273 / 519
第17章 3 嫉妬の涙
しおりを挟む
突然頬を叩かれた事と、 恵利さんの言葉に驚いて私は言葉を失っていると何を勘違いしたのか恵利さんはますます怒り出した。
「何よ!そんな目で私を見て…!そうよ!どうせ私は貴女に嫉妬してるわよ!」
「え…?私に嫉妬…?」
ジンジン痛む右頬を押さえていると、恵利さんは俯いて肩を震わせると言った。
「あの日、突然父に社長室に呼ばれたのよ。私にぴったりの結婚相手を見つけたって。社長室にやって来るから、私にも来るように言われて父に呼び出されのよ。そして現れたのが川口家電の社長と直人だった。直人はまさに理想のタイプの男性だったわ。私の結婚相手はこの人なんだって思っていた。てっきりお見合いの話しなのかと思っていたのに…いきなり直人は一緒にやって来た社長と土下座して…『買収だけは見逃して下さい』って言って来たのよ!」
「!」
その話は衝撃的だった。まさか…恵利さんの父親は直人さんの存在を知っていた‥?それで買収の話を川口家電に持ち込んだの…?恵利さんの話は続く。
「最初、何の事か私には分らなかったわ。私はてっきり2人の縁談の話しで来たとばかり思っていたから。そしたら父が言ったのよ。娘と直人が結婚するなら買収の話は無しにして、合併する事にしようって。そしたら直人、即答して断って来たのよ?結婚を前提に付き合っている恋人がいるから無理だって!」
「…」
その話は知っている。動画で直人さんが教えてくれたから…だけど、まさか恵利さんのお父さんが直人さんを始めから恵利さんの結婚相手に選んでいなんて‥
「あれを聞いたときには本当に驚いたわ。だって私は父から直人が結婚相手だって聞かされて行ったのに…まさに直人は私の理想の相手だったのに、それなのに私と言葉を交わす前に結婚出来ないって即答するんだから!」
ギリギリと恵利さんは歯を食いしばって私を睨み付けている。
「直人も馬鹿よ…もっと遠回しに断れば…私の気持ちは変わったかもしれないのに‥。私はね、直人の恋人である貴女に物凄く嫉妬した。だから父を巻き込んで、結婚してくれないなら会社を買収してやるって言ったのよ。そしたら直人も、直人の父親も真っ青な顔になって…そして直人は父親に泣きつかれて、その場で結婚に承諾してくれたわ。フフフ…あの時の彼の顔、貴女にも見せてあげたかったわ」
「そ、そんな…酷い…」
気付けば私の目には涙が浮かんでいた。酷すぎる…。直人さんを無理矢理脅迫して結婚を迫ったなんて…。
「泣くのやめなさいよ!泣きたいのはこっちの方なんだから!!」
恵利さんがヒステリックに叫ぶ。
「結婚を承諾してくれた直人は私に命じられるまま、引っ越しをして、会社を辞めて…スマホを新しくしたわ。私の申し出には何でも応じてくれたわ。呼び出せばすぐに来てくれた。だけどね、直人から私に連絡を入れてきたり、何処かへ誘ってくれた事は…今まで一度も無いわ」
「え…?でも、以前2人で会った時…直人さんから電話かかって来ていましたね…?」
「それは私があの時間に鳴ったら私のスマホに電話するように言ったからよ」
恵利さんはふてくされた様に言った。
「え?どうしてそんな真似を?」
「貴女ねエ!ここまで言ってもまだ分らないの?!私と直人の中を見せつけて…貴女に嫉妬させる為に仕組んだ事だってまだ分らないの?!」
「わ、私に…嫉妬させる為だけに…?」
そんな事しなくても私は直人さんと恵利さんの仲を嫉妬していたのに?
「ええ、そうよ!直人は自分から…絶対に手を繋ぐ事すらしてくれないのよ?!キスしてってお願いしても結婚まではする気が無いって言って…!」
いつの間にか恵利さんは泣いていた。
「直人の心の中には今だって貴女しかいないわ。でも私は直人が好き。絶対に彼から離れてやらないんだから。直人はもう二度と貴女と連絡は取り合わないって約束してくれたけど、それでも不安でたまらなかった。何所かで隠れて2人で合ってるんじゃないかって。婚約したのに、式だって挙げるのに不安でたまらなかったから興信所を雇って…貴女を見張らせていたのよ…!」
それじゃ…-直人さんのマンションの鍵を返すように言って来たのは恵利さんの独断だったの?イブのホテルのチケットも?
すすり泣く恵利さん。私だって泣きたくてたまらないのに、彼女はそれを許してはくれない。早く…早く1人になって思い切り泣きたい。どうせ…もう二度と直人さんに会う事は許されない。だったら―。
「安心して下さい。私は絶対に二度と直人さんとは連絡も取ることも会う事もしませんから…約束します‥。そ、その代り‥私のお願いも…聞いて貰えますか…?」
「な、何よ!私にお願いなんて…図々しいわね!」
恵利さんは涙を拭いながら言う。
「分っています。でも…どうか聞いて下さい。」
頭を下げた。涙が零れそうになる。
「そこまで言うなら…言うだけ言ってみなさいよ。聞き入れるかどうかは別だけど。」
恵利さんが話を聞く気になってくれた。だから私は言った。
「どうか…直人さんを幸せにしてあげて下さい」
と―。
「何よ!そんな目で私を見て…!そうよ!どうせ私は貴女に嫉妬してるわよ!」
「え…?私に嫉妬…?」
ジンジン痛む右頬を押さえていると、恵利さんは俯いて肩を震わせると言った。
「あの日、突然父に社長室に呼ばれたのよ。私にぴったりの結婚相手を見つけたって。社長室にやって来るから、私にも来るように言われて父に呼び出されのよ。そして現れたのが川口家電の社長と直人だった。直人はまさに理想のタイプの男性だったわ。私の結婚相手はこの人なんだって思っていた。てっきりお見合いの話しなのかと思っていたのに…いきなり直人は一緒にやって来た社長と土下座して…『買収だけは見逃して下さい』って言って来たのよ!」
「!」
その話は衝撃的だった。まさか…恵利さんの父親は直人さんの存在を知っていた‥?それで買収の話を川口家電に持ち込んだの…?恵利さんの話は続く。
「最初、何の事か私には分らなかったわ。私はてっきり2人の縁談の話しで来たとばかり思っていたから。そしたら父が言ったのよ。娘と直人が結婚するなら買収の話は無しにして、合併する事にしようって。そしたら直人、即答して断って来たのよ?結婚を前提に付き合っている恋人がいるから無理だって!」
「…」
その話は知っている。動画で直人さんが教えてくれたから…だけど、まさか恵利さんのお父さんが直人さんを始めから恵利さんの結婚相手に選んでいなんて‥
「あれを聞いたときには本当に驚いたわ。だって私は父から直人が結婚相手だって聞かされて行ったのに…まさに直人は私の理想の相手だったのに、それなのに私と言葉を交わす前に結婚出来ないって即答するんだから!」
ギリギリと恵利さんは歯を食いしばって私を睨み付けている。
「直人も馬鹿よ…もっと遠回しに断れば…私の気持ちは変わったかもしれないのに‥。私はね、直人の恋人である貴女に物凄く嫉妬した。だから父を巻き込んで、結婚してくれないなら会社を買収してやるって言ったのよ。そしたら直人も、直人の父親も真っ青な顔になって…そして直人は父親に泣きつかれて、その場で結婚に承諾してくれたわ。フフフ…あの時の彼の顔、貴女にも見せてあげたかったわ」
「そ、そんな…酷い…」
気付けば私の目には涙が浮かんでいた。酷すぎる…。直人さんを無理矢理脅迫して結婚を迫ったなんて…。
「泣くのやめなさいよ!泣きたいのはこっちの方なんだから!!」
恵利さんがヒステリックに叫ぶ。
「結婚を承諾してくれた直人は私に命じられるまま、引っ越しをして、会社を辞めて…スマホを新しくしたわ。私の申し出には何でも応じてくれたわ。呼び出せばすぐに来てくれた。だけどね、直人から私に連絡を入れてきたり、何処かへ誘ってくれた事は…今まで一度も無いわ」
「え…?でも、以前2人で会った時…直人さんから電話かかって来ていましたね…?」
「それは私があの時間に鳴ったら私のスマホに電話するように言ったからよ」
恵利さんはふてくされた様に言った。
「え?どうしてそんな真似を?」
「貴女ねエ!ここまで言ってもまだ分らないの?!私と直人の中を見せつけて…貴女に嫉妬させる為に仕組んだ事だってまだ分らないの?!」
「わ、私に…嫉妬させる為だけに…?」
そんな事しなくても私は直人さんと恵利さんの仲を嫉妬していたのに?
「ええ、そうよ!直人は自分から…絶対に手を繋ぐ事すらしてくれないのよ?!キスしてってお願いしても結婚まではする気が無いって言って…!」
いつの間にか恵利さんは泣いていた。
「直人の心の中には今だって貴女しかいないわ。でも私は直人が好き。絶対に彼から離れてやらないんだから。直人はもう二度と貴女と連絡は取り合わないって約束してくれたけど、それでも不安でたまらなかった。何所かで隠れて2人で合ってるんじゃないかって。婚約したのに、式だって挙げるのに不安でたまらなかったから興信所を雇って…貴女を見張らせていたのよ…!」
それじゃ…-直人さんのマンションの鍵を返すように言って来たのは恵利さんの独断だったの?イブのホテルのチケットも?
すすり泣く恵利さん。私だって泣きたくてたまらないのに、彼女はそれを許してはくれない。早く…早く1人になって思い切り泣きたい。どうせ…もう二度と直人さんに会う事は許されない。だったら―。
「安心して下さい。私は絶対に二度と直人さんとは連絡も取ることも会う事もしませんから…約束します‥。そ、その代り‥私のお願いも…聞いて貰えますか…?」
「な、何よ!私にお願いなんて…図々しいわね!」
恵利さんは涙を拭いながら言う。
「分っています。でも…どうか聞いて下さい。」
頭を下げた。涙が零れそうになる。
「そこまで言うなら…言うだけ言ってみなさいよ。聞き入れるかどうかは別だけど。」
恵利さんが話を聞く気になってくれた。だから私は言った。
「どうか…直人さんを幸せにしてあげて下さい」
と―。
0
お気に入りに追加
776
あなたにおすすめの小説
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
社長、嫌いになってもいいですか?
和泉杏咲
恋愛
ずっと連絡が取れなかった恋人が、女と二人きりで楽そうに話していた……!?
浮気なの?
私のことは捨てるの?
私は出会った頃のこと、付き合い始めた頃のことを思い出しながら走り出す。
「あなたのことを嫌いになりたい…!」
そうすれば、こんな苦しい思いをしなくて済むのに。
そんな時、思い出の紫陽花が目の前に現れる。
美しいグラデーションに隠された、花言葉が私の心を蝕んでいく……。
旦那様に離縁をつきつけたら
cyaru
恋愛
駆け落ち同然で結婚したシャロンとシリウス。
仲の良い夫婦でずっと一緒だと思っていた。
突然現れた子連れの女性、そして腕を組んで歩く2人。
我慢の限界を迎えたシャロンは神殿に離縁の申し込みをした。
※色々と異世界の他に現実に近いモノや妄想の世界をぶっこんでいます。
※設定はかなり他の方の作品とは異なる部分があります。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする
カエデネコ
恋愛
※カクヨムの方にも載せてあります。サブストーリーなども書いていますので、よかったら、お越しくださいm(_ _)m
リアンは有名私塾に通い、天才と名高い少女であった。しかしある日突然、陛下の花嫁探しに白羽の矢が立ち、有無を言わさず後宮へ入れられてしまう。
王妃候補なんてなりたくない。やる気ゼロの彼女は後宮の部屋へ引きこもり、怠惰に暮らすためにその能力を使うことにした。
中将閣下は御下賜品となった令嬢を溺愛する
cyaru
恋愛
幼い頃から仲睦まじいと言われてきた侯爵令息クラウドと侯爵令嬢のセレティア。
18歳となりそろそろ婚約かと思われていたが、長引く隣国との戦争に少年兵士としてクラウドが徴兵されてしまった。
帰りを待ち続けるが、22歳になったある日クラウドの戦死が告げられた。
泣き崩れるセレティアだったが、ほどなくして戦争が終わる。敗戦したのである。
戦勝国の国王は好色王としても有名で王女を差し出せと通達があったが王女は逃げた所を衛兵に斬り殺されてしまう。仕方なく高位貴族の令嬢があてがわれる事になったが次々に純潔を婚約者や、急遽婚約者を立ててしまう他の貴族たち。選ばれてしまったセレティアは貢物として隣国へ送られた。
奴隷のような扱いを受けるのだろうと思っていたが、豪華な部屋に通され、好色王と言われた王には一途に愛する王妃がいた。
セレティアは武功を挙げた将兵に下賜されるために呼ばれたのだった。
そしてその将兵は‥‥。
※作品の都合上、うわぁと思うような残酷なシーンがございます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※頑張って更新します。
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる