上 下
222 / 519

第14章 16 もう一度恋人同士に

しおりを挟む
 亮平の慌てた様子に、こっちの機がそがれてしまった。

「何?どうしたの・・・そんなに慌てた様子で・・。」

『鈴音、お前今一体どこにいるんだ?』

「え?」

一体亮平は突然何を言いだすのだろう。

「どこって・・・自分のマンションだけど?」

『あいつの・・川口のマンションじゃないのか?』

「え?そんなわけないでしょう?」

『本当だろうな・・・?』

何でここで念を押されなくちゃならないのだろう。一体亮平は私の事をどいう言う目で見ているのか理解できない。それに仮に私が川口さんのマンションにいたとして・・それが亮平に関係あるのだろうか?

「あたりまえでしょう・・・?大体こんな遅い時間だし。それに明日から仕事が始まるから早く寝ないといけないんだからね。」

『・・・何だよ。だったら俺なんかに電話していないでさっさと寝ればいいだろう?』

今夜の亮平はどうしてこんなに喧嘩腰なのだろう?お姉ちゃんが相手なら・・絶対にこんな事にはならないわけだし・・。
そこまで考えて気が付いた。
ひょっとすると亮平の機嫌が悪いのはお姉ちゃんが原因かもしれない。お姉ちゃんは亮平と恋人同士だった過去をすっかり忘れている。その為に亮平はお姉ちゃんと恋人らしく時間を過ごす事が出来なくなってしまった・・・。やっぱりここは私が2人に仲を取り持って・・・以前のような関係に戻してあげるのが一番いいのかもしれない。でも今はとりあえず川口さんの事を話しておかないと。

「亮平。もう・・・川口さんには電話をかけないで。」

『え?なんでお前にそんな事言われなくちゃならないんだ?』

その言葉にムッときたけど、私は自分を抑え込むと言った。

「2人が友達同士って言うなら電話をするのは止めないけど・・どう見てもそうは思えないんだもの。どうせ私の事で彼に文句を言うために電話をかけているだけなんでしょう?もう・・・彼には迷惑かけないで。」

すると亮平から驚くべき言葉が飛び出してきた。

『鈴音・・お前、今川口の事『彼』って言ったな?やっぱり2人はもう付き合っていたんだろう?!』

まただ・・・亮平はどうしても私と川口さんが付き合っていると思いたいようだ。

「だったらどうなの?」

『え?』

「仮に・・・私が川口さんと交際を始めたからと言って・・・亮平には何も関係無いでしょう?」
 
『あ、ああ・・確かにそうなんだけど・・・。』

「とにかく、もう川口さんには電話を掛けないで。お願い。」

『わ・・分かったよ・・。』

亮平は不承不承承諾した。

「ありがとう、その代わり・・私がもう一度お姉ちゃんと恋人同士の関係に戻れるように橋渡しするから。」

『え?鈴音。・・本気で言ってるのか?』

「うん。本気だよ。」

『そうか・・・。』

何故か電話越しから聞こえてくる亮平の声に元気がない。

「何?お姉ちゃんと恋人同士に戻りたくないの?」

『そんなことは無い。ただ・・・忍にはもう好きな男がいるみたいだし・・。』

「ひょっとして・・ケースワーカーさんの事?」

『ああ。』

「でも・・服部さんはお姉ちゃんの事をそういう目で見ているかどうか分からないし・・・。」

それにお姉ちゃんと亮平が元のさやに納まってくれなければ、私だっていつまでたっても亮平に対する気持ちを引きずったままで前に進めない。

「とにかくお姉ちゃんとのことは・・私が何とかするから。その代りにもう川口さんには関わらないでね?」

『わ・・分かったよ・・。』

ため息をつきながら返事をする声が聞こえてきた。

「それじゃ・・電話切るね。お休みなさい。」

『お休み・・・。』


ピッ

通話を切って時計を見ると時刻は23時になろうとしている。

「明日の為に・・もう寝なくちゃ。」

スマホのアラームを午前6時にセットして部屋の電気を消した私はベッドにもぐりこむと、すぐに深い眠りへとついた―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

旦那様に離縁をつきつけたら

cyaru
恋愛
駆け落ち同然で結婚したシャロンとシリウス。 仲の良い夫婦でずっと一緒だと思っていた。 突然現れた子連れの女性、そして腕を組んで歩く2人。 我慢の限界を迎えたシャロンは神殿に離縁の申し込みをした。 ※色々と異世界の他に現実に近いモノや妄想の世界をぶっこんでいます。 ※設定はかなり他の方の作品とは異なる部分があります。

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

中将閣下は御下賜品となった令嬢を溺愛する

cyaru
恋愛
幼い頃から仲睦まじいと言われてきた侯爵令息クラウドと侯爵令嬢のセレティア。 18歳となりそろそろ婚約かと思われていたが、長引く隣国との戦争に少年兵士としてクラウドが徴兵されてしまった。 帰りを待ち続けるが、22歳になったある日クラウドの戦死が告げられた。 泣き崩れるセレティアだったが、ほどなくして戦争が終わる。敗戦したのである。 戦勝国の国王は好色王としても有名で王女を差し出せと通達があったが王女は逃げた所を衛兵に斬り殺されてしまう。仕方なく高位貴族の令嬢があてがわれる事になったが次々に純潔を婚約者や、急遽婚約者を立ててしまう他の貴族たち。選ばれてしまったセレティアは貢物として隣国へ送られた。 奴隷のような扱いを受けるのだろうと思っていたが、豪華な部屋に通され、好色王と言われた王には一途に愛する王妃がいた。 セレティアは武功を挙げた将兵に下賜されるために呼ばれたのだった。 そしてその将兵は‥‥。 ※作品の都合上、うわぁと思うような残酷なシーンがございます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※頑張って更新します。

ゼラニウムの花束をあなたに

ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。 じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。 レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。 二人は知らない。 国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。 彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。 ※タイトル変更しました

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

処理中です...