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第52話 ※殺戮の幕開け ⑥ (残虐シーン注意)

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「ギャアアアア―――ッ!!」

部屋の中にはヘルマの断末魔の叫びが響き渡っている。しかし2匹の狼達はヘルマの絶叫を物ともせずに身体の上にのしかかり喰い散らかしてく。部屋の中はますます血の匂いが濃くなっていく。

「ウ、ウゲッ!!」

真っ青だった叔父が突如体を背けて嘔吐している。自分の娘が生きながら喰われてる様はさぞかし気持ち悪くなったのだろう。

「…」

やがてヘルマのうめき声すら聞こえなくなった。ヘルマの身体は狼の下敷きになっているのでどのような状況になっているかは私からは見えなかったが、もう殆ど喰い散らかされているに違いない。部屋の中は狼が血をすする音と、咀嚼音だけが響き渡る。そして残りの狼たちは口からヨダレをダラダラと垂らしながら怯える3人を睨み付けている。もはや狼たちにとっては叔父達は単なる餌としての認識しかないのだろう。

「ガウッ!!」

ついに食事を終えた2匹の狼は顔を上げて後ろへ下がった。するとそこには血だまりの中にヘルマの骨と化したものが転がっていた、まだあちこちには肉片やヘルマの着ていた服の切れ端が落ちている。
するとそれを目にした途端、叔母が叫び出し…大声で笑いだした。

「あぁ…う、嘘よ…ぉっ!!こんなの嘘だわぁ…ッ!!アハハハハハ…ッ!!」

「く、狂った…!」

ジークハルトが叔母を見て叫んだ。

「キャハハハハハハハッ!!アーハッハッハッ…ッ!!」

髪を振り乱し、天井を仰ぎながら笑う姿は狂女そのものだった。でもそれは無理ないことだろう。自分の娘が生きながら狼に喰われ、さらに自分達も同じ目にこれから遭わされるのだから狂うのは当然かもしれない。

「アハハハハハハハハッ!ヒーヒッヒッヒッ!!」

狂った叔母の笑い声に触発されてか、今までお預けを食らっていた2匹の狼が叔母に襲い掛かった。

「ガルルルルルルルッ!!」

しかし、狂った人間は痛みも感じないのだろうか?叔母は狼たちに血しぶきを上げながら腕や足を喰いちぎられているのに悲鳴を上げずに笑い続けていた。その光景はまさに地獄絵図だ。叔父もジークハルトもなすすべも無く叔母が無残に喰われていく様を呆然と見ている。彼等にはもう逃げる気力すら残されていないのだろう。そこで私は骸骨たちに命じた。

「貴方達はこの城の宝を全てかき集めて来なさい」

骸骨たちは無言で頷くとカタカタと骨を鳴らしながら出ていく。叔母は相変わらず笑い続けていたが、やがてその笑い声も聞こえなくなった。完全に息絶えたのだろう。
しかし、それでも飢えた狼たちは叔母を喰らい続けている。

「グルルルル…」

やがて、お腹が膨れて満足したのだろう。2匹の狼たちは叔父達から視線をそらさず後ろへ下がって行く。そして床には2体の骸骨が転がっていた。

「バルバラッ!!ヘルマッ!!な、何て事だ…っ!!」

叔父がその場に崩れ落ちる。驚くべきことに叔父はまだ壮絶な光景を目にしながら、冷静さを失っていなかったのだ。…ひょっとすると叔父はこのような凄惨極まりない光景を見慣れているのかもしれない。私の預かり知らぬところで父や母以外の人間の命を奪って来た可能性がある。

けれど…今となってはもうどうでも良かった。

何故なら、叔父もジークハルトもここで壮絶な最期を迎えるのだから。

叔母やヘルマ以上の壮絶な最期を―。
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