上 下
316 / 519

第19章 2 3人でおせち

しおりを挟む
「「「明けましておめでとう!」」」

3人でダイニングテーブルに座ると、お重に入ったおせち料理に御雑煮、そしてお屠蘇セットが置かれている。杯には既に金箔入りの日本酒が注がれている。

「凄い…こんなお屠蘇セット家にあったの?」

「これはね、亮平君が持ってきてくれたのよ?すごいでしょう?」

笑みを浮かべながら亮平を見たお姉ちゃん。

「えっ?!亮平が持ってきたの?」

「ああ。家から持ってきたんだ。これはな、会津塗のお屠蘇セットなんだ。どうだ?立派ですごいだろう?」

自慢げに言う亮平。

「いいの?勝手に持ってきたりして…。おじさんとおばさんに謝って返しにいったほうがいいんじゃないの?」

「お、お前なぁ!まるで子供がいたずらしたような言い方するなっ!別にいいんだよ。俺の家じゃ宝の持ち腐れなんだから。こんなのサイドボードに飾られていて一度だって使われた事無いんだからな!いや待てよ?1度…いや、2度位はあったか?」

亮平があやふやな事を言っている。

「まぁまぁ、2人共落ち着いて。折角のおめでたい日なんだし…まずはお屠蘇で乾杯しましょう」

お姉ちゃんが杯を持って私達を見渡した。

「うん、そうだね」

「それもそうだ」

私と亮平も杯を持つと3人で一斉に乾杯をし、豪華な食事が始まった―。


「うおっ!このアワビ、美味い!最高だっ!」

亮平は滅多に食べる事の無いアワビの料理に舌鼓を打っている。

「このエビの塩焼きもとっても美味しいわよ」

お姉ちゃんもご満悦だ。

「それで鈴音は何食べてるんだ?」

「うん…紅白なます」

「「え?」」

「な、何だよっ!そのなますって!」

亮平はおかしくてたまらないと言わんばかりに笑っている。

「鈴音ちゃん、確かになますもお節料理でいいけど、ほら。この重箱のおせちも食べましょうよ。見てごらんなさい。オマール海老までついているのよ?」

お姉ちゃんは巨大なオマール海老を指さしながら言う。

「うん。そうなんだけど、二日酔い気味で食欲が無くて…」

「あら、そうなの?この後、近所の神社に初詣に行こうと思っていたんだけど…」

「ごめんね。無理そうだからお姉ちゃんと亮平の2人で行って来て」

それに2人は結婚するんだから、なるべく2人きりにさせてあげなくちゃ。

「えっ?何だよ。鈴音、お前行かないのかよ」

亮平が何故か不満そうに言うけど、亮平だって本当はお姉ちゃんと2人きりで出掛けたいんじゃないの?

「うん、悪いけど、家で休んでるよ。夜にはマンションへ帰るし」

「そうなの…残念だわ」

お姉ちゃんがため息をつく。

「え?鈴音。お前、今夜帰るのか?」

お屠蘇を飲んでいた亮平が尋ねて来た。

「う、うん。帰るよ」

「そうか…」

すると何を思ったか、亮平が杯を置いた。

「あれ?お酒飲まないの?」

「ああ。やめた」

「あ、分ったわ。亮平君、鈴音ちゃんを車でマンションまで送ってくれるのね?」

お姉ちゃんがパチンと手を叩く。

「勿論、そのつもりですよ」

「えっ?!いいよ、そんなっ!」

驚いて亮平を見ると、いきなり鼻をつままれた。

「ひゃ、ひゃひふんの~(な、何するの~)」

「バーカ、何遠慮してるんだよ。荷物だってあるんだろう?」

それだけ言うと、亮平は私の鼻をつまむのをやめて、再びお節料理を「旨い旨い」と言って食べ始める。

「ええ。そうよ。それに今おせちが食べられないなら、鈴音ちゃんの分はタッパにいれてあげるから。荷物も増えるわよ?遠慮せずに送ってもらいなさい」

「でも…」

言いかけると、何故かギロリと亮平に睨まれる。な、なんか怖いんですけど…。

「う、うん。それじゃ…帰りよろしくお願いします」

亮平に頭を下げる。

「うん、最初からそうしてれば可愛げがあるんだよ」

亮平は私を横目で見ると言った。

でも…本当にいいのだろか…?それとも私が神経質すぎるのかな?

私は黙って、田作りに箸を伸ばした―。
しおりを挟む
感想 208

あなたにおすすめの小説

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...