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第6章 5 とっさについた嘘
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「貴女・・・さっき隆司と一緒にいた女性よね。そう言えば・・貴女の名前をまだ聞いていなかったわ。何て名前なの?」
麻由里さんは値踏みするような目で私の事を上から下まで見ると尋ねてきた。
「は、はい。私は加藤鈴音と言います。」
きつい目で睨まれて、つい委縮してしまう自分がいた。
「ふ~ん・・・加藤鈴音ねえ・・・。貴女・・隆司と一緒に住んでるんでしょう?私がかつて住んでいた部屋に・・・。」
やっぱり・・隆司さんはこの女性と同棲していたんだ・・・。
「は、はい・・。」
麻由里さんが玄関の入り口前で仁王立ちになっているので私は部屋の中に入ることが出来なかった。隆司さんは・・・どこにいるんだろう?麻由里さんの脇から部屋の中を覗こうとした時・・・。
「ちょっと、貴女何してるの?ひょっとして隆司を探してるの?」
麻由里さんが険しい顔で私を見る。
「は、はい・・どちらへ行ったのかなと思って・・・。」
すると麻由里さんが言った。
「隆司なら近くのコンビニへ行ったわ。それにしても・・・。」
麻由里さんは私を睨みつけながら言った。
「隆司も随分趣味が変わったのねえ・・・。まさかこんな人を・・。しかも人が海外赴任している間に・・・。酷いわ。」
いけない、これじゃ隆司さんが悪者に思われてしまう。
「い、いえ!私と隆司さんは・・・し、親戚なんですっ!アパートを解約してしまって、住むところが無くて困っていたところを隆司さんが空き部屋があるからおいでと言ってくれたんです。それでついお言葉に甘えてしまって・・・。」
とっさに嘘をついてしまった。
「ふ~ん・・・そうなの?だけど・・・この際だから言わせて貰うけど、ここは私と隆司のマンションなのよ。私は昨日仕事で帰国してきたばかりで今はホテルにいるのよ。だけど・・近いうちにここへ戻ってくるから、貴女早々に出て行って貰える?」
その言葉に衝撃を受けたけど、どうせいずれはこのマンションを出るつもりだったのだから・・。
「はい、分かりました。なるべく早めに住むところを見つけて出て行きます。あの、私・・・用事を思い出したので・・い、行きますっ!すみませんでしたっ!」
頭を下げると、私はそのまま逃げるようにその場を後にした。
マンションを出て、タワーマンションを見上げた。
やっぱり・・・私には分不相応な場所だったんだ。私のせいで隆司さんと麻由里さんの関係が壊れてしまったらどうしよう。そう考えると申し訳ない気持ちで一杯だった。
「不動産屋さん・・・行ってみようかな・・・。」
ポツリと呟くと不動産会社に向かった―。
不動産屋さんで物件を探してもらっている時に突然スマホが鳴った。
「あ、電話に出ていいですか?」
PCモニターを見ていた私はお店の人に声を掛けた。
「ええ、どうぞ出てください。」
担当の女性社員の人が笑顔で答えてくれた。早速スマホを取り出すとそこに表示されているのは隆司さんだった。
「え?隆司さん?」
どうしよう・・・何だか嫌な予感がするけども、隆司さんの電話を無視することが出来ない。恐る恐るスマホをタップすると耳に押し当てた。
「もしもし・・・。」
『鈴音っ!今どこにいるんだっ?!』
受話器からやけに切羽詰まった隆司さんの声が聞こえてきた。
「どこって・・・・不動産会社・・・ですけど・・?」
『不動産・・・?どうしてそんなところに来てるんだ?』
隆司さんの声が何だか震えている。
「えっと・・・それは・・。」
どうしよう・・麻由里さんに出て行けと言われたからなんて、到底言えない・・。
すると隆司さんが言った。
『麻由里か?麻由里に何か言われたのか?」
「あ・・・。」
思わず言いよどむと電話越しから深いため息が聞こえてきた。
『鈴音・・・すぐにマンションへ戻って来てくれ・・・。話があるから・・。」
「はい、分かりました。」
『うん・・・待ってるから。』
そして電話が切れた。私は電話を切ると言った。
「申し訳ございません、用事が出来てしまったので今日の処は帰らせて下さい。」
「はい。分かりました。では何か良い物件情報がありましたらメールを送らせていただきますね。」
「はい。よろしくお願いします。」
私は頭を下げると店を後にした。
「ふう・・・何だか隆司さんの顔見るの・・気が重いな・・。
溜息をつくと、私はマンションへと向かった―。
麻由里さんは値踏みするような目で私の事を上から下まで見ると尋ねてきた。
「は、はい。私は加藤鈴音と言います。」
きつい目で睨まれて、つい委縮してしまう自分がいた。
「ふ~ん・・・加藤鈴音ねえ・・・。貴女・・隆司と一緒に住んでるんでしょう?私がかつて住んでいた部屋に・・・。」
やっぱり・・隆司さんはこの女性と同棲していたんだ・・・。
「は、はい・・。」
麻由里さんが玄関の入り口前で仁王立ちになっているので私は部屋の中に入ることが出来なかった。隆司さんは・・・どこにいるんだろう?麻由里さんの脇から部屋の中を覗こうとした時・・・。
「ちょっと、貴女何してるの?ひょっとして隆司を探してるの?」
麻由里さんが険しい顔で私を見る。
「は、はい・・どちらへ行ったのかなと思って・・・。」
すると麻由里さんが言った。
「隆司なら近くのコンビニへ行ったわ。それにしても・・・。」
麻由里さんは私を睨みつけながら言った。
「隆司も随分趣味が変わったのねえ・・・。まさかこんな人を・・。しかも人が海外赴任している間に・・・。酷いわ。」
いけない、これじゃ隆司さんが悪者に思われてしまう。
「い、いえ!私と隆司さんは・・・し、親戚なんですっ!アパートを解約してしまって、住むところが無くて困っていたところを隆司さんが空き部屋があるからおいでと言ってくれたんです。それでついお言葉に甘えてしまって・・・。」
とっさに嘘をついてしまった。
「ふ~ん・・・そうなの?だけど・・・この際だから言わせて貰うけど、ここは私と隆司のマンションなのよ。私は昨日仕事で帰国してきたばかりで今はホテルにいるのよ。だけど・・近いうちにここへ戻ってくるから、貴女早々に出て行って貰える?」
その言葉に衝撃を受けたけど、どうせいずれはこのマンションを出るつもりだったのだから・・。
「はい、分かりました。なるべく早めに住むところを見つけて出て行きます。あの、私・・・用事を思い出したので・・い、行きますっ!すみませんでしたっ!」
頭を下げると、私はそのまま逃げるようにその場を後にした。
マンションを出て、タワーマンションを見上げた。
やっぱり・・・私には分不相応な場所だったんだ。私のせいで隆司さんと麻由里さんの関係が壊れてしまったらどうしよう。そう考えると申し訳ない気持ちで一杯だった。
「不動産屋さん・・・行ってみようかな・・・。」
ポツリと呟くと不動産会社に向かった―。
不動産屋さんで物件を探してもらっている時に突然スマホが鳴った。
「あ、電話に出ていいですか?」
PCモニターを見ていた私はお店の人に声を掛けた。
「ええ、どうぞ出てください。」
担当の女性社員の人が笑顔で答えてくれた。早速スマホを取り出すとそこに表示されているのは隆司さんだった。
「え?隆司さん?」
どうしよう・・・何だか嫌な予感がするけども、隆司さんの電話を無視することが出来ない。恐る恐るスマホをタップすると耳に押し当てた。
「もしもし・・・。」
『鈴音っ!今どこにいるんだっ?!』
受話器からやけに切羽詰まった隆司さんの声が聞こえてきた。
「どこって・・・・不動産会社・・・ですけど・・?」
『不動産・・・?どうしてそんなところに来てるんだ?』
隆司さんの声が何だか震えている。
「えっと・・・それは・・。」
どうしよう・・麻由里さんに出て行けと言われたからなんて、到底言えない・・。
すると隆司さんが言った。
『麻由里か?麻由里に何か言われたのか?」
「あ・・・。」
思わず言いよどむと電話越しから深いため息が聞こえてきた。
『鈴音・・・すぐにマンションへ戻って来てくれ・・・。話があるから・・。」
「はい、分かりました。」
『うん・・・待ってるから。』
そして電話が切れた。私は電話を切ると言った。
「申し訳ございません、用事が出来てしまったので今日の処は帰らせて下さい。」
「はい。分かりました。では何か良い物件情報がありましたらメールを送らせていただきますね。」
「はい。よろしくお願いします。」
私は頭を下げると店を後にした。
「ふう・・・何だか隆司さんの顔見るの・・気が重いな・・。
溜息をつくと、私はマンションへと向かった―。
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