上 下
132 / 519

第9章 14 見つかった写真

しおりを挟む
「ただいま~。」

玄関のドアを開けた亮平が廊下に向かって大きめの声で言う。

「おかえりなさい、2人とも。さ、鈴音ちゃん。早く上がって。」

亮平の家に着いた私たちをニコニコしながら出迎えてくれたのはおばさんだった。

「こんばんは。おばさん。今夜は・・お世話になります。」

頭を下げた。

「いいのよ、そんな事気にしないで。もういつでもすき焼きの準備が出来ているのよ。早くいらっしゃい。亮平はまず鈴音ちゃんのお布団敷いてきて頂戴。」

おばさんは亮平に視線を移すと言った。

「分かったよ。」

亮平は素直に返事をすると2階へ上がっていく。

「あ、ねえ。私も手伝おうか?」

自分の寝る布団なのに亮平に敷いてもらうのは悪い気がしたので私は声を掛けた。

「別に構わないぞ。お前はリビングへ先に行ってろよ。」

亮平は振り向くと言った。

「でも・・。」

「いいのよ、鈴音ちゃん。亮平に任せておけば・・そんな事より早くいらっしゃい。」

「は、はい・・・。」

おばさんに背中を押される形で私はリビングへ行くと、そこにすでにダイニングテーブルには電気グリル鍋が用意され、おじさんが椅子に座っていた。

「あ、こんばんは。おじさん。すみません・・今晩お世話になります。」

頭を下げて挨拶するとおじさんは笑った。

「ハハハハ・・気にしなくていいよ。そんな事は。大体見たかい?母さんのあの嬉しそうな顔を。鈴音ちゃんの事をずっと待っていたんだよ。さ、座りなさい。」

おじさんにすすめられた椅子に座ると、おばさんがキッチンからお肉を持ってダイニングルームへやってきた。

「じゃーん!ほら、見て頂戴?鈴音ちゃん。このお肉!淡いピンク色にこのサシのきめ細かさ!まさに特上牛肉だと思わない?」

おばさんが得意げに見せてくる。

「はい。とてもおいしそうですね。」

するとおじさんが言った。

「おい母さん。そんな話はもういいから、すぐに料理にとりかかってくれないか?お腹が空いてたまらないんだから。」

おじさんがお腹をさすりながら言う。

「あら、そうね。それじゃすぐにやるわ。」

おばさんは熱された電気グリル鍋に牛脂を入れると、お肉を焼き始めた。

ジュウ~ッ・・・・

途端にお肉の焼ける美味しい音と匂いがし始めた。そこへ2階から亮平が降りてくると言った。

「お?もう肉焼き始めたのか?うまそうだな。」

するとおばさんが亮平に言った

「亮平、台所から野菜の入ったザルがあるから持ってきて頂戴。」

「ああ。」

キッチンに消えた亮平が次に戻ってきた時に野菜がたっぷり入った大きなざるを手に持っていた。

「フフ・・それじゃ皆ですき焼きパーティーをしましょう。」

おばさんはニッコリ笑いながら言った―。



****

「ふ~・・美味かったな・・。」

亮平が満足そうに箸を置いた。

「ああ、ビールによくあったよ。」

おじさんも満足そうに残りのビールを飲んでいる。

「おばさん、後片付け手伝いますよ。」

椅子から立ち上がり、食器を持とうとするとおばさんに止められた。

「あら、いいのよ。鈴音ちゃん。それより実家にもし取りに行くものが有ったら行ってらっしゃいよ。」

おばさんに言われ、私は大事な事を思い出した。そう言えば・・・戸籍謄本を確認する為にマイナンバーカードを取りに行くつもりだったんだっけ。

「はい、それではちょっと家に行ってきますね。」

私はおばさんに言うと、玄関を出た。


 家に行くと私は早速お仏壇の中の引き出しに入れた金庫の蓋を開けて、自分のマイナンバーカードを探すと、亮平に家に戻った。

「お邪魔します・・・。」

そしてリビングへ行くと、ソファに座り深刻そうな顔をしている亮平とおじさんおばさんの姿がある。

「あれ・・どうしたんですか・・?」

何だか様子がおかしいと感じた私は声を掛けた。

すると・・。

「す、鈴音ちゃん・・これは・・・これは一体何かしら・・?」

おばさんが震えながらテーブルの上に乗った写真を指さした。

「あ・・・・。」

そこに置かれた写真はお姉ちゃんの部屋で見つけた家族写真だった―。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。

ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。 即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。 そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。 国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。 ⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎ ※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

旦那様に離縁をつきつけたら

cyaru
恋愛
駆け落ち同然で結婚したシャロンとシリウス。 仲の良い夫婦でずっと一緒だと思っていた。 突然現れた子連れの女性、そして腕を組んで歩く2人。 我慢の限界を迎えたシャロンは神殿に離縁の申し込みをした。 ※色々と異世界の他に現実に近いモノや妄想の世界をぶっこんでいます。 ※設定はかなり他の方の作品とは異なる部分があります。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

天才と呼ばれた彼女は無理矢理入れられた後宮で、怠惰な生活を極めようとする

カエデネコ
恋愛
※カクヨムの方にも載せてあります。サブストーリーなども書いていますので、よかったら、お越しくださいm(_ _)m リアンは有名私塾に通い、天才と名高い少女であった。しかしある日突然、陛下の花嫁探しに白羽の矢が立ち、有無を言わさず後宮へ入れられてしまう。 王妃候補なんてなりたくない。やる気ゼロの彼女は後宮の部屋へ引きこもり、怠惰に暮らすためにその能力を使うことにした。

中将閣下は御下賜品となった令嬢を溺愛する

cyaru
恋愛
幼い頃から仲睦まじいと言われてきた侯爵令息クラウドと侯爵令嬢のセレティア。 18歳となりそろそろ婚約かと思われていたが、長引く隣国との戦争に少年兵士としてクラウドが徴兵されてしまった。 帰りを待ち続けるが、22歳になったある日クラウドの戦死が告げられた。 泣き崩れるセレティアだったが、ほどなくして戦争が終わる。敗戦したのである。 戦勝国の国王は好色王としても有名で王女を差し出せと通達があったが王女は逃げた所を衛兵に斬り殺されてしまう。仕方なく高位貴族の令嬢があてがわれる事になったが次々に純潔を婚約者や、急遽婚約者を立ててしまう他の貴族たち。選ばれてしまったセレティアは貢物として隣国へ送られた。 奴隷のような扱いを受けるのだろうと思っていたが、豪華な部屋に通され、好色王と言われた王には一途に愛する王妃がいた。 セレティアは武功を挙げた将兵に下賜されるために呼ばれたのだった。 そしてその将兵は‥‥。 ※作品の都合上、うわぁと思うような残酷なシーンがございます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※頑張って更新します。

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

処理中です...