69 / 519
第6章 3 傷つく心とさらなる異変
しおりを挟む
「もしもし・・・うん。俺だよ。・・え?今・・・うん。ちょっと知り合いと会ってるんだ。・・・・大丈夫だって。暗くなる前には必ず帰るから。」
亮平がお姉ちゃんと電話で会話しているところを見たくなくて、俯き加減にキャラメルマキアートを飲んでいたのだけども・・・。
「・・うん。俺も・・好きだよ。忍。」
亮平の言葉が耳に飛び込んできた。え・・?今・・忍って言ったの?亮平。それにお姉ちゃんの事・・こんなお店の中で好きだよって言うなんて・・。私は思わず顔をあげて亮平を見た。すると何故か亮平も私の事を見ていた。
「それじゃあ、また後で。」
亮平はそれだけ言うと、電話を切って溜息をつくと私を見た。
「・・・何だよ鈴音。その目は・・・。」
「あ・・・う、ううん。ちょっとだけ・・驚いちゃって・・。」
言いながらドリンクを飲む。
「驚く?何に?」
亮平は座っているソファの背もたれに両腕を乗せると尋ねてきた。
「う、うん・・・お姉ちゃんの事・・いつの間にか呼び捨てにしていたから・・・。でも考えてみれば当然だよね?だって2人は・・恋人同士・・なんだもの・・ね。」
段々語尾が小さくなってしまう。
「・・・・。」
私のそんな様子を亮平は黙って見つめている。
「な、何?私・・今、何か変な事言った?」
亮平の視線にいたたまれなくなった私は自分から視線をそらした。
「鈴音・・・。その事なんだけど・・・あ、でもこれを先に報告した方がいいか。」
「何?報告って?」
「ああ。いいか、落ち着いて聞けよ?実は忍の婚約者をひき逃げした犯人が捕まったんだ。」
「えっ?!い、いつ?!」
あまりにも突然の話で驚いた。
「今から3か月ほど前だ。飲酒運転による接触事故で捕まった男がいたんだよ。そして警察で事情徴収している内に不審な点が見つかって・・・よくよく話を聞いてみると・・・その男・・ひき逃げで人を殺していた。その人物が・・進さんだった。」
「!」
亮平の話はまだ続く。
「その電話がかかってきた時、たまたま俺も一緒に家にいたんだ。忍・・・その電話を受けた直後・・気を失ってしまって・・次に目が覚めた時には・・おかしくなっていた。」
亮平は歯を食いしばるように言う。
「え?ちょっと待って。おかしくなった・・って一体どういう意味なの?それに・・もともとお姉ちゃんは私が家を出た時からまともじゃなくなっていたんだよ?!」
「ああ・・・そうだったな。鈴音・・・あの時は本当にすまなかった。忍にきついこと言われて・・出て行ったんだろう?鈴音が出て行った後・・・俺がもう一度鈴音の事聞いたんだ。そしたら、言ったんだよ。鈴音に俺が取られるんじゃないかと思ってきつい事を言ったら・・・出て行かれてしまったって。全く・・そんな事絶対にあるはずないのに・・・。そう思わないか?鈴音。」
亮平は苦笑しながら言う。
「う、うん・・そ、そうだよ。そんな事・・絶対にあるはずないのに・・ね・・。」
胸が痛くて苦しい。心が引きちぎられそうだ。お姉ちゃんが私に亮平が取られる心配をしても亮平はそれを絶対にあるはずないと言い切ってしまえるんだ。それにお姉ちゃん・・・まだ嘘をついている。きつい事を言ったら出て行かれた?違うよね?出て行って欲しいから私を追い出したんでしょう?
「おい、鈴音。どうした?顔色が真っ青だぞ?やっぱり・・忍が心配なんだな?うん。分るよ。俺とお前にとって・・忍は大切な人だからな。勿論忍だって俺たちの事大切だって思ってくれてるけどな。なのに・・あんなことになって・・・。」
酷い耳鳴りがする。亮平の言葉が半分頭に入ってこない。少なくともお姉ちゃんにとって亮平は大切な人だろうけど・・私の事はもうそんなふうに思ってくれていないよ。きっと・・邪魔だって思ってるに違いない・・。
思わず俯くと亮平が言った。
「鈴音、俺の話聞いてるのか?とにかく今忍が大変なんだよ。頼む!忍の為に力を貸してくれっ!俺1人だけじゃ無理なんだよっ!」
駄目だ、これ以上亮平の話を聞いていられない。心の傷がようやく少しずつ治りかけていたのに・・またヒビが入りそうだ。その証拠に私の胸の中はまるで氷の塊を飲み込んだかのように冷たく冷え切っている。
ガタン
私は席を立った。
「おい?鈴音。どうしたんだ?急に立ち上がって。」
「帰る・・。」
「帰るって?何言ってるんだよっ!大事な話はこれからだぞ?!」
「もう私には関係ないっ!お姉ちゃんの事は亮平が1人で解決してよっ!」
私は亮平の言葉を無視して大股でカフェを出た。すると追いかけてきた亮平に腕を掴まれてしまった。
「おい、逃げるのかよ?」
「逃げる・・?そんな事より・・い、痛いから・・この手を離してよ。」
しかし亮平は私の言葉を無視して、掴む腕を離してくれない。
「ああ、そうだ。お前はたった1人きりの身内を見捨てて逃げようとしてるんだ。」
亮平の腕を握る手の力が強まり、思わず痛みで顔を歪めながらも言った。
「もう、どう取られても構わないっ!私に構わないでっ!」
「そんな事言わずに・・頼む!助けてくれ・・・。忍・・・俺の事を進だと思ってるんだ・・・。」
亮平の顔は今にも泣きそうに歪んでいた―。
亮平がお姉ちゃんと電話で会話しているところを見たくなくて、俯き加減にキャラメルマキアートを飲んでいたのだけども・・・。
「・・うん。俺も・・好きだよ。忍。」
亮平の言葉が耳に飛び込んできた。え・・?今・・忍って言ったの?亮平。それにお姉ちゃんの事・・こんなお店の中で好きだよって言うなんて・・。私は思わず顔をあげて亮平を見た。すると何故か亮平も私の事を見ていた。
「それじゃあ、また後で。」
亮平はそれだけ言うと、電話を切って溜息をつくと私を見た。
「・・・何だよ鈴音。その目は・・・。」
「あ・・・う、ううん。ちょっとだけ・・驚いちゃって・・。」
言いながらドリンクを飲む。
「驚く?何に?」
亮平は座っているソファの背もたれに両腕を乗せると尋ねてきた。
「う、うん・・・お姉ちゃんの事・・いつの間にか呼び捨てにしていたから・・・。でも考えてみれば当然だよね?だって2人は・・恋人同士・・なんだもの・・ね。」
段々語尾が小さくなってしまう。
「・・・・。」
私のそんな様子を亮平は黙って見つめている。
「な、何?私・・今、何か変な事言った?」
亮平の視線にいたたまれなくなった私は自分から視線をそらした。
「鈴音・・・。その事なんだけど・・・あ、でもこれを先に報告した方がいいか。」
「何?報告って?」
「ああ。いいか、落ち着いて聞けよ?実は忍の婚約者をひき逃げした犯人が捕まったんだ。」
「えっ?!い、いつ?!」
あまりにも突然の話で驚いた。
「今から3か月ほど前だ。飲酒運転による接触事故で捕まった男がいたんだよ。そして警察で事情徴収している内に不審な点が見つかって・・・よくよく話を聞いてみると・・・その男・・ひき逃げで人を殺していた。その人物が・・進さんだった。」
「!」
亮平の話はまだ続く。
「その電話がかかってきた時、たまたま俺も一緒に家にいたんだ。忍・・・その電話を受けた直後・・気を失ってしまって・・次に目が覚めた時には・・おかしくなっていた。」
亮平は歯を食いしばるように言う。
「え?ちょっと待って。おかしくなった・・って一体どういう意味なの?それに・・もともとお姉ちゃんは私が家を出た時からまともじゃなくなっていたんだよ?!」
「ああ・・・そうだったな。鈴音・・・あの時は本当にすまなかった。忍にきついこと言われて・・出て行ったんだろう?鈴音が出て行った後・・・俺がもう一度鈴音の事聞いたんだ。そしたら、言ったんだよ。鈴音に俺が取られるんじゃないかと思ってきつい事を言ったら・・・出て行かれてしまったって。全く・・そんな事絶対にあるはずないのに・・・。そう思わないか?鈴音。」
亮平は苦笑しながら言う。
「う、うん・・そ、そうだよ。そんな事・・絶対にあるはずないのに・・ね・・。」
胸が痛くて苦しい。心が引きちぎられそうだ。お姉ちゃんが私に亮平が取られる心配をしても亮平はそれを絶対にあるはずないと言い切ってしまえるんだ。それにお姉ちゃん・・・まだ嘘をついている。きつい事を言ったら出て行かれた?違うよね?出て行って欲しいから私を追い出したんでしょう?
「おい、鈴音。どうした?顔色が真っ青だぞ?やっぱり・・忍が心配なんだな?うん。分るよ。俺とお前にとって・・忍は大切な人だからな。勿論忍だって俺たちの事大切だって思ってくれてるけどな。なのに・・あんなことになって・・・。」
酷い耳鳴りがする。亮平の言葉が半分頭に入ってこない。少なくともお姉ちゃんにとって亮平は大切な人だろうけど・・私の事はもうそんなふうに思ってくれていないよ。きっと・・邪魔だって思ってるに違いない・・。
思わず俯くと亮平が言った。
「鈴音、俺の話聞いてるのか?とにかく今忍が大変なんだよ。頼む!忍の為に力を貸してくれっ!俺1人だけじゃ無理なんだよっ!」
駄目だ、これ以上亮平の話を聞いていられない。心の傷がようやく少しずつ治りかけていたのに・・またヒビが入りそうだ。その証拠に私の胸の中はまるで氷の塊を飲み込んだかのように冷たく冷え切っている。
ガタン
私は席を立った。
「おい?鈴音。どうしたんだ?急に立ち上がって。」
「帰る・・。」
「帰るって?何言ってるんだよっ!大事な話はこれからだぞ?!」
「もう私には関係ないっ!お姉ちゃんの事は亮平が1人で解決してよっ!」
私は亮平の言葉を無視して大股でカフェを出た。すると追いかけてきた亮平に腕を掴まれてしまった。
「おい、逃げるのかよ?」
「逃げる・・?そんな事より・・い、痛いから・・この手を離してよ。」
しかし亮平は私の言葉を無視して、掴む腕を離してくれない。
「ああ、そうだ。お前はたった1人きりの身内を見捨てて逃げようとしてるんだ。」
亮平の腕を握る手の力が強まり、思わず痛みで顔を歪めながらも言った。
「もう、どう取られても構わないっ!私に構わないでっ!」
「そんな事言わずに・・頼む!助けてくれ・・・。忍・・・俺の事を進だと思ってるんだ・・・。」
亮平の顔は今にも泣きそうに歪んでいた―。
1
お気に入りに追加
793
あなたにおすすめの小説
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
偽りの結婚生活 ~私と彼の6年間の軌跡
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
偽りの結婚をした男性は決して好きになってはいけない私の初恋の人でした―
大手企業に中途採用された「私」。だけどその実態は仮の結婚相手になる為の口実・・。
これは、初恋の相手を好きになってはいけない「私」と「彼」・・そして2人を取り巻く複雑な人間関係が繰り広げられる6年間の結婚生活の軌跡の物語—。
<全3部作:3部作目で完結です:終章に入りました:本編完結、番外編完結しました>
※カクヨム・小説家になろうにも投稿しています
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
政略結婚だけど溺愛されてます
紗夏
恋愛
隣国との同盟の証として、その国の王太子の元に嫁ぐことになったソフィア。
結婚して1年経っても未だ形ばかりの妻だ。
ソフィアは彼を愛しているのに…。
夫のセオドアはソフィアを大事にはしても、愛してはくれない。
だがこの結婚にはソフィアも知らない事情があって…?!
不器用夫婦のすれ違いストーリーです。
隣人はクールな同期でした。
氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。
30歳を前にして
未婚で恋人もいないけれど。
マンションの隣に住む同期の男と
酒を酌み交わす日々。
心許すアイツとは
”同期以上、恋人未満―――”
1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され
恋敵の幼馴染には刃を向けられる。
広報部所属
●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳)
編集部所属 副編集長
●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳)
本当に好きな人は…誰?
己の気持ちに向き合う最後の恋。
“ただの恋愛物語”ってだけじゃない
命と、人との
向き合うという事。
現実に、なさそうな
だけどちょっとあり得るかもしれない
複雑に絡み合う人間模様を描いた
等身大のラブストーリー。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。
たろ
恋愛
幼馴染のロード。
学校を卒業してロードは村から街へ。
街の警備隊の騎士になり、気がつけば人気者に。
ダリアは大好きなロードの近くにいたくて街に出て子爵家のメイドとして働き出した。
なかなか会うことはなくても同じ街にいるだけでも幸せだと思っていた。いつかは終わらせないといけない片思い。
ロードが恋人を作るまで、夢を見ていようと思っていたのに……何故か自分がロードの恋人になってしまった。
それも女避けのための(仮)の恋人に。
そしてとうとうロードには愛する女性が現れた。
ダリアは、静かに身を引く決意をして………
★ 短編から長編に変更させていただきます。
すみません。いつものように話が長くなってしまいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる