上 下
46 / 519

第4章 4 姉の要求

しおりを挟む
「お、お姉ちゃん・・・1人暮らしって・・私が・・?」

思わず震え声で尋ねるとお姉ちゃんはニッコリ笑みを浮かべた。

「ええ。もちろんよ。とりあえずお茶でも飲んで話しましょう?」

「う、うん・・・。」

私の心臓は今にも口から飛び出すのではないかと思う位にドキドキしている。でも平静を装ってお姉ちゃんの後に続きリビングルームへ向かうと2人でソファに向かい合わせに座る。一体どんな話を聞かされるのだろう・・?それなのにお姉ちゃんの口からはいつまで待っても言葉が出てこない。

「あの・・・お姉ちゃん・・?」

とうとう我慢出来なくなった私は恐る恐るお姉ちゃんに語り掛けた。すると・・。

「そうだ、大事なお話にはお茶が欠かせないわね。待っていて、鈴音ちゃん。今お茶をいれてくるから。」

お姉ちゃんはポンと手を叩くと、立ち上がりパタパタとキッチンへと向かった。そんな後ろ姿を茫然と見送る私。
だ、駄目だ・・・。お姉ちゃん・・・やっぱりどこかおかしくなっている。どうしよう・・お姉ちゃんがおかしくなったのは・・・一緒に暮らしている私がもっと早くにお姉ちゃんの異常に気付かなかったからだ。気付いていればこんな事にはならなかったのに・・っ!
自分のふがいなさに腿の上置いた手をギュッと握りしめ、悔しさで唇をかみしめているとお姉ちゃんがお茶を入れて運んできた。

「はい、どうぞ。鈴音ちゃん。」

私の座るテーブルの前にコトンと湯のみが置かれた。

「さあ、まずはお茶を飲んでくれる?」

私は喉なんか少しも乾いていなかったけど、今はお姉ちゃんの言う事を聞いておかなくちゃ・・。

「ありがとう、お姉ちゃん。」

湯のみを持つと、フウフウ冷ましながら私はお茶を一口飲んだ。
うっ・・何、これ・・・にっが~い・・・。

だけど、お姉ちゃんは平然とお茶を飲んでいる。お姉ちゃん・・ひょっとして味覚迄おかしくなってしまったのかな・・?
一口しかお茶を飲まない私を見てお姉ちゃんは言う。

「あら・・鈴音ちゃん。もう飲まないの?」

「う、ううん。飲むよ。」

そこで仕方なく私は熱くて、とっても苦いお茶を無理に飲み干した。

「ありがとう、お姉ちゃん。お茶淹れてくれて。」

笑顔で言うとお姉ちゃんは首をかしげた。

「あら~鈴音ちゃん・・よくあの苦いお茶飲めたわねえ・・・。」

え・・?私はお姉ちゃんの言葉に耳を疑った。まさか・・お姉ちゃんはわざとあの苦いお茶を私に・・?そのことを想像して、思わず背筋に悪寒が走ってしまった。

「それでね、鈴音ちゃん。さっきの引っ越しの話なんだけど・・いつ頃なら引越しできそうかしら?」

「え・・?」

「私としては今すぐにでも鈴音ちゃんに引っ越しをしてもらいたい位なんだけど・・・。でも不動産屋さんを探して、その次に、部屋を探して・・引っ越しの準備でしょ・・・荷造りとか色々あるし・・・。」

お姉ちゃんは指折り数えながら考えている。やっぱり・・お姉ちゃんは本気なんだ・・・本気でこの私を追い出そうと思っているんだ・・・!
だけど・・私はここにいたい。お姉ちゃんが心配だから・・お父さんとお母さんと暮らした思い出の場所だから・・そして亮平が近くにいるから・・・。
そこで私は顔をあげてお姉ちゃんを見ると言った・

「ねえ。お姉ちゃん・・・引っ越すには私・・まだ新人だし、お金も無くて・・。」

するとお姉ちゃんは言った。

「お金なら大丈夫。私がちゃんと払ってあげるから。それよりも・・・今は一刻も早く鈴音ちゃんにこの家を出て行って貰いたいのよ。だって・・鈴音ちゃんがこの家に住んでるとね・・・。亮平君が貴女の事ばかり気にするのよ。だから・・・ね?お願い、鈴音ちゃん。」

微笑みながら私を見つめるお姉ちゃんは・・・・本当に・・・綺麗だった―。
しおりを挟む
感想 208

あなたにおすすめの小説

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

偽りの結婚生活 ~私と彼の6年間の軌跡

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
偽りの結婚をした男性は決して好きになってはいけない私の初恋の人でした― 大手企業に中途採用された「私」。だけどその実態は仮の結婚相手になる為の口実・・。 これは、初恋の相手を好きになってはいけない「私」と「彼」・・そして2人を取り巻く複雑な人間関係が繰り広げられる6年間の結婚生活の軌跡の物語—。 <全3部作:3部作目で完結です:終章に入りました:本編完結、番外編完結しました> ※カクヨム・小説家になろうにも投稿しています

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

政略結婚だけど溺愛されてます

紗夏
恋愛
隣国との同盟の証として、その国の王太子の元に嫁ぐことになったソフィア。 結婚して1年経っても未だ形ばかりの妻だ。 ソフィアは彼を愛しているのに…。 夫のセオドアはソフィアを大事にはしても、愛してはくれない。 だがこの結婚にはソフィアも知らない事情があって…?! 不器用夫婦のすれ違いストーリーです。

隣人はクールな同期でした。

氷萌
恋愛
それなりに有名な出版会社に入社して早6年。 30歳を前にして 未婚で恋人もいないけれど。 マンションの隣に住む同期の男と 酒を酌み交わす日々。 心許すアイツとは ”同期以上、恋人未満―――” 1度は愛した元カレと再会し心を搔き乱され 恋敵の幼馴染には刃を向けられる。 広報部所属 ●七星 セツナ●-Setuna Nanase-(29歳) 編集部所属 副編集長 ●煌月 ジン●-Jin Kouduki-(29歳) 本当に好きな人は…誰? 己の気持ちに向き合う最後の恋。 “ただの恋愛物語”ってだけじゃない 命と、人との 向き合うという事。 現実に、なさそうな だけどちょっとあり得るかもしれない 複雑に絡み合う人間模様を描いた 等身大のラブストーリー。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

【完結】大好きな幼馴染には愛している人がいるようです。だからわたしは頑張って仕事に生きようと思います。

たろ
恋愛
幼馴染のロード。 学校を卒業してロードは村から街へ。 街の警備隊の騎士になり、気がつけば人気者に。 ダリアは大好きなロードの近くにいたくて街に出て子爵家のメイドとして働き出した。 なかなか会うことはなくても同じ街にいるだけでも幸せだと思っていた。いつかは終わらせないといけない片思い。 ロードが恋人を作るまで、夢を見ていようと思っていたのに……何故か自分がロードの恋人になってしまった。 それも女避けのための(仮)の恋人に。 そしてとうとうロードには愛する女性が現れた。 ダリアは、静かに身を引く決意をして……… ★ 短編から長編に変更させていただきます。 すみません。いつものように話が長くなってしまいました。

処理中です...