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第16章 1 2人の幸せな時間

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 季節は早いもので12月になっていた。私と川口さんの交際は順調に続いていて、毎日を充実した日々を送っていた。同棲こそしてはいなかったけれども互いの休みの日の前日は私は直人さんのマンションに泊まりに行っていた。彼の部屋の方が広かったし、ベッドも大きかった。それに何よりも私の大好きなお風呂があったから―。

 
 19時半―

直人さんのマンションで食事を作ってると、玄関でガチャリとドアが開く音が聞こえた。

「あ、帰ってきたんだ。」

ガスの火を消して玄関へ向かうと会社のユニフォームを着た直人さんが靴を脱いでいる所だった。

「お帰りなさい」

笑顔で言うと、彼は笑って振り向くと言った。

「ただいま」

そしていつものように私を抱き寄せ、キスをしてくる。少しの間、抱き合ってキスしていると直人さんがそっと唇を離すと言った。

「何だかすごくいい匂いがするね。何作ってくれたの?」

「今夜はね、肉じゃがを作ったよ。後はだし巻き卵にお味噌汁。それにほうれん草の胡麻和えだよ」

「そうか。どれも美味しそうだな、それじゃ…」

「お風呂ならもう沸かしてあるからいつでも入れるよ?疲れてるでしょう?もう着がえも用意してあるから」

すると直人さんは再び私を抱き寄せると言った。

「ありがとう、鈴音。好きだよ」

「うん、私も直人さんが好き」

今の私は心から素直にそう言えるようになっていた。

「それじゃお風呂入って来るよ」

直人さんはそのままバスルームへ向かい、私は2人分の食事の準備を進めた―。



****

「うん、美味いっ!」

直人さんは肉じゃがを口に入れると笑顔で言った。

「そう?ありがとう」

お世辞でも料理を褒められると嬉しくなる。するとまるで私の心を見透かしたかのように直人さんが言った。 

「別にお世辞じゃないからね」

「わ、分ってるから大丈夫だよ」

何で私の考えている事が分ったのだろう?私はごまかすために、だし巻き卵を口に入れた。

「ところで、今日病院に行って来たんだよね?この間のMRIの検査を聞いて来たんだろう?どうだった?」

お味噌汁を飲みながら直人さんが尋ねてきた。

「うん、大丈夫。何所も異常は無かったよ。それにもう薬が効いているのか突然眠気が襲ってくることも無くなったし」

「そうか、それは良かった」

直人さんは私を見て微笑む。

「ところで鈴音…」

「何?」

「クリスマスイブ、休み取れたんだよね?」

「うん、何とか取れたよ。職場の人達にはデートなのかって、からかわれちゃった」

「そうか、それで何て言ったんだい?」

「勿論、デートですって答えたよ?」

「そっか、皆に恋人がいる事を宣言してくれたんだな?」

直人さんの手が伸びて来て私の頭を撫でる。直人さんは私の頭を撫でるのが好きみたいだから、少し子供っぽい事をされていると思いつつも、私は直人さんにその身を委ねる。

「それで、鈴音。またクリスマスイブはディズニーランドへ行こう。もうホテルも予約してあるんだ。2人で初デートした時と同じホテルをまた予約したんだ」

「えっ?!クリスマスイブなのによく予約出来たね?料金だって高いじゃない!」

すると直人さんは笑って言う。

「だって2人の特別な記念日だからね。妥協はしたくなかったんだ。鈴音の事が…大切だから」

「直人さん…」

すると直人さんはテーブルの上に置いた私の手をそっと握りしめて来ると言った。

「鈴音、今夜…泊まって行ってくれるよね?」

勿論、私の答えは決まっている。

「うん。始めからそうするつもりだったから…」

そして私達は微笑み合った。


****

 真夜中―

ふと直人さんの腕の中で私は目が覚めた。彼を見ると気持ちよさそうに眠っている。
彼の寝顔を見て思った。私は今、すごく幸せな時間を過ごしているのだと。
そして何故か、ふとお姉ちゃんと亮平の事が思い出された。あれから亮平とは殆ど音信不通状態になってはいたけど、お姉ちゃんとは定期的に連絡を取り合っていた。
2人は恋人同士の関係にまだ戻ってはいないようだけども、頻繁に会っているみたいで、お姉ちゃんも徐々に亮平の事を意識しだしているように感じた。

 今年のクリスマスはお姉ちゃんと亮平は2人で過ごすのかな…?

そして私は直人さんの胸に身体を預けて目を閉じた―。



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