に泊めたんだよね…」
「うん、なるほど?」
「マンションに連れ帰るだけでも大変だったのに…」
井上君は頭を抱えてしまった。
「え?ど、どうしたの?」
小声で尋ねると井上君が言った。
「あいつ…っ!歯ぎしりが酷すぎてちっとも眠れなかった…」
「…」
言われた私は井上君の顔を見た。あ…本当だ。よく見ればクマが出来てる。
「そ、それは大変だったね…」
「ああ、もう最悪だよ…」
井上君は深いため息をついた。
「大変だったね」
それだけ声を掛けると私はPCに向き直って仕事を開始した―。
****
午前11時になった。おかしいな‥‥。私はカウンターを見た。本来、あの席に座る太田先輩がまだ出勤してきていない。チラリと係長を見ても何も太田先輩が出勤してこないことについて言わないし。一体どうしたんだろう?私がカウンターをじっと見ている事に気付いたのか井上君が小声で囁いて来た。
「太田先輩、どうしたんだろうな?何で出勤してこないんだろう?」
「うん、そうだね…」
私は曖昧に返事をした。あんまり太田先輩の事を口に出せば井上君に変に勘繰られてしまいそうだったから。
そして、結局太田先輩は午前の仕事が終わっても出勤して来る事は無かった―。
****
午後2時―
遅番の休憩時間が終わって代理店に戻ってくると太田先輩が係長の前に立ち、何やら話をしている。
何を話しているんだろう…?
「お帰り、加藤さん」
デスクに戻ってくると、先に早番でお昼から帰って来ていた井上君が声を掛けて来た。
「う、うん。ただいま」
言いながら着席すると井上君が話しかけて来た。
「ランチ何食べてきたの?」
「うん、ファストフード店でチーズバーガーセット食べて来たよ」
「ふ~ん、そっか」
その時、不意に係長が大きめの声を上げた。
「よし、全員いるな…幸い今お客さんもいない事だし…」
そして何故か係長の隣には太田先輩が立っている。
ドクン
私の心臓が大きくなった。え…?一体何だろう…?
すると係長が言った。
「皆、聞いてくれ。この春、バリ島に代理店がオープンする事が決定した。本社からは優秀な人材を派遣するよう言われており、我が代理店から太田が正式に選ばれた。突然の話ではあるが、彼は今月末にバリ島へ行くことが決定した。皆、拍手だっ!」
するとその言葉に社員の人達は一斉に拍手した。太田先輩は照れたように頭を掻いている。そして一方、私と井上君だけは呆然と拍手もせずに太田先輩を見ていた。
「加藤さん…」
井上君が声を震わせて私に声を掛けて来た。
「な、何…?」
「加藤さんは太田先輩が…バリ島へ行く話…知ってたの…?」
私は太田先輩から片時も目を離さずに答えた。
「知らないよ…知るはずないじゃない…」
そう、私は何も知らなかった、聞かされていなかった。
だけど何故太田先輩が私に告白してきたのか…その本当の理由が分った気がした―。
遅番で出勤してきた私は、既に出勤してきている社員の人達に挨拶をして回った。太田先輩もまだ出勤していない。きっと遅番なんだろうな。そして最後に隣のデスクに座る井上君に声を掛けた。
「おはよう、井上君」
「ああ…おはよう…」
何故か井上君はげっそりした顔をしている。
「ねぇ、大丈夫?何かあったの…?」
「あ…いや…実はさ…結局佐々木の奴、あのまま酔いつぶれてしまったから俺の部屋に泊めたんだよね…」
「うん、なるほど?」
「マンションに連れ帰るだけでも大変だったのに…」
井上君は頭を抱えてしまった。
「え?ど、どうしたの?」
小声で尋ねると井上君が言った。
「あいつ…っ!歯ぎしりが酷すぎてちっとも眠れなかった…」
「…」
言われた私は井上君の顔を見た。あ…本当だ。よく見ればクマが出来てる。
「そ、それは大変だったね…」
「ああ、もう最悪だよ…」
井上君は深いため息をついた。
「大変だったね」
それだけ声を掛けると私はPCに向き直って仕事を開始した―。
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午前11時になった。おかしいな‥‥。私はカウンターを見た。本来、あの席に座る太田先輩がまだ出勤してきていない。チラリと係長を見ても何も太田先輩が出勤してこないことについて言わないし。一体どうしたんだろう?私がカウンターをじっと見ている事に気付いたのか井上君が小声で囁いて来た。
「太田先輩、どうしたんだろうな?何で出勤してこないんだろう?」
「うん、そうだね…」
私は曖昧に返事をした。あんまり太田先輩の事を口に出せば井上君に変に勘繰られてしまいそうだったから。
そして、結局太田先輩は午前の仕事が終わっても出勤して来る事は無かった―。
****
午後2時―
遅番の休憩時間が終わって代理店に戻ってくると太田先輩が係長の前に立ち、何やら話をしている。
何を話しているんだろう…?
「お帰り、加藤さん」
デスクに戻ってくると、先に早番でお昼から帰って来ていた井上君が声を掛けて来た。
「う、うん。ただいま」
言いながら着席すると井上君が話しかけて来た。
「ランチ何食べてきたの?」
「うん、ファストフード店でチーズバーガーセット食べて来たよ」
「ふ~ん、そっか」
その時、不意に係長が大きめの声を上げた。
「よし、全員いるな…幸い今お客さんもいない事だし…」
そして何故か係長の隣には太田先輩が立っている。
ドクン
私の心臓が大きくなった。え…?一体何だろう…?
すると係長が言った。
「皆、聞いてくれ。この春、バリ島に代理店がオープンする事が決定した。本社からは優秀な人材を派遣するよう言われており、我が代理店から太田が正式に選ばれた。突然の話ではあるが、彼は今月末にバリ島へ行くことが決定した。皆、拍手だっ!」
するとその言葉に社員の人達は一斉に拍手した。太田先輩は照れたように頭を掻いている。そして一方、私と井上君だけは呆然と拍手もせずに太田先輩を見ていた。
「加藤さん…」
井上君が声を震わせて私に声を掛けて来た。
「な、何…?」
「加藤さんは太田先輩が…バリ島へ行く話…知ってたの…?」
私は太田先輩から片時も目を離さずに答えた。
「知らないよ…知るはずないじゃない…」
そう、私は何も知らなかった、聞かされていなかった。
だけど何故太田先輩が私に告白してきたのか…その本当の理由が分った気がした―。
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