上 下
131 / 519

第9章 13 伝えられない言葉

しおりを挟む
「今日ね・・・お姉ちゃんの担当の先生に会って話を聞いて来たの。」

「え?そうなのか?会えたのか?」

亮平が意外そうな顔で私を見た。

「うん、それで面談室で話をしてきたんだけど・・。お姉ちゃんの今の病状や今後の治療方針・・それと・・。」

ここから先は・・話すのが辛い・・。

「鈴音。どうした?何で黙るんだよ?」

亮平が身を乗り出して来た。

「あ、あのね・・・。先生に聞いたんだけど・・私とお姉ちゃん・・血が繋がっていなかったの・・。お姉ちゃん・・私が生まれてくる前にお父さんとお母さんにもらわれてきたんだって・・。」

「え・・っ?!な、何だよ・・・それ。つまり・・忍は養女だったって事なのか?!」

「う、うん・・・そうだったの・・。」

亮平はとても驚いている。でもそれは当然だろう。私だって・・すごく驚いているのだから。

「鈴音。その話・・本当なのか?間違いないのか?」

「お姉ちゃんが先生に話したみたいだから・・間違いないと思う。それに本当かどうかは・・戸籍謄本を取れば分るんだよね?」

私は今まで戸籍謄本は見たことが無かった。住民票なら見たことはあるけども・・。大体パスポートも作った事が無いから戸籍謄本の必要も無かったし。

「そうか・・。」

亮平は青ざめた顔をしてコンビニをじっと見つめると、私に視線を移した。

「鈴音、ナンバーカードは作ってあるのか?」

「うん。作ったよ?」

「今持ってるか?」

「ううん。無くさないように実家の金庫にいれてあるよ。」

「そうか、それならいつでも戸籍謄本は取れるな?」

そうだった。ナンバーカードがあればコンビニで取れるんだっけ。

「うん。そうだね・・・丁度実家に戻るし・・明日にでも戸籍謄本を取ることにするよ。」

それにしても・・・。私は亮平を見た。今の話でさぞかしショックを受けるのではないかと思ったけど・・意外なほど亮平は落ち着いていた。

「ねえ・・・亮平は・・ショックじゃないの・・?」

「うん?まぁ・・・確かにショックではあるけど・・でもそんなのは大した問題じゃないしな。」

「え・・?問題じゃないの・・?」

「ああ、例え忍が・・養女だろうと何だろうと俺には関係無い。どこの誰だろうと俺にとっては唯一無二の・・大切な存在だからな。」

そして亮平は笑顔で答えた。

お姉ちゃんは亮平にとって・・・唯一無二の・・大切な存在・・・。それじゃ私は?亮平にとっての私は一体どんな存在なの?だけどそんな事私は亮平に聞けない。聞けるはずは・・無かった。

「・・・。」

思わず黙ってしまうと亮平が声を掛けてきた。

「どうした?鈴音。何かあまり元気ない様に見えるけど?」

「う、ううん。別に・・そんな事無いよ。」

「そうか・・?ならいいけど・・。よし、そろそろ行くか?あまり遅くなると母さんから電話がかかってくるかもしれないからな。」

「うん・・そうだね。」

「よし、行くか。」

亮平はエンジンをかけると、再び車を走らせた。

「・・・。」

私は窓の外の景色を眺めながら思った。結局一番肝心な話をする事が出来なかった。お姉ちゃんがどれだけ私を憎んでいるかと言う事・・そして家族写真の私が映っている部分だけ・・・カッターナイフで滅茶苦茶に切りつけられていた事を―。

しおりを挟む
感想 208

あなたにおすすめの小説

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

偽りの結婚生活 ~私と彼の6年間の軌跡

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
偽りの結婚をした男性は決して好きになってはいけない私の初恋の人でした― 大手企業に中途採用された「私」。だけどその実態は仮の結婚相手になる為の口実・・。 これは、初恋の相手を好きになってはいけない「私」と「彼」・・そして2人を取り巻く複雑な人間関係が繰り広げられる6年間の結婚生活の軌跡の物語—。 <全3部作:3部作目で完結です:終章に入りました:本編完結、番外編完結しました> ※カクヨム・小説家になろうにも投稿しています

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

政略結婚だけど溺愛されてます

紗夏
恋愛
隣国との同盟の証として、その国の王太子の元に嫁ぐことになったソフィア。 結婚して1年経っても未だ形ばかりの妻だ。 ソフィアは彼を愛しているのに…。 夫のセオドアはソフィアを大事にはしても、愛してはくれない。 だがこの結婚にはソフィアも知らない事情があって…?! 不器用夫婦のすれ違いストーリーです。

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...