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第51話 ※殺戮の幕開け ⑤ (残虐シーン注意)
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「あら?ジークハルト様…私を魔女と呼ぶのはもうやめたのですか?」
血に飢えた狼の背中を撫でながらジークハルトを見た。
「そ、そうだよ。君は魔女なんかじゃない。僕の愛する婚約者のフィーネだよ」
青白い顔に無理に笑みを浮かべるジークハルト。彼の手のひらを返したかのような態度に、途端に叔父達から非難の声が上がる。
「ジークハルトッ!フィーネに媚びを売って自分だけ助かるつもりなのっ?!」
「酷いですっ!私を愛していると何度も言って下さったではありませんかっ!」
「貴様が一番フィーネを嫌悪していただろうがっ!!」
「うるさいっ!黙れっ!フィーネの両親の命を奪い、この城を…財産を奪ったのはお前たちアドラー家だろうっ?!俺は無関係だっ!」
そしてそこから狼と骸骨の集団を前に、4人の激しい口論が始まった。
…本当に人間と言う者は…なんと醜いエゴの塊なのだろう。私は半ば呆れて口論を続ける叔父達とジークハルトを見つめていたが…ついにジークハルトが叔父達を一喝した。
「うるさいっ!お前たちのいざこざに俺を巻き込むなっ!」
そしてさらに強張った笑みを張りつかせながら私を見る。
「フィーネ。やっぱヘルマよりフィーネの方がずっと魅力的だ。君を愛している…。今までの僕はどうかしていたんだよ。だから…僕だけはどうか見逃してくれないだろうか…?」
もうこれ以上ジークハルトの戯言を聞いていたくは無かった。
「ジークハルト様」
「な、何だい?」
その狼狽ぶりから未だに私に対する嫌悪感を持っているのは明らかだった。
「…本当に私の事をまだ愛していらっしゃるのですか?」
「勿論だよっ!」
即答するジークハルト。
「嘘よっ!そう言って1人だけ助かろうとしているのよっ!」
ヘルマが叫ぶ。
「うるさいっ!黙れっ!」
パーンッ!
ついにジークハルトはヘルマに手を上げた。
「ジ、ジークハルト様…?」
ヘルマは頬を押さえながらジークハルトを見る。
「お前らいい加減にしろっ!俺を巻き込むなっ!」
ジークハルトは激怒すると、再び私を見つめて笑みを浮かべる。本当に…私は人を見る目が無かった。こんな男の何所が良かったのだろう?
「ジークハルト様…先程貴方は私の事を愛していると仰いましたね?本当ですか?」
「本当に決まっているじゃないか…」
震えながら返事をしている様子が手に取る様に分った。
「そうですか…。ですが…私はもう貴方を愛してなどおりません」
「な、何だって…?嘘だろう…?」
ジークハルトは目を見開いて私を見た。…全く愚かな男だ。魔女と罵られ、目の前で別の女性に愛を囁き、挙句に剣で胸を貫いて来た男を未練がましく愛し続けられるとでも思っていたのだろうか?
「嘘等ついておりません。むしろ…嘘つきなのはあなた方ではありませんか。それに今の私はあなた方に憎しみしか抱いておりませんから」
私は一人一人を指さしながら言った。
「貴様…下手に出ていればいい気になって…この魔女っ!」
ついにジークハルトは剣を抜こうとした。
「最初の犠牲者が決まったわ。あの男よ」
私は狼たちに命じた。
「ヒッ!!」
ジークハルトの顔に恐怖が宿る。
グルルル…ガウッ!!
2匹の狼たちが飛び出した。
「くそっ!!」
すると何と言う事か、ジークハルトは傍らにいたヘルマを思い切り突き飛ばした。
「キャアッ!!」
ドサッ!!
狼の前に倒れ込むヘルマ。
2匹の狼はヘルマの上にのしかかると1匹はヘルマの右足に。もう1匹はヘルマの右足に噛みついた。
「ガウウウッ!!」
「ガウッ!!」
「ギャアアアアアアッ!!痛いっ!!痛いっ!!助けてッ!!」
耳をつんざくようなヘルマの絶叫が部屋の中に響き渡る。
「あらあら…順番が入れ替わってしまったわね…?でも、どうせ皆同じ目に遭うのだから気にする事はないかもね?」
私は笑みを浮かべながら、ヘルマが狼たちによって生きながら喰われていく様を言葉を無くしてガタガタと震えながら見つめている3人に語り掛ける。
しかし、彼等の耳には恐らく私の言葉は聞こえていないだろう。
何故ならヘルマの恐ろしい程の絶叫と狼達がヘルマを咀嚼する音でかき消されているからだ。
ついに…彼らにとって惨劇の宴が始まった―。
血に飢えた狼の背中を撫でながらジークハルトを見た。
「そ、そうだよ。君は魔女なんかじゃない。僕の愛する婚約者のフィーネだよ」
青白い顔に無理に笑みを浮かべるジークハルト。彼の手のひらを返したかのような態度に、途端に叔父達から非難の声が上がる。
「ジークハルトッ!フィーネに媚びを売って自分だけ助かるつもりなのっ?!」
「酷いですっ!私を愛していると何度も言って下さったではありませんかっ!」
「貴様が一番フィーネを嫌悪していただろうがっ!!」
「うるさいっ!黙れっ!フィーネの両親の命を奪い、この城を…財産を奪ったのはお前たちアドラー家だろうっ?!俺は無関係だっ!」
そしてそこから狼と骸骨の集団を前に、4人の激しい口論が始まった。
…本当に人間と言う者は…なんと醜いエゴの塊なのだろう。私は半ば呆れて口論を続ける叔父達とジークハルトを見つめていたが…ついにジークハルトが叔父達を一喝した。
「うるさいっ!お前たちのいざこざに俺を巻き込むなっ!」
そしてさらに強張った笑みを張りつかせながら私を見る。
「フィーネ。やっぱヘルマよりフィーネの方がずっと魅力的だ。君を愛している…。今までの僕はどうかしていたんだよ。だから…僕だけはどうか見逃してくれないだろうか…?」
もうこれ以上ジークハルトの戯言を聞いていたくは無かった。
「ジークハルト様」
「な、何だい?」
その狼狽ぶりから未だに私に対する嫌悪感を持っているのは明らかだった。
「…本当に私の事をまだ愛していらっしゃるのですか?」
「勿論だよっ!」
即答するジークハルト。
「嘘よっ!そう言って1人だけ助かろうとしているのよっ!」
ヘルマが叫ぶ。
「うるさいっ!黙れっ!」
パーンッ!
ついにジークハルトはヘルマに手を上げた。
「ジ、ジークハルト様…?」
ヘルマは頬を押さえながらジークハルトを見る。
「お前らいい加減にしろっ!俺を巻き込むなっ!」
ジークハルトは激怒すると、再び私を見つめて笑みを浮かべる。本当に…私は人を見る目が無かった。こんな男の何所が良かったのだろう?
「ジークハルト様…先程貴方は私の事を愛していると仰いましたね?本当ですか?」
「本当に決まっているじゃないか…」
震えながら返事をしている様子が手に取る様に分った。
「そうですか…。ですが…私はもう貴方を愛してなどおりません」
「な、何だって…?嘘だろう…?」
ジークハルトは目を見開いて私を見た。…全く愚かな男だ。魔女と罵られ、目の前で別の女性に愛を囁き、挙句に剣で胸を貫いて来た男を未練がましく愛し続けられるとでも思っていたのだろうか?
「嘘等ついておりません。むしろ…嘘つきなのはあなた方ではありませんか。それに今の私はあなた方に憎しみしか抱いておりませんから」
私は一人一人を指さしながら言った。
「貴様…下手に出ていればいい気になって…この魔女っ!」
ついにジークハルトは剣を抜こうとした。
「最初の犠牲者が決まったわ。あの男よ」
私は狼たちに命じた。
「ヒッ!!」
ジークハルトの顔に恐怖が宿る。
グルルル…ガウッ!!
2匹の狼たちが飛び出した。
「くそっ!!」
すると何と言う事か、ジークハルトは傍らにいたヘルマを思い切り突き飛ばした。
「キャアッ!!」
ドサッ!!
狼の前に倒れ込むヘルマ。
2匹の狼はヘルマの上にのしかかると1匹はヘルマの右足に。もう1匹はヘルマの右足に噛みついた。
「ガウウウッ!!」
「ガウッ!!」
「ギャアアアアアアッ!!痛いっ!!痛いっ!!助けてッ!!」
耳をつんざくようなヘルマの絶叫が部屋の中に響き渡る。
「あらあら…順番が入れ替わってしまったわね…?でも、どうせ皆同じ目に遭うのだから気にする事はないかもね?」
私は笑みを浮かべながら、ヘルマが狼たちによって生きながら喰われていく様を言葉を無くしてガタガタと震えながら見つめている3人に語り掛ける。
しかし、彼等の耳には恐らく私の言葉は聞こえていないだろう。
何故ならヘルマの恐ろしい程の絶叫と狼達がヘルマを咀嚼する音でかき消されているからだ。
ついに…彼らにとって惨劇の宴が始まった―。
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