176 / 519
第12章 11 姉の話
しおりを挟む
「・・さん、加藤さん。」
・・・誰かが呼びかけて来る声が聞こえる・・・。
「ん・・?」
ぼんやりと目を開けると私を見下ろしている白衣の男の先生が立っていた。
「あ・・先生・・・。」
主治医の田中先生だった。
「お休みの処、すみません。回診の時間ですよ。」
「あ・・い、いえ。こちらこそ眠ってしまっていてすみません・・・。」
「看護師に聞いたのですが・・よくウトウトしていつの間にか眠くなってしまうそうですが・・・?」
「はい・・・そうなんです・・・。今も眠ってしまっていて・・。」
おじさんとおばさんじは30分程で帰って行った。あまり長居して私を疲れさせてはいけないとの配慮からだった。その後ぼんやりしていたら、いつの間にか眠っていて・・。
「恐らく事故の後遺症ですね。幸い加藤さんは事故の時頭を強打することは無かったのですが・・来週MRIを撮ってみましょう。他に何か気になる事はありますか・・?」
その後、30分程先生の回診は続いた―。
午後7時―
看護師さんがつけてくれたテレビを見ていた私はリモコンを握り締めてみた。
「あ・・持てる・・。」
今迄自分で手を動かすことは殆ど無かったけれども、自分で持つことが出来た。これからは起きている間は少しずつ自分で出来る範囲でリハビリをしていかなくちゃ。そこであることに気が付いた。
「そう言えば・・・私のアパート・・どうなっているんだろう・・?」
家賃は自動引き落としだからいいけども、家主のいない部屋でガスや水道料金が引き落とされるのは少々辛い。仕事だってどうなっているか分からないし・・・。
「私・・・社会復帰できるのかな・・・?」
そこまで考えていると、再び強い眠気が襲ってきて・・私は、また眠りに就き・・・朝まで目が覚める事は無かった・・。
翌朝―
「う~ん・・・。」
目が覚めて、まだ伸びが出来ない代わりにうなると、突然声が聞こえて来た。
「鈴音っ?!起きたのかっ?!」
え・・・?
驚いて視線を動かすと、そこに私の足元に立って心配そうに見下ろしている亮平の姿があった。
「りょ・・亮平・・・?な、何で・・ここに・・・?」
そして視線をぐるりと動かして壁に掛けてある時計を見ると時間は10時をさしている。
「ああ。今日も日曜で仕事が休みだから・・・鈴音の見舞いに来たんだよ。」
亮平は枕元に椅子を持ってくると座った。
「み、見舞いにって・・・こんな朝早くから・・・。」
「土日は朝10時から面会できるから問題は無いぞ?」
「そ、そうじゃなくて・・・何も毎日面会に来る必要はないよ?亮平だって忙しいだろうし・・。」
そこまで言いかけて、気が付いた。
「ああ、そう言えば・・お姉ちゃんの・・面会には行ってきたの・・?」
「行ってきたよ・・・。」
私が尋ねると亮平はバツが悪そうに視線をそらせながら言う。
「そう・・・。それで・・どうだった?」
「何が・・?」
「何がって・・お姉ちゃんの様子だよ・・?」
すると亮平は戸惑ったように尋ねてきた。
「鈴音・・・お前、忍の事話して・・・平気なのか・・?」
「平気って・・何が?」
「・・ほんとは薄々気が付いているんじゃないのか・・?あの交通事故の時の出来事・・・。」
「・・・。」
私は黙って天井を見つめると言った。
「お姉ちゃん・・・多重人格者だったんでしょう・・?」
亮平の息を飲む気配を感じ・・その後。、重々しく口を開いた。
「ああ・・・そうなんだ・・。あの時・・鈴音を事故に巻き込んだ忍は・・・ずっと今まで表に出ていた・・鈴音を憎む忍だったんだ・・・。」
亮平は観念したかのように話し始めた―。
・・・誰かが呼びかけて来る声が聞こえる・・・。
「ん・・?」
ぼんやりと目を開けると私を見下ろしている白衣の男の先生が立っていた。
「あ・・先生・・・。」
主治医の田中先生だった。
「お休みの処、すみません。回診の時間ですよ。」
「あ・・い、いえ。こちらこそ眠ってしまっていてすみません・・・。」
「看護師に聞いたのですが・・よくウトウトしていつの間にか眠くなってしまうそうですが・・・?」
「はい・・・そうなんです・・・。今も眠ってしまっていて・・。」
おじさんとおばさんじは30分程で帰って行った。あまり長居して私を疲れさせてはいけないとの配慮からだった。その後ぼんやりしていたら、いつの間にか眠っていて・・。
「恐らく事故の後遺症ですね。幸い加藤さんは事故の時頭を強打することは無かったのですが・・来週MRIを撮ってみましょう。他に何か気になる事はありますか・・?」
その後、30分程先生の回診は続いた―。
午後7時―
看護師さんがつけてくれたテレビを見ていた私はリモコンを握り締めてみた。
「あ・・持てる・・。」
今迄自分で手を動かすことは殆ど無かったけれども、自分で持つことが出来た。これからは起きている間は少しずつ自分で出来る範囲でリハビリをしていかなくちゃ。そこであることに気が付いた。
「そう言えば・・・私のアパート・・どうなっているんだろう・・?」
家賃は自動引き落としだからいいけども、家主のいない部屋でガスや水道料金が引き落とされるのは少々辛い。仕事だってどうなっているか分からないし・・・。
「私・・・社会復帰できるのかな・・・?」
そこまで考えていると、再び強い眠気が襲ってきて・・私は、また眠りに就き・・・朝まで目が覚める事は無かった・・。
翌朝―
「う~ん・・・。」
目が覚めて、まだ伸びが出来ない代わりにうなると、突然声が聞こえて来た。
「鈴音っ?!起きたのかっ?!」
え・・・?
驚いて視線を動かすと、そこに私の足元に立って心配そうに見下ろしている亮平の姿があった。
「りょ・・亮平・・・?な、何で・・ここに・・・?」
そして視線をぐるりと動かして壁に掛けてある時計を見ると時間は10時をさしている。
「ああ。今日も日曜で仕事が休みだから・・・鈴音の見舞いに来たんだよ。」
亮平は枕元に椅子を持ってくると座った。
「み、見舞いにって・・・こんな朝早くから・・・。」
「土日は朝10時から面会できるから問題は無いぞ?」
「そ、そうじゃなくて・・・何も毎日面会に来る必要はないよ?亮平だって忙しいだろうし・・。」
そこまで言いかけて、気が付いた。
「ああ、そう言えば・・お姉ちゃんの・・面会には行ってきたの・・?」
「行ってきたよ・・・。」
私が尋ねると亮平はバツが悪そうに視線をそらせながら言う。
「そう・・・。それで・・どうだった?」
「何が・・?」
「何がって・・お姉ちゃんの様子だよ・・?」
すると亮平は戸惑ったように尋ねてきた。
「鈴音・・・お前、忍の事話して・・・平気なのか・・?」
「平気って・・何が?」
「・・ほんとは薄々気が付いているんじゃないのか・・?あの交通事故の時の出来事・・・。」
「・・・。」
私は黙って天井を見つめると言った。
「お姉ちゃん・・・多重人格者だったんでしょう・・?」
亮平の息を飲む気配を感じ・・その後。、重々しく口を開いた。
「ああ・・・そうなんだ・・。あの時・・鈴音を事故に巻き込んだ忍は・・・ずっと今まで表に出ていた・・鈴音を憎む忍だったんだ・・・。」
亮平は観念したかのように話し始めた―。
10
お気に入りに追加
793
あなたにおすすめの小説
偽りの結婚生活 ~私と彼の6年間の軌跡
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
偽りの結婚をした男性は決して好きになってはいけない私の初恋の人でした―
大手企業に中途採用された「私」。だけどその実態は仮の結婚相手になる為の口実・・。
これは、初恋の相手を好きになってはいけない「私」と「彼」・・そして2人を取り巻く複雑な人間関係が繰り広げられる6年間の結婚生活の軌跡の物語—。
<全3部作:3部作目で完結です:終章に入りました:本編完結、番外編完結しました>
※カクヨム・小説家になろうにも投稿しています
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。
たろ
恋愛
幼馴染のロード。
学校を卒業してロードは村から街へ。
街の警備隊の騎士になり、気がつけば人気者に。
ダリアは大好きなロードの近くにいたくて街に出て子爵家のメイドとして働き出した。
なかなか会うことはなくても同じ街にいるだけでも幸せだと思っていた。いつかは終わらせないといけない片思い。
ロードが恋人を作るまで、夢を見ていようと思っていたのに……何故か自分がロードの恋人になってしまった。
それも女避けのための(仮)の恋人に。
そしてとうとうロードには愛する女性が現れた。
ダリアは、静かに身を引く決意をして………
★ 短編から長編に変更させていただきます。
すみません。いつものように話が長くなってしまいました。
本編完結 彼を追うのをやめたら、何故か幸せです。
音爽(ネソウ)
恋愛
少女プリシラには大好きな人がいる、でも適当にあしらわれ相手にして貰えない。
幼過ぎた彼女は上位騎士を目指す彼に恋慕するが、彼は口もまともに利いてくれなかった。
やがて成長したプリシラは初恋と決別することにした。
すっかり諦めた彼女は見合いをすることに……
だが、美しい乙女になった彼女に魅入られた騎士クラレンスは今更に彼女に恋をした。
二人の心は交わることがあるのか。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる