190 / 519
第13章 11 再びの焼き鳥屋
しおりを挟む
19時5分前に指定された焼き鳥屋さんに行くと、既に店の前には白いTシャツ姿にジーンズ姿の川口さんが待っていた。
川口さんは私の姿を見ると、パッと嬉しそうに笑みを浮かべて大股で近付いてきた。
そして私の前でぴたりと足を止めると言った。
「良かった・・・来てくれたんだね?」
そして嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「う、うん・・。だってあの時・・・結局約束果たせなかったし・・昨夜は亮平が失礼なことしちゃったし・・・。」
何故か川口さんの表情が曇る。
「え・・?ひょっとしてそんな理由で・・・ここに来たの?」
「う、うん・・・・。」
「そうか・・。俺はてっきり・・・。」
川口さんは一瞬傷ついた様子で私を見た。
「え?川口さん・・?」
すると次の瞬間、笑顔で私を見た。
「でも・・理由はどうあれ、来てくれて嬉しいよ。ありがとう。」
「そんな、お礼を言われるほどの事じゃないから・・。」
しかし、それには答えず川口さんは言った。
「さ、それじゃ店の中に入ろう?」
「う、うん・・・。」
私は川口さんに促され、店内へと入った。
「いらっしゃいませー。空いているお席へどうぞー。」
店内へ入ると威勢の良い掛け声がかかる。すると川口さんが私を振り返ると言った。
「確か加藤さんは座敷の席よりもテーブルの方がいいんだよね?」
「うん。もしかして・・覚えていたの?」
「もちろんだよ。加藤さんとの会話は・・全部覚えてる。」
川口さんは私をじっと見つめ・・・意味深な言い方をする。
「そ、そうなの?記憶力いいんだね?」
その言葉が何を意味するかは・・深く考えないでおくことにしよう。
「それじゃ、あの席に座ろう。」
川口さんが決めた席はお店にお一番奥にある4人掛けのテーブル席だった。2人で向かい合わせに座ると、さっそく川口さんが言う。
「加藤さんは、親子丼が食べたいって言ってたよね?」
「うん。確かに言ったけど?」
「それじゃ2人で親子丼食べよう。」
そして川口さんはサッと手を挙げて、店員さんを呼ぶと親子丼2つを頼んだ。
店員さんが去ると川口さんが言った。
「お酒・・・今頼まなかったけど、ひょっとして飲みたかった?」
「ううん、親子丼食べたらお酒飲めないかもしれないから・・別に頼まなくていいよ。余裕があったら食べるから。」
「そうだね・・・」
川口さんはじっと私を見るといった。
「加藤さん・・入院生活大変だったんだろう?以前も瘦せていたけど・・今はその頃よりも痩せてしまったように見える。だから・・余計なお世話かもしれないけど、栄養をつけてもらいたくて、今日は強引に誘ってしまったんだ。」
「そうだったの?・・ありがとう。気を使ってくれたんだね。」
「いや・・それだけじゃないんだけどね。」
「?」
まさか・・・やっぱり・・?
「ところで、今は仕事休んでいるんだよね?今月いっぱいくらいは休むのかな?」
「ううん・・来週の木曜日からは仕事に復帰しようかと思って・・。一人暮らしだからお金の事もあるし・・何よりあまり休んでいたら会社クビになってしまうかもしれないしね。」
「え?!今の話・・本当に・・?」
「ち、違うってばっ!ほんの冗談だから・・今の話は忘れて。」
慌てて言ったその矢先・・・。
「お待たせいたしました。」
店員さんがやってきて私と川口さんの前に親子丼を置いた。
「ごゆっくりどうぞ。」
店員さんが去ると、私たちはさっそく丼ぶりの蓋を開けた。すると湯気とともに黄色に輝くとろとろの親子丼が姿を現した。
「うわあ~本当においしそう・・・。」
何だか久しぶりに食欲がわいてきた気がする。
「うん、この店の親子丼は本当においしいよ。それじゃいただきます。」
「いただきます。」
私も川口さんにならっていただきますを言う。
川口さんはさっそく箸をつけて食べ始めた。
「うん、おいしいっ!加藤さんも食べてみなよ!」
言われた私はさっそく箸で口に運んでみる。
その味は・・・やっぱり絶品だった―。
川口さんは私の姿を見ると、パッと嬉しそうに笑みを浮かべて大股で近付いてきた。
そして私の前でぴたりと足を止めると言った。
「良かった・・・来てくれたんだね?」
そして嬉しそうに笑顔を浮かべる。
「う、うん・・。だってあの時・・・結局約束果たせなかったし・・昨夜は亮平が失礼なことしちゃったし・・・。」
何故か川口さんの表情が曇る。
「え・・?ひょっとしてそんな理由で・・・ここに来たの?」
「う、うん・・・・。」
「そうか・・。俺はてっきり・・・。」
川口さんは一瞬傷ついた様子で私を見た。
「え?川口さん・・?」
すると次の瞬間、笑顔で私を見た。
「でも・・理由はどうあれ、来てくれて嬉しいよ。ありがとう。」
「そんな、お礼を言われるほどの事じゃないから・・。」
しかし、それには答えず川口さんは言った。
「さ、それじゃ店の中に入ろう?」
「う、うん・・・。」
私は川口さんに促され、店内へと入った。
「いらっしゃいませー。空いているお席へどうぞー。」
店内へ入ると威勢の良い掛け声がかかる。すると川口さんが私を振り返ると言った。
「確か加藤さんは座敷の席よりもテーブルの方がいいんだよね?」
「うん。もしかして・・覚えていたの?」
「もちろんだよ。加藤さんとの会話は・・全部覚えてる。」
川口さんは私をじっと見つめ・・・意味深な言い方をする。
「そ、そうなの?記憶力いいんだね?」
その言葉が何を意味するかは・・深く考えないでおくことにしよう。
「それじゃ、あの席に座ろう。」
川口さんが決めた席はお店にお一番奥にある4人掛けのテーブル席だった。2人で向かい合わせに座ると、さっそく川口さんが言う。
「加藤さんは、親子丼が食べたいって言ってたよね?」
「うん。確かに言ったけど?」
「それじゃ2人で親子丼食べよう。」
そして川口さんはサッと手を挙げて、店員さんを呼ぶと親子丼2つを頼んだ。
店員さんが去ると川口さんが言った。
「お酒・・・今頼まなかったけど、ひょっとして飲みたかった?」
「ううん、親子丼食べたらお酒飲めないかもしれないから・・別に頼まなくていいよ。余裕があったら食べるから。」
「そうだね・・・」
川口さんはじっと私を見るといった。
「加藤さん・・入院生活大変だったんだろう?以前も瘦せていたけど・・今はその頃よりも痩せてしまったように見える。だから・・余計なお世話かもしれないけど、栄養をつけてもらいたくて、今日は強引に誘ってしまったんだ。」
「そうだったの?・・ありがとう。気を使ってくれたんだね。」
「いや・・それだけじゃないんだけどね。」
「?」
まさか・・・やっぱり・・?
「ところで、今は仕事休んでいるんだよね?今月いっぱいくらいは休むのかな?」
「ううん・・来週の木曜日からは仕事に復帰しようかと思って・・。一人暮らしだからお金の事もあるし・・何よりあまり休んでいたら会社クビになってしまうかもしれないしね。」
「え?!今の話・・本当に・・?」
「ち、違うってばっ!ほんの冗談だから・・今の話は忘れて。」
慌てて言ったその矢先・・・。
「お待たせいたしました。」
店員さんがやってきて私と川口さんの前に親子丼を置いた。
「ごゆっくりどうぞ。」
店員さんが去ると、私たちはさっそく丼ぶりの蓋を開けた。すると湯気とともに黄色に輝くとろとろの親子丼が姿を現した。
「うわあ~本当においしそう・・・。」
何だか久しぶりに食欲がわいてきた気がする。
「うん、この店の親子丼は本当においしいよ。それじゃいただきます。」
「いただきます。」
私も川口さんにならっていただきますを言う。
川口さんはさっそく箸をつけて食べ始めた。
「うん、おいしいっ!加藤さんも食べてみなよ!」
言われた私はさっそく箸で口に運んでみる。
その味は・・・やっぱり絶品だった―。
11
お気に入りに追加
776
あなたにおすすめの小説
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
旦那様に離縁をつきつけたら
cyaru
恋愛
駆け落ち同然で結婚したシャロンとシリウス。
仲の良い夫婦でずっと一緒だと思っていた。
突然現れた子連れの女性、そして腕を組んで歩く2人。
我慢の限界を迎えたシャロンは神殿に離縁の申し込みをした。
※色々と異世界の他に現実に近いモノや妄想の世界をぶっこんでいます。
※設定はかなり他の方の作品とは異なる部分があります。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする
カエデネコ
恋愛
※カクヨムの方にも載せてあります。サブストーリーなども書いていますので、よかったら、お越しくださいm(_ _)m
リアンは有名私塾に通い、天才と名高い少女であった。しかしある日突然、陛下の花嫁探しに白羽の矢が立ち、有無を言わさず後宮へ入れられてしまう。
王妃候補なんてなりたくない。やる気ゼロの彼女は後宮の部屋へ引きこもり、怠惰に暮らすためにその能力を使うことにした。
中将閣下は御下賜品となった令嬢を溺愛する
cyaru
恋愛
幼い頃から仲睦まじいと言われてきた侯爵令息クラウドと侯爵令嬢のセレティア。
18歳となりそろそろ婚約かと思われていたが、長引く隣国との戦争に少年兵士としてクラウドが徴兵されてしまった。
帰りを待ち続けるが、22歳になったある日クラウドの戦死が告げられた。
泣き崩れるセレティアだったが、ほどなくして戦争が終わる。敗戦したのである。
戦勝国の国王は好色王としても有名で王女を差し出せと通達があったが王女は逃げた所を衛兵に斬り殺されてしまう。仕方なく高位貴族の令嬢があてがわれる事になったが次々に純潔を婚約者や、急遽婚約者を立ててしまう他の貴族たち。選ばれてしまったセレティアは貢物として隣国へ送られた。
奴隷のような扱いを受けるのだろうと思っていたが、豪華な部屋に通され、好色王と言われた王には一途に愛する王妃がいた。
セレティアは武功を挙げた将兵に下賜されるために呼ばれたのだった。
そしてその将兵は‥‥。
※作品の都合上、うわぁと思うような残酷なシーンがございます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※頑張って更新します。
ゼラニウムの花束をあなたに
ごろごろみかん。
恋愛
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる