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第7章 5 私と亮平の過去 ②

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 私が亮平の事を頼りになるお兄ちゃんとしてではなく、好きな人とはっきり自覚するようになったのは小学校に上がってからだった。
小学校に上がっても私は亮平からなかなか離れる事が出来なかった。その為か・・私と亮平は小学校で度々からかわれるようになっていた。


 そんなある日・・・亮平と2人で家に帰る為に校庭を歩いていた時の事―
あれは私がまだ小学1年生の時だったけど、あまりにも強烈な思い出だったからなのか、今でもよく覚えている。

「やーい、また亮平と鈴音が一緒だぞー。」

「しょーがないよ。あいつら、あっちっちのふーふだからな。」

「それとも亮平は女なんじゃないか?いっつも鈴音と一緒だからな~。」

当時、私と亮平をからかってばかりの3人組の男の子達がいた。その子達はいつも私と亮平が一緒にいると、かならずと言っていいほど、ちょっかいをかけて来ていた。

「う・・・りょ、亮平・・あの子達、またあんな事言ってるよ・・。」

ランドセルを背負って、涙目で亮平のシャツを握りしめる私に亮平は言った。

「鈴音、気にするなって。あいつらの事。勝手に言わせておけばいいさ。ほら、帰ろう。」

亮平が右手を差し出してくれたので、手を繋いだ時だった。

「お前ら、イチャイチャするなよっ!」

1人の少年が私の事を突き飛ばして来た。思いランドセルを背負っていた私はそのまま転んでしまい、運悪く近くに生えていた木におでこを打ち付け、とがっていた樹皮でおでこが切れて出血をしてしまった。

「うう・・い、痛い・・。」

おでこからダラダラ血を流す私を見て怯える子供達、そしてそれを見た亮平はいきなり唸ると3人の男の子たちに掴みかかっていったのだ。

「お前ら・・・よくも鈴音にっ!」

亮平は・・掴みかかりながら叫んでいた。

「謝れっ!鈴音に謝れよっ!」

それはものすごい勢いだった。結局誰かが教室から先生たちを連れて来るまで騒ぎは続いた。

先生たちは木の下で血を流しながら倒れている私を見つけて驚き・・さらに3人に掴みかかる亮平を止めるのに必死になっていた。


「う・・鈴音・・ごめん・・俺が・・ちゃんとしてれば鈴音に怪我させる事無かったのに・・。」

保健室で傷の手当てを受ける私を亮平は泣きながら見ていた。そして私はその時、亮平を見て思った。何て綺麗な涙なんだろう・・・・。そして胸がドキドキするのを感じた。それは今まで感じたことの無い感情だった。恐らく・・私はあの時に恋に堕ちていたのだろう。

 
 私が怪我を負ってから、当時6年生だったお姉ちゃんが私達と一緒に登校するようになった。すでに6年生だったお姉ちゃんは学校でも有名な美少女になっていて、クラスでも人気者だった。
亮平にとっては遠い存在だったお姉ちゃんが、一緒に小学校へ登校するようになって、お姉ちゃんと亮平の距離は自然と近くなっていった。
学校の生徒たちがお姉ちゃんに憧れる様に・・亮平もお姉ちゃんに憧れるようになり・・・・亮平は私に冷たくなっていった。手を繋いでくれることも無くなったし、一緒に学校から帰ってくれる事も無くなった。
きっと・・・お姉ちゃんに誤解されたくないのだろうと言う事に気が付いたのは・・私が中学生になる頃だった。
中学生に上がった年・・・亮平がお姉ちゃんに告白しているのを目撃してしまったのだ。

 あの日の事は・・今でも忘れる事が出来ない・・・。

私はそっと自分のおでこに微かに残る傷跡に触れ・・・ため息をついた―。
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