60 / 519
第5章 5 今日から居候
しおりを挟む
「ほら、ここが俺の部屋だよ。」
ガチャリとドアを開けて隆司さんが先に中へ入る。
「さあ、鈴音も入って来いよ。」
隆司さんはニコニコしながら言うけれども、玄関から見ただけで部屋の内装が豪華な事に驚き、私は固まってしまった。ここを通ってきただけでもまるでホテルのような作りに驚いているのに、部屋の中はもっと凄いことになっていた。木目の床はツルツルに磨き上げられ、玄関の靴箱は見上げるほどに背が高い。そして玄関からまっすぐに伸びた廊下の先には部屋が見え、大きな窓からは明るい日差しが降り注いでいる。
「お、お邪魔・・します・・。」
遠慮がちに上がろうとすると隆司さんが私を見下ろし、言った。
「ストップ、鈴音。今・・何て言った?」
「え・・?お邪魔しますって言いましたけど・・・・?」
「お邪魔しますじゃないだろう?」
「え・・?それじゃ何て・・・?」
「俺たちは・・・・今日からここで一緒に暮らすんだから・・・ここはお邪魔しますじゃなくて、ただいまって言うんだろう?」
「ええ?!た、ただいまですかっ?!」
隆司さんのあまりの発言に驚いてしまった。
「あたりまえだろう?今日からここは・・・俺と、鈴音の家なんだから。」
大真面目に言う隆司さん。でも・・これではいけない。
「いえ・・・私は居候させてもらうだけですから・・。」
目を伏せて言うと、隆司さんは溜息をついた。
「分かったよ・・・。なら鈴音は俺の居候だ。だけど、お邪魔しますはやめておけ。毎回お邪魔しますと言って入ってくるつもりか?」
「あ・・。」
言われてみれば、それはそれで違和感があるかもしれない。
「わ、分かりました。では・・ただいまと言わせてもらいます・・。」
「よし、それじゃただいまって言ってみろよ。」
隆司さんに言われて覚悟を決めた。
「た・・ただいまっ!」
緊張のあまり声が上ずってしまい、変な『ただいま』になってしまったけど、隆司さんは嬉しそうに笑みを浮かべ、私の頭をなでると言った。
「お帰り、鈴音。」
お帰り―
その言葉は私の心に優しく染み通っていった。こんな風に誰かに『お帰り』って言ってもらうの久しぶりだな・・・・。
靴を脱いで玄関から室内へ入ると、さっそく隆司さんに部屋の案内やキッチン、お風呂の使い方を教わった。キッチンは今まで一度も使ったことも無いIHだったし、ディスポーザーも初体験だ。バスルームのテレビや、ジェットバスにミストサウナ。そのどれもがすごすぎて、私の頭はちっともおいつけない。広さ約30畳のLDKは壁の約半分は掃き出し窓になっていて、そこからは広々としたバルコニーに出られる。家具やテレビも全てピカピカでまるでモデルルームのようだった。
「す、すごすぎる・・・。」
もうここは人が住む部屋じゃない。まるでショールームだ。茫然と立ち尽くしていると、背後から声をかけられた。
「鈴音、こっちへおいで。」
「はい。」
隆司さんに呼ばれて行った部屋は8畳間の空き部屋でウオークインクローゼットが完備されていた。この部屋もとてもゴージャスだった。
「今日からこの部屋を使うといい。」
「ほ・・本当にいいんですか?こんなすごい部屋を私が使っても・・。」
隆司さんを見上げながら尋ねる。
「当り前だろう?」
「いやいや・・・居候の意私には分不相応ですよ。私なんかの為に部屋を一つ渡すなんて・・・、リビングで寝かせてもらうだけで充分ですから。」
すると何故か隆司さんの目が険しくなる。
「隆司・・さん?」
「鈴音・・・。私なんかの為・・なんて自分を卑下した言い方をするな。俺にとっては・・・唯一無二の存在なんだから。」
「隆司さん・・・。」
思わず見つめると、隆司さんは顔を赤らめて言った。
「鈴音。お腹空いたな。外へ何か食べに行こう。」
そして隆司さんは足早に部屋を出て行った―。
ガチャリとドアを開けて隆司さんが先に中へ入る。
「さあ、鈴音も入って来いよ。」
隆司さんはニコニコしながら言うけれども、玄関から見ただけで部屋の内装が豪華な事に驚き、私は固まってしまった。ここを通ってきただけでもまるでホテルのような作りに驚いているのに、部屋の中はもっと凄いことになっていた。木目の床はツルツルに磨き上げられ、玄関の靴箱は見上げるほどに背が高い。そして玄関からまっすぐに伸びた廊下の先には部屋が見え、大きな窓からは明るい日差しが降り注いでいる。
「お、お邪魔・・します・・。」
遠慮がちに上がろうとすると隆司さんが私を見下ろし、言った。
「ストップ、鈴音。今・・何て言った?」
「え・・?お邪魔しますって言いましたけど・・・・?」
「お邪魔しますじゃないだろう?」
「え・・?それじゃ何て・・・?」
「俺たちは・・・・今日からここで一緒に暮らすんだから・・・ここはお邪魔しますじゃなくて、ただいまって言うんだろう?」
「ええ?!た、ただいまですかっ?!」
隆司さんのあまりの発言に驚いてしまった。
「あたりまえだろう?今日からここは・・・俺と、鈴音の家なんだから。」
大真面目に言う隆司さん。でも・・これではいけない。
「いえ・・・私は居候させてもらうだけですから・・。」
目を伏せて言うと、隆司さんは溜息をついた。
「分かったよ・・・。なら鈴音は俺の居候だ。だけど、お邪魔しますはやめておけ。毎回お邪魔しますと言って入ってくるつもりか?」
「あ・・。」
言われてみれば、それはそれで違和感があるかもしれない。
「わ、分かりました。では・・ただいまと言わせてもらいます・・。」
「よし、それじゃただいまって言ってみろよ。」
隆司さんに言われて覚悟を決めた。
「た・・ただいまっ!」
緊張のあまり声が上ずってしまい、変な『ただいま』になってしまったけど、隆司さんは嬉しそうに笑みを浮かべ、私の頭をなでると言った。
「お帰り、鈴音。」
お帰り―
その言葉は私の心に優しく染み通っていった。こんな風に誰かに『お帰り』って言ってもらうの久しぶりだな・・・・。
靴を脱いで玄関から室内へ入ると、さっそく隆司さんに部屋の案内やキッチン、お風呂の使い方を教わった。キッチンは今まで一度も使ったことも無いIHだったし、ディスポーザーも初体験だ。バスルームのテレビや、ジェットバスにミストサウナ。そのどれもがすごすぎて、私の頭はちっともおいつけない。広さ約30畳のLDKは壁の約半分は掃き出し窓になっていて、そこからは広々としたバルコニーに出られる。家具やテレビも全てピカピカでまるでモデルルームのようだった。
「す、すごすぎる・・・。」
もうここは人が住む部屋じゃない。まるでショールームだ。茫然と立ち尽くしていると、背後から声をかけられた。
「鈴音、こっちへおいで。」
「はい。」
隆司さんに呼ばれて行った部屋は8畳間の空き部屋でウオークインクローゼットが完備されていた。この部屋もとてもゴージャスだった。
「今日からこの部屋を使うといい。」
「ほ・・本当にいいんですか?こんなすごい部屋を私が使っても・・。」
隆司さんを見上げながら尋ねる。
「当り前だろう?」
「いやいや・・・居候の意私には分不相応ですよ。私なんかの為に部屋を一つ渡すなんて・・・、リビングで寝かせてもらうだけで充分ですから。」
すると何故か隆司さんの目が険しくなる。
「隆司・・さん?」
「鈴音・・・。私なんかの為・・なんて自分を卑下した言い方をするな。俺にとっては・・・唯一無二の存在なんだから。」
「隆司さん・・・。」
思わず見つめると、隆司さんは顔を赤らめて言った。
「鈴音。お腹空いたな。外へ何か食べに行こう。」
そして隆司さんは足早に部屋を出て行った―。
2
お気に入りに追加
812
あなたにおすすめの小説
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
誰にも言えないあなたへ
天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。
マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。
年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。
忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
彼が愛した王女はもういない
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。
どちらも叶わない恋をした――はずだった。
※関連作がありますが、これのみで読めます。
※全11話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる