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第16章 11 私の決意
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井上君に連れて来られた場所はワンコインで食べられる定食屋さんだった。
「え…?ここって…」
「加藤さんはここの親子丼が好きだっただろう?一緒にここで昼飯食べよう」
井上君がここでようやく私の右手を離すと振り向いた。
「親子丼…」
その言葉に直人さんの事を思い出し、目頭が熱くなってしまった。思わず涙ぐむと井上くんが慌てた。
「な、何?!も、もしかして泣くほど感動したとか?」
その言葉があまりにも見当違いで私はおかしくなってしまった。
「フフ…そうだよ」
泣き笑いのような顔で私は井上君を見上げ、心の中でお礼を言った。
ありがとう―と。
****
結局、あんなに食欲なんか皆無だったのに私は注文した親子丼を綺麗に食べ終えることが出来た。きっとそれは一緒に食事した井上君のお陰だったのかもしれない。彼は始終面白おかしい話をして、私を楽しませてくれたから―。
「どうだった?久しぶりの定食屋さんは?」
食事を終えて2人で代理店へ向かって歩きながら井上くんが尋ねてきた。
「うん、とっても美味しかったよ。あれだけの味のクオリティでワンコインっていいよね?お味噌汁にお新香もついているんだもの。牛丼美味しかった?」
「ああ。つゆだくで美味しいよ」
井上くんが笑顔で答える。
「そっか…それじゃ今度私も牛丼食べてみようかな?」
「ああ、それがいいよ!また一緒に食べに来よう!…あ、でも…もしかしてこれって迷惑かな?」
「ううん、ちっとも迷惑なんかじゃないよ。むしろ…」
そう、私は今井上君の明るさに救われている。
「え?むしろ…何?」
「ううん、何でも無い…」
そしてそれから私と井上くんは他愛もない話をしながら代理店へと戻った―。
****
午後6時―
早番だった私は代理店の人たちに挨拶をして職場を出た。駅に向かって歩いているとスマホに着信が入ってきた。この瞬間、どうしても私は淡い期待をしてしまう。もしかしてこの電話は直人さんからなんじゃないかって。だけど…。
「亮平から…」
ため息をつくと私はスマホをタップした。
「もしもし?」
『ああ、鈴音。今夜はちょっと残業になりそうなんだ。お前のところへ行こうと思っていたんだけど…』
「今日はいいよ」
『え?何だって?』
「亮平だって年末で仕事が大変なのに…毎晩来て貰うのは悪いから、今夜はいいよ」
『だけど俺はお前が心配で…それに…』
「亮平、電話…繋がらなかったんでしょう?それにメールも」
『え?何で知ってるんだ?鈴音…川口に連絡入れたのか?』
「入れてないよ。だって…怖くて入れられなかったもの」
『だったら何で…』
「だって、亮平の事だもん。もし直人さんと連絡付けばすぐに私に教えてくれたでしょう?」
『ああ…その通りだよ』
「やっぱりね…だと思ったよ」
『鈴音、本当に大丈夫なのか?』
「うん、大丈夫だよ。後…今夜もう一度直人さんのマンションに行ってみる。」
本当は行くのが怖いけど…でも早く行かないと手遅れになりそうな気がするから。
『な、何だってっ?!どうしてまた行くんだよっ!あの部屋にはもう何も無かったんだろう?!それなのに何故行くんだっ?!』
「感だよ」
『え?感って何だよ』
「自分でも良く分からないけど…行かなくちゃ行けない気がするから…」
『鈴音…お前…』
気付けば駅に到着していた。
「亮平、駅に着いたから・・もう電話切るね。何かあれば電話するから。バイバイ」
亮平は何か言い掛けていたけど、私は電話を切った。そして前を向くと改札へ向かって歩き出した―。
「え…?ここって…」
「加藤さんはここの親子丼が好きだっただろう?一緒にここで昼飯食べよう」
井上君がここでようやく私の右手を離すと振り向いた。
「親子丼…」
その言葉に直人さんの事を思い出し、目頭が熱くなってしまった。思わず涙ぐむと井上くんが慌てた。
「な、何?!も、もしかして泣くほど感動したとか?」
その言葉があまりにも見当違いで私はおかしくなってしまった。
「フフ…そうだよ」
泣き笑いのような顔で私は井上君を見上げ、心の中でお礼を言った。
ありがとう―と。
****
結局、あんなに食欲なんか皆無だったのに私は注文した親子丼を綺麗に食べ終えることが出来た。きっとそれは一緒に食事した井上君のお陰だったのかもしれない。彼は始終面白おかしい話をして、私を楽しませてくれたから―。
「どうだった?久しぶりの定食屋さんは?」
食事を終えて2人で代理店へ向かって歩きながら井上くんが尋ねてきた。
「うん、とっても美味しかったよ。あれだけの味のクオリティでワンコインっていいよね?お味噌汁にお新香もついているんだもの。牛丼美味しかった?」
「ああ。つゆだくで美味しいよ」
井上くんが笑顔で答える。
「そっか…それじゃ今度私も牛丼食べてみようかな?」
「ああ、それがいいよ!また一緒に食べに来よう!…あ、でも…もしかしてこれって迷惑かな?」
「ううん、ちっとも迷惑なんかじゃないよ。むしろ…」
そう、私は今井上君の明るさに救われている。
「え?むしろ…何?」
「ううん、何でも無い…」
そしてそれから私と井上くんは他愛もない話をしながら代理店へと戻った―。
****
午後6時―
早番だった私は代理店の人たちに挨拶をして職場を出た。駅に向かって歩いているとスマホに着信が入ってきた。この瞬間、どうしても私は淡い期待をしてしまう。もしかしてこの電話は直人さんからなんじゃないかって。だけど…。
「亮平から…」
ため息をつくと私はスマホをタップした。
「もしもし?」
『ああ、鈴音。今夜はちょっと残業になりそうなんだ。お前のところへ行こうと思っていたんだけど…』
「今日はいいよ」
『え?何だって?』
「亮平だって年末で仕事が大変なのに…毎晩来て貰うのは悪いから、今夜はいいよ」
『だけど俺はお前が心配で…それに…』
「亮平、電話…繋がらなかったんでしょう?それにメールも」
『え?何で知ってるんだ?鈴音…川口に連絡入れたのか?』
「入れてないよ。だって…怖くて入れられなかったもの」
『だったら何で…』
「だって、亮平の事だもん。もし直人さんと連絡付けばすぐに私に教えてくれたでしょう?」
『ああ…その通りだよ』
「やっぱりね…だと思ったよ」
『鈴音、本当に大丈夫なのか?』
「うん、大丈夫だよ。後…今夜もう一度直人さんのマンションに行ってみる。」
本当は行くのが怖いけど…でも早く行かないと手遅れになりそうな気がするから。
『な、何だってっ?!どうしてまた行くんだよっ!あの部屋にはもう何も無かったんだろう?!それなのに何故行くんだっ?!』
「感だよ」
『え?感って何だよ』
「自分でも良く分からないけど…行かなくちゃ行けない気がするから…」
『鈴音…お前…』
気付けば駅に到着していた。
「亮平、駅に着いたから・・もう電話切るね。何かあれば電話するから。バイバイ」
亮平は何か言い掛けていたけど、私は電話を切った。そして前を向くと改札へ向かって歩き出した―。
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