上 下
50 / 61

第50話 ※殺戮の幕開け ④ (残虐シーン注意)

しおりを挟む
 壁のあちこちには血しぶきが飛び、辺り一面おびただしい血の海と化した廊下を私は歩き続けた。
そしてダイニングルームが近付いてくると騒ぎ声が聞こえて来た。

フフフ…やはり狼たちは私の言いつけをちゃんと守ってくれていたのだ。恐らくこの城で生き残っているのは彼等だけだろう。

「く、来るなっ!あっちへ行けっ!魔物どもめっ!!」
「いやあああっ!!こ、怖いっ!!」
「な、何故だ…何故お、狼とが、骸骨が…ッ!!」
「神様…お助け下さいっ!」


 それを耳にした私は思わず口元に笑みが浮かぶのを感じた。恐らく彼らは多くの使用人達が食い殺されていく姿をまざまざと見せつけられてきただろう。恐怖は最高潮に達しているはずだ。数多の死を見て来た彼らは次は自分達の番である事は分り切っているに違いない。

 だが…使用人達の死の方がまだこれから殺される彼等に比べるとましだろう。同じ殺戮方法でも私は彼らにこう命じたのだ。

『なるべく、苦しまぬよう、使用人達は一撃で殺してから食べなさい』と。

だけど、彼等はそうはいかない。何しろ私の全てを奪い、私の命まで脅かした挙句…魔女に変えたのは彼らなのだから。彼等には究極の死の痛みと苦しみ、そして恐怖を味わいながら死んで貰おう―。


「こんばんは、皆さん」

ダイニングルームに入ってくると私は声を掛けた。叔父家族とジークハルトは壁際に追いつめられ、8匹の狼と4対の骸骨に取り囲まれていた。彼らはすっかり恐怖におびえ、特にヘルマと叔母は髪は乱れ、顔は泣きはらして目も当てられないほどに悲惨な有様だった。

「フィ、フィーネッ!!き、貴様…何故ここに…っ!!」

叔父が髪を振り乱しながら私を見て叫んだ。

「何故ここに?そんなの決まっているではありませんか?この城は私と…叔父様に殺された父と母の城ですよ?奪われたものを取り返しに来ただけです。当然ではありませんか?」

首を傾げながら言う。

「ま、まさか…フィーネッ!あんたなのっ?!この城に…お、狼と骸骨を入れたのは…っ!!」

涙交じりにヘルマが叫ぶ。

「そうよ。彼らは私の大切な仲間だもの」

「な、何よ…っ!酷い…っ!こ、こんな勝手が許されるのっ?!こんな魔物と亡者を城に入れて…み、見たのよっ!!使用人達が…く、食い殺されていくのを…!!」

叔母が絶叫する。

ガルウゥウウウ~…ッ!!

すると狼たちが一斉にうなる。

「あまり大きな声を上げて血に飢えた彼らを興奮させない方が良いと思いますよ?」

私は言うと、彼等に近付き、傍らにいる狼の背を撫でた。

「魔物だなんて…酷い言い方ですね…。こんなに可愛いじゃありませんか…?」

すると私に背を撫でられた狼は嬉しそうに尻尾を振る。そんな姿を叔父達はガタガタと震えながら見守っている。

「叔母様、先程…勝手が許されるのか?と尋ねられましたが…勝手なのはあなた方ではありませんか?父と母の命を奪い、この城に勝手に上がり込み…そして私から何もかも奪っておいてどの口がそのような事を言うのですか?」

すると、突然ジークハルトが声を上げた。

「フィ、フィーネッ!!許してくれっ!僕が悪かった!本当は…君にあんな酷い態度を取るつもりじゃなかったんだ…!助けてくれ…頼む…っ!この通りだっ!」

「…」

私は懇願するジークハルトを無言で見つめた―。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

愛を語れない関係【完結】

迷い人
恋愛
 婚約者の魔導師ウィル・グランビルは愛すべき義妹メアリーのために、私ソフィラの全てを奪おうとした。 家族が私のために作ってくれた魔道具まで……。  そして、時が戻った。  だから、もう、何も渡すものか……そう決意した。

くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。

音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。> 婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。 冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。 「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

お姉さまは最愛の人と結ばれない。

りつ
恋愛
 ――なぜならわたしが奪うから。  正妻を追い出して伯爵家の後妻になったのがクロエの母である。愛人の娘という立場で生まれてきた自分。伯爵家の他の兄弟たちに疎まれ、毎日泣いていたクロエに手を差し伸べたのが姉のエリーヌである。彼女だけは他の人間と違ってクロエに優しくしてくれる。だからクロエは姉のために必死にいい子になろうと努力した。姉に婚約者ができた時も、心から上手くいくよう願った。けれど彼はクロエのことが好きだと言い出して――

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。 なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと? 婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。 ※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。 ※ゆるふわ設定のご都合主義です。 ※元サヤはありません。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

処理中です...