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第18章 21 苦いコーヒー
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2人に顔を見られたくない…。きっと今の私は酷い顔色をしていると思う。
そ~っと足音を立てないように玄関を引き返すと再び靴を履き、静かに扉を開ける。
カチャ…
ドク
ドク
ドク
ドク…
心臓が口から飛び出しそうだ。そして外へ出て扉を閉めると急ぎ足で、まるで逃げるように足早にまた駅の方へ向かって歩きだした。
俯いて歩きながら、私はさっきの2人の会話を頭の中で反復していた。2人はどんな結婚式にしたいのかを楽し気に話していた。
それにしても…知らなかった。
2人の会話…もう結婚式の話が出るまで話が進んでいたんだ。直人さんに引き続き、亮平とお姉ちゃんが結婚する。皆…私を1人残して先に進んで行ってしまう…。
何故だろう?どうしてこんなに胸が苦しいんだろう?直人さんが去って…どうしようも無く寂しい心を埋めてくれているのがお姉ちゃんと亮平だから?
今のお姉ちゃんは私にすごく愛情を向けてくれている。その私に向けてくれる愛情が亮平の方に向いてしまうのを恐れているからなの?
そして亮平…いつも言いたい事をズケズケ言って来るけれども…それでも私を元気づけようと、側にいてくれている。その亮平がお姉ちゃんと結婚すれば私から離れていくから?
胸が苦しい。そして私は思った。亮平とお姉ちゃんが結婚すれば私の居場所を無くしてしまう。もう、あの2の間に入ることは出来なくなってしまう。
この胸の痛み…。
私は…2人の私に向けてくれる愛情を失ってしまうのが怖いんだ―。
****
「はぁ~…」
コンビニで買った熱々のカップに入ったコーヒーを手に持ち、駅近くの誰もいない小さな公園のベンチに座り、空を眺めてため息をついた。今は午後の2時。
何となく家に帰るのが怖くて、本屋さんで立ち読みしたり、雑貨屋さんでぶらぶらしてみたり…気付けばここに行きついていた。
カップに入ったコーヒーを、見下ろすとそこには寂しげな自分の顔が映し出されていた。
「情けない顔…」
俯きながらポツリと呟くと不意に近くで声を掛けられた。
「コーヒー好きなんですか?」
「え?」
声の方向を振り向くと、そこに自転車を持った男の子が立っていた。まだ高校生くらいだろうか?紺色のダウンジャケットを着ている。誰だろう…?
「あの…」
戸惑って首を傾げると男の子が言った。
「さっきもコーヒー注文していましたよね?」
「さっき…?」
そこでようやく私はこの男の子が誰か分った。
「あ、もしかしてファミレスの定員さん?」
「はい」
男の子はうなずくと、ためらいがちに言った。
「良かった…」
「え?」
「さっき…店の中でも泣いてたし、お金払う時も…思いつめた顔してたから気になっていたんです。そしたら今も公園で1人でいたから…もしかして、帰る家が無いんですか?」
「…」
まだ高校生くらいの見知らぬ男の子にそこまで心配して貰う程、酷い顔をしていたのだろうか?思わず男の子の顔をマジマジと見てしまった。
「あ…」
すると男の子は顔を一瞬で真赤に染めると視線をそらし、言った。
「す、すみませんでした!変な事言って!そ、それじゃ俺帰りますっ!」
男の子は慌てたように自転車をおして、そのまま公園を突き抜けて行く。
「待って!」
私は思わず声を掛けてしまった。
「は…はい?」
「ありがとう」
笑みを浮かべて、お礼を言うと男の子はますます顔を赤くして頭を下げると逃げるように去って行った。
「参ったな…まさかあんな年下の見知らぬ子に心配してもらうなんて…」
ぽつりとつぶやくと苦みのある、すっかり生ぬるくなったコーヒーをグイッと一気に飲むと立ち上がった。
「帰ろう…。2人共心配しているかもしれないし」
見知らぬ男の子のお陰で、少しだけ冷静になれた私は家へ向かって歩き始めた―。
そ~っと足音を立てないように玄関を引き返すと再び靴を履き、静かに扉を開ける。
カチャ…
ドク
ドク
ドク
ドク…
心臓が口から飛び出しそうだ。そして外へ出て扉を閉めると急ぎ足で、まるで逃げるように足早にまた駅の方へ向かって歩きだした。
俯いて歩きながら、私はさっきの2人の会話を頭の中で反復していた。2人はどんな結婚式にしたいのかを楽し気に話していた。
それにしても…知らなかった。
2人の会話…もう結婚式の話が出るまで話が進んでいたんだ。直人さんに引き続き、亮平とお姉ちゃんが結婚する。皆…私を1人残して先に進んで行ってしまう…。
何故だろう?どうしてこんなに胸が苦しいんだろう?直人さんが去って…どうしようも無く寂しい心を埋めてくれているのがお姉ちゃんと亮平だから?
今のお姉ちゃんは私にすごく愛情を向けてくれている。その私に向けてくれる愛情が亮平の方に向いてしまうのを恐れているからなの?
そして亮平…いつも言いたい事をズケズケ言って来るけれども…それでも私を元気づけようと、側にいてくれている。その亮平がお姉ちゃんと結婚すれば私から離れていくから?
胸が苦しい。そして私は思った。亮平とお姉ちゃんが結婚すれば私の居場所を無くしてしまう。もう、あの2の間に入ることは出来なくなってしまう。
この胸の痛み…。
私は…2人の私に向けてくれる愛情を失ってしまうのが怖いんだ―。
****
「はぁ~…」
コンビニで買った熱々のカップに入ったコーヒーを手に持ち、駅近くの誰もいない小さな公園のベンチに座り、空を眺めてため息をついた。今は午後の2時。
何となく家に帰るのが怖くて、本屋さんで立ち読みしたり、雑貨屋さんでぶらぶらしてみたり…気付けばここに行きついていた。
カップに入ったコーヒーを、見下ろすとそこには寂しげな自分の顔が映し出されていた。
「情けない顔…」
俯きながらポツリと呟くと不意に近くで声を掛けられた。
「コーヒー好きなんですか?」
「え?」
声の方向を振り向くと、そこに自転車を持った男の子が立っていた。まだ高校生くらいだろうか?紺色のダウンジャケットを着ている。誰だろう…?
「あの…」
戸惑って首を傾げると男の子が言った。
「さっきもコーヒー注文していましたよね?」
「さっき…?」
そこでようやく私はこの男の子が誰か分った。
「あ、もしかしてファミレスの定員さん?」
「はい」
男の子はうなずくと、ためらいがちに言った。
「良かった…」
「え?」
「さっき…店の中でも泣いてたし、お金払う時も…思いつめた顔してたから気になっていたんです。そしたら今も公園で1人でいたから…もしかして、帰る家が無いんですか?」
「…」
まだ高校生くらいの見知らぬ男の子にそこまで心配して貰う程、酷い顔をしていたのだろうか?思わず男の子の顔をマジマジと見てしまった。
「あ…」
すると男の子は顔を一瞬で真赤に染めると視線をそらし、言った。
「す、すみませんでした!変な事言って!そ、それじゃ俺帰りますっ!」
男の子は慌てたように自転車をおして、そのまま公園を突き抜けて行く。
「待って!」
私は思わず声を掛けてしまった。
「は…はい?」
「ありがとう」
笑みを浮かべて、お礼を言うと男の子はますます顔を赤くして頭を下げると逃げるように去って行った。
「参ったな…まさかあんな年下の見知らぬ子に心配してもらうなんて…」
ぽつりとつぶやくと苦みのある、すっかり生ぬるくなったコーヒーをグイッと一気に飲むと立ち上がった。
「帰ろう…。2人共心配しているかもしれないし」
見知らぬ男の子のお陰で、少しだけ冷静になれた私は家へ向かって歩き始めた―。
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