上 下
14 / 519

第2章 4 家賃はいくら?

しおりを挟む
 やがて私たちは人事部の社員の男性に席に座って待つように促され、着席して待っていた。すると研修室に人事部の課長と係長が現れ、その後ろから30代位のスーツに身を包んだ女性が入って来た。
へえ・・・・綺麗な女性・・誰かな?
思わず注視してみるほどに、洗練された美しい女性に私は思わず見惚れてしまった。

「新入社員の皆さん。本日は突然の新人研修に集まってくれてありがとう。」

すると、本日の研修目的の説明を課長がマイクを片手に説明しだした。
要は本日新入社員達が集められたのは接客マナーについての研修だったのだ。そして講師として招かれたのが現役キャビンアテンダントのチーフパーサーを務める女性だったのである。
そっか・・・CAの女性だったから美人だったんだ。それなら納得もいく。

その後、私たちは3時間にも渡って挨拶の方法、接客マナーを徹底的に叩き込まれる事になるのだった・・・。


12時―

研修を終えた私達は会議室で差し入れのお弁当を食べながら真理ちゃん、井上君、佐々木君の4人で一つのテーブルに座り、話をしていた。

「あ~あ・・・それにしても今日の研修は厳しかったわね~・・・。」

真理ちゃんが幕の内弁当の玉子焼きを箸でつまみながらため息をついた。

「ああ、俺なんかあの人に3回も挨拶で駄目だしをくらっちゃったよ。」

佐々木君がげんなりした表情で鮭を口に運んでいる。

一方の井上君は・・・。

「うんめえっ!何、この幕の内弁当、ちょーうまいんですけどっ!」

興奮気味で鶏のから揚げを頬張っている。

「全く、相変わらずだな。井上は。」

ペットボトルのお茶を飲みながら佐々木君は言った。

「当り前だろうっ?!一人暮らしの新入社員は生活していくのに命がけなんだよっ!」

井上君は箸を休める事無く食べ続けている。

「ねえ、そんなに一人暮らしって大変なの?一体家賃いくらの処住んでるのよ?」

真理ちゃんが頬杖を突きながら井上君に尋ねた。

「10万。」

「「「はあっ?!」」」

井上君の言葉に思わず私たちの声がハモる。

「え?え?待って、井上君。本当に一月10万円もする家賃の部屋に住んでるの?」

私は尋ねた。

「ああ、そうだよ。」

井上君はあっさり答える。え・・・ちょっと待って。私達新人の初任給は手取りで23万円。そこから税金とか厚生年金とかいろいろ引かれると、実質20万弱になる。それなのに一月10万なんて・・・。

「だ、だって光熱費とか、食費、通信費とか引いたらお金残らないんじないの?」

真理ちゃんも驚いている。

「ああ、だからこういうタダ飯はまさに俺のような人間にとっては天の恵みなんだよ。」

すると佐々木君が言った。

「馬鹿言うなっ!おい、井上。悪いことは言わない。もっと安いアパートへ引越せ!少しくらい駅から遠くなっても築年数が古くてもこの際目を潰れっ!」

佐々木君は真剣に井上君に訴えている。あれ・・・そう言えば・・・。

「ねえ、佐々木君も確か一人暮らしだったよね?家賃はいくらなの?」

私は佐々木君に尋ねた。

「あ、ああ。俺は8万円のアパートに住んでるんだ。8畳間の1DKなんだ。」

「へえ~その広さで8万円なんて安いんじゃないの?しかも都内でしょう?」

真理ちゃんは梅干しを口に入れた。

「ああ、実は築年数が古いんだ。30年になるんだよ。だけどリフォーム済みだし、古さを感じさせないよ。井上、お前の事だ。どうせ贅沢なマンションを借りているんじゃないのか?」

佐々木君に尋ねられ、井上君が答えた。

「別にそれ程じゃないけどなあ・・・Wi-Fiが飛んでいて、BSが見れて、3口のガスコンロに追い炊き機能付きの風呂・・それにロフト付ってだけなんだけど・・これって贅沢か?」

「「「贅沢だ(よ)っ!!!」」」

再び、私たちの声がハモルのだった―。
しおりを挟む
感想 208

あなたにおすすめの小説

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

誰にも言えないあなたへ

天海月
恋愛
子爵令嬢のクリスティーナは心に決めた思い人がいたが、彼が平民だという理由で結ばれることを諦め、彼女の事を見初めたという騎士で伯爵のマリオンと婚姻を結ぶ。 マリオンは家格も高いうえに、優しく美しい男であったが、常に他人と一線を引き、妻であるクリスティーナにさえ、どこか壁があるようだった。 年齢が離れている彼にとって自分は子供にしか見えないのかもしれない、と落ち込む彼女だったが・・・マリオンには誰にも言えない秘密があって・・・。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

処理中です...