209 / 519
第14章 3 姉からの誘い
しおりを挟む
亮平に私の交通事故の件で対応してくれたことへの感謝のメールを送った後、私はお姉ちゃんにメールを送った。内容は今病院を出たこと、検査は受けたけれども結果が出るのは来週ということ、突然の眠気に襲われないように薬が出たこと。それらを完結にまとめてメールを送信した後、バス停乗り場に向かって歩いていると突然電話がかかかってきた。
「誰からだろう・・?」
そして着信相手を見て驚いた。それはお姉ちゃんからだった。
「もしもし?」
スマホをタップすると、お姉ちゃんの声が聞こえてきた。
『もしもし、鈴音ちゃん?』
「うん、私だよ。」
『もう病院から出たのよね?』
「そうだよ、今バスを待ってこれから帰るところ。」
『う~ん・・・。』
お姉ちゃんの考え込む声が聞こえてきた。
「どうしたの?」
『あの・・ね。鈴音ちゃん。家によって行かない?できれば・・一緒に夜ご飯食べましょうよ。鈴音ちゃんの好きな親子丼作るから。』
「親子丼・・・。」
やっぱりお姉ちゃんは昔のお姉ちゃんに戻ってくれたのだろうか?お父さんとお母さんが飛行機事故で死んじゃってからは・・私を元気づける為、お姉ちゃんはしょっちゅう私の好きな親子丼を作ってくれていた。それと同時に川口さんの顔が浮かんでくる。どこか悲し気な目で私を見つめるその瞳・・・。
『もしもし、鈴音ちゃん?どうかした?』
私が黙ってしまったことがお姉ちゃんを不安にさせてしまったのだろうか?何処か心配そうに私に声を掛けてきた。
「ううん、何でも無いよ。でも・・・・。」
お姉ちゃんが・・・私と歩み寄ろうとしてくれているなら・・私もお姉ちゃんと距離を置くことはもうやめたほうがいいのかもしれない。
『やっぱり・・・駄目かしら・・・。』
寂しげなお姉ちゃんの声が聞こえてくる。
「ううん、駄目じゃないよ。うん、これからタクシーで向かうから待っていて。」
『本当?嬉しいっ!それじゃ待ってるわね?』
途端に電話口で嬉しそうな声が聞こえてきた。
「うん、今から30分くらいで行けると思うから・・待っていてね。それじゃまたね。」
そして電話を切ると、私は踵を返してタクシー乗り場へ向かった―。
タクシーに乗り始めて20分後―
窓の外をぼんやり眺めていると、ついにポツポツと雨が降り出してきた。
「ああ・・とうとう雨が降ってきてしまいましたね・・・。」
40代前後と思われるタクシードライバーの男性が声を掛けてきた。
「ええ・・そうですね・・・。」
窓の外の景色を眺めながら私は返事をした。やがて・・雨は本降りになってきた。
タクシーの中にいてもザアザアと雨の音が聞こえてくる。
「お客さん、傘はお持ちですか?」
再び運転手さんが声を掛けてきた。
「はい、持っています。」
「そうですか、なら良かったです。お持ちじゃないなら一緒に降りて玄関まで傘をさしてあげようかと思っていたので。」
「いえ、そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ。ご親切にありがとうございます。」
「いえ・・・それほどでもありませんよ。」
運転手さんは頭をかいている。
ミラー越しに見えた運転手さんの顔は・・・恥ずかしそうに笑っていた―。
「どうもありがとうございました。」
土砂降りの雨の中、傘をさして降りた私は運転手さんにお礼を述べた。
「またのご利用をお待ちしております。」
運転手さんはそれだけ言うと、走り去って行った。
そして私も家の門を開けて・・玄関に立つとインターホンを押した―。
「誰からだろう・・?」
そして着信相手を見て驚いた。それはお姉ちゃんからだった。
「もしもし?」
スマホをタップすると、お姉ちゃんの声が聞こえてきた。
『もしもし、鈴音ちゃん?』
「うん、私だよ。」
『もう病院から出たのよね?』
「そうだよ、今バスを待ってこれから帰るところ。」
『う~ん・・・。』
お姉ちゃんの考え込む声が聞こえてきた。
「どうしたの?」
『あの・・ね。鈴音ちゃん。家によって行かない?できれば・・一緒に夜ご飯食べましょうよ。鈴音ちゃんの好きな親子丼作るから。』
「親子丼・・・。」
やっぱりお姉ちゃんは昔のお姉ちゃんに戻ってくれたのだろうか?お父さんとお母さんが飛行機事故で死んじゃってからは・・私を元気づける為、お姉ちゃんはしょっちゅう私の好きな親子丼を作ってくれていた。それと同時に川口さんの顔が浮かんでくる。どこか悲し気な目で私を見つめるその瞳・・・。
『もしもし、鈴音ちゃん?どうかした?』
私が黙ってしまったことがお姉ちゃんを不安にさせてしまったのだろうか?何処か心配そうに私に声を掛けてきた。
「ううん、何でも無いよ。でも・・・・。」
お姉ちゃんが・・・私と歩み寄ろうとしてくれているなら・・私もお姉ちゃんと距離を置くことはもうやめたほうがいいのかもしれない。
『やっぱり・・・駄目かしら・・・。』
寂しげなお姉ちゃんの声が聞こえてくる。
「ううん、駄目じゃないよ。うん、これからタクシーで向かうから待っていて。」
『本当?嬉しいっ!それじゃ待ってるわね?』
途端に電話口で嬉しそうな声が聞こえてきた。
「うん、今から30分くらいで行けると思うから・・待っていてね。それじゃまたね。」
そして電話を切ると、私は踵を返してタクシー乗り場へ向かった―。
タクシーに乗り始めて20分後―
窓の外をぼんやり眺めていると、ついにポツポツと雨が降り出してきた。
「ああ・・とうとう雨が降ってきてしまいましたね・・・。」
40代前後と思われるタクシードライバーの男性が声を掛けてきた。
「ええ・・そうですね・・・。」
窓の外の景色を眺めながら私は返事をした。やがて・・雨は本降りになってきた。
タクシーの中にいてもザアザアと雨の音が聞こえてくる。
「お客さん、傘はお持ちですか?」
再び運転手さんが声を掛けてきた。
「はい、持っています。」
「そうですか、なら良かったです。お持ちじゃないなら一緒に降りて玄関まで傘をさしてあげようかと思っていたので。」
「いえ、そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ。ご親切にありがとうございます。」
「いえ・・・それほどでもありませんよ。」
運転手さんは頭をかいている。
ミラー越しに見えた運転手さんの顔は・・・恥ずかしそうに笑っていた―。
「どうもありがとうございました。」
土砂降りの雨の中、傘をさして降りた私は運転手さんにお礼を述べた。
「またのご利用をお待ちしております。」
運転手さんはそれだけ言うと、走り去って行った。
そして私も家の門を開けて・・玄関に立つとインターホンを押した―。
10
お気に入りに追加
793
あなたにおすすめの小説
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
偽りの結婚生活 ~私と彼の6年間の軌跡
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
偽りの結婚をした男性は決して好きになってはいけない私の初恋の人でした―
大手企業に中途採用された「私」。だけどその実態は仮の結婚相手になる為の口実・・。
これは、初恋の相手を好きになってはいけない「私」と「彼」・・そして2人を取り巻く複雑な人間関係が繰り広げられる6年間の結婚生活の軌跡の物語—。
<全3部作:3部作目で完結です:終章に入りました:本編完結、番外編完結しました>
※カクヨム・小説家になろうにも投稿しています
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
政略結婚だけど溺愛されてます
紗夏
恋愛
隣国との同盟の証として、その国の王太子の元に嫁ぐことになったソフィア。
結婚して1年経っても未だ形ばかりの妻だ。
ソフィアは彼を愛しているのに…。
夫のセオドアはソフィアを大事にはしても、愛してはくれない。
だがこの結婚にはソフィアも知らない事情があって…?!
不器用夫婦のすれ違いストーリーです。
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。
たろ
恋愛
幼馴染のロード。
学校を卒業してロードは村から街へ。
街の警備隊の騎士になり、気がつけば人気者に。
ダリアは大好きなロードの近くにいたくて街に出て子爵家のメイドとして働き出した。
なかなか会うことはなくても同じ街にいるだけでも幸せだと思っていた。いつかは終わらせないといけない片思い。
ロードが恋人を作るまで、夢を見ていようと思っていたのに……何故か自分がロードの恋人になってしまった。
それも女避けのための(仮)の恋人に。
そしてとうとうロードには愛する女性が現れた。
ダリアは、静かに身を引く決意をして………
★ 短編から長編に変更させていただきます。
すみません。いつものように話が長くなってしまいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる