本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
164 / 519

第11章 17 確認の電話

しおりを挟む
「ごちそうさまでした、太田先輩。ラーメン・・・すっごく美味しかったです。あんなに美味しいあんかけラーメン・・私初めてです。」

お店を出て、歩き始めてすぐに太田先輩に頭を下げた。

「そうかそうか、そんなにうまかったか?」

「はい、とっても。」

あの時の味を思い出し、つい笑みがこぼれる。

「よし、そんなに気に入ったならまた2人で一緒に来よう!」

太田先輩が言うと、突然脇から井上君が現れた。

「その時は・・・俺も!俺も当然行きますからねっ!」

「チッ!」

何と太田先輩が舌打ちした。

「し、舌打ち・・・今、舌打しましたねっ?!可愛い後輩に向かって!」

井上君が大声で喚く。

「うるさい、俺の可愛い後輩は加藤さんだけだ。」

太田先輩がうるさそうに言う。

「ひ、ひどい。差別だっ!男女差別だっ!」

その後も井上君と太田先輩は互いに何やら言い合いをしながら代理店へと向かって歩き、私はそんな2人の様子を背後から見ていた。ところで今何時だろう・・何気なくスマホに手を伸ばし・・・そして電話を掛けなければいけない事を思い出した。

「あの、すみせん、私・・電話を掛けたいところがあるので・・・お先に帰っていただいて貰えますか?」

「え?男か?」

何故か太田先輩が素早く反応する。

「先輩!プライバシーの侵害ですっ!それで・・加藤さん。本当のところ・・どうなの?」

「そうじゃないですよ。ちょっと予約の電話を入れるだけですから。それじゃ、失礼します。」

なるべく詳しい話は避けたかったから、頭を下げると私はすぐに立ちさり、路地裏に入るとスマホをタップした―。



19時―

「ふう・・今日も疲れたな・・。」

トボトボと家路に着いていた私は溜息を洩らした。病院の予約は3日後、もう代理店には3日後にお休みさせて頂く事にした。

「それにしても・・先生の話って何だろう・・・?お姉ちゃんの病状が良くないのかなぁ・・?」

1人事を呟きながら歩いていると、マンションが見えて来た―。


 マンションに到着し、郵便受けをチェックすると何通かのダイレクトメールと・・。

「え?手紙?」

真っ白な封筒が入っていた。

「?」

ひっくり返しても私の名前だけで宛名がない。

「何だろう・・?」

とりあえず手紙を持って部屋に戻ると、すぐにヒーターのリモコンを付けた。

ピッ

「う~寒い・・早く温まらないかな~・・・。」

まだ寒くてダウンコートが脱げないので、そのまま洗面所に手を洗いに行って、冷蔵庫を開けてタッパーに入った昨日の残りのおでんを出した。

その時・・・・。

トゥルルルルル・・・・
トゥルルルルル・・・・

スマホに着信が入って来た。多分亮平からだろうな・・そう思ってスマホをタップするとやはり相手は亮平からだった。

「もしもし?」

『鈴音、病院に電話入れたか?』

開口一番亮平が口にしたのはやっぱり病院に予約の電話についてだった。

「うん、いれたよ。」

『それで?いつになったんだ?』

「3日後に決まったよ。」

『そうか・・・3日後か・・。あ、ところで昨日の電話の件だけど・・・鈴音は行くのか?剣道部の同窓会?』

「うん、行くつもり。久しぶりに皆と会うの楽しみだし。」

『そっか・・分かった。それじゃあな。』

それだけ言うと電話はすぐに切れてしまった。全く・・・あっさりしてるな・・・。

「まあいいや。ご飯食べよう。」

タッパーの中身のおでんを片手鍋に開けて、火をつけた。

「そうだ、はんぺんがまだ残っていたから加えよう。」

四つ切にしたはんぺんを鍋に投入して、郵便ポストに入っていた宛先人不明の封筒を挟みで切ると、中には四つ折りに畳んである手紙が入っていた。

「誰からだろう・・・?」

中を広げて見た。

『チョコレートありがとう。とても美味しかった。   川口』


手紙にはそれだけが書かれていた―。





しおりを挟む
感想 208

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍2冊発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。

たろ
恋愛
幼馴染のロード。 学校を卒業してロードは村から街へ。 街の警備隊の騎士になり、気がつけば人気者に。 ダリアは大好きなロードの近くにいたくて街に出て子爵家のメイドとして働き出した。 なかなか会うことはなくても同じ街にいるだけでも幸せだと思っていた。いつかは終わらせないといけない片思い。 ロードが恋人を作るまで、夢を見ていようと思っていたのに……何故か自分がロードの恋人になってしまった。 それも女避けのための(仮)の恋人に。 そしてとうとうロードには愛する女性が現れた。 ダリアは、静かに身を引く決意をして……… ★ 短編から長編に変更させていただきます。 すみません。いつものように話が長くなってしまいました。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

【完結】365日後の花言葉

Ringo
恋愛
許せなかった。 幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。 あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。 “ごめんなさい” 言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの? ※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...