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第48話 殺戮の幕開け ②
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私の着ている黒いドレスにはジークハルトによって刺された時に出血した血がこびりついている。その匂いに引き寄せられてか、狼達のうめき声がこちらに向かって近付いて来るのをひしひしと感じていた。やがてうっそうと茂った木々の合間から無数の光る眼が私を取り囲んでいることに気付いた。
「来たわね…」
私は笑みを浮かべた。そう、彼等こそ私の僕達。血に飢えた狼。きっと今宵は素晴ら働きをしてくれるだろう。
グルルル…
恐らく30匹以上はいると思われる狼集団、彼らは私が逃げられないようにぐるりと私の周りを囲み、ゆっくりと距離を詰めて来る。彼らは皆獰猛で、耳まで避けた口からは鋭い牙が見えている。
私は彼らを見渡すと、僕になる様に命じた。
< あなた達…私の命令に従いなさい >
すると…。
彼等は一斉に足を止めると、まるでひれ伏すかのように地面に座り込んだ。そして群れの中から一際群を抜いた大きな狼が私の元へと近付いて来る。恐らく彼がリーダーなのだろう。彼は私の前で足を止めると尻尾を振りだした。青い毛並みがとても美しい狼だった。
「皆…相当飢えているようね?この森を抜けたところに城があるから思う存分飢えを満たしなさい」
するとその言葉に従うかのように狼たちは天を仰ぎ、声を揃えて遠吠えした。その姿を満足気に私は見つめ、更に彼らに命じた。
「あなたたち…後ろに下がっていなさい」
すると狼達は一斉に後ろに下がった。
「フフフ…いい子達ね…」
そして私は地面に手を当てると念じた。出てくるように命じた。するとボコボコと土が動き出し…やがて何十体もの骸骨たちが土の中から這い出て、私の前に並んだ。
私は骸骨の正体を知っている。彼らはグレン伯爵の手によって殺害された領民たちである。伯爵は領民たちを殺害後、この地面に埋めて辺り一帯を魔法で森に変えたのだ。
「あなた達はあの城の宝を全てかき集めなさい。そして逃げようとしたり、隠れている者達を全員捉えて狼達に差し出すのよ」
私の言葉に一斉に頷く骸骨達。私は美しい満月を見上げた。
「フフフ…ついに殺戮の宴が始まるわ。今宵は彼らにとって、特別な夜になること間違いないわ。皆…行くわよ」
すると、狼のリーダーが私の前でしゃがんだ。
「ありがとう。いい子ね」
私は頭を撫でると、彼の背にまたがる。
「さぁ…行きましょう。アドラー城へっ!」
ウォオオオオオオ―――ンッ!!
狼の群れは月に向かって大きく叫ぶと、骸骨達を背に乗せ、一斉に城へ向けて風のように走り出した。
叔父様…叔母様、ヘルマ…そしてジークハルト。
待っていなさい。
私から全てを奪ったあなた達に地獄の苦しみを今から味あわせてあげるから。
私は狼の背にまたがり、彼らの恐怖に震える顔を想像し…笑みを浮かべた―。
「来たわね…」
私は笑みを浮かべた。そう、彼等こそ私の僕達。血に飢えた狼。きっと今宵は素晴ら働きをしてくれるだろう。
グルルル…
恐らく30匹以上はいると思われる狼集団、彼らは私が逃げられないようにぐるりと私の周りを囲み、ゆっくりと距離を詰めて来る。彼らは皆獰猛で、耳まで避けた口からは鋭い牙が見えている。
私は彼らを見渡すと、僕になる様に命じた。
< あなた達…私の命令に従いなさい >
すると…。
彼等は一斉に足を止めると、まるでひれ伏すかのように地面に座り込んだ。そして群れの中から一際群を抜いた大きな狼が私の元へと近付いて来る。恐らく彼がリーダーなのだろう。彼は私の前で足を止めると尻尾を振りだした。青い毛並みがとても美しい狼だった。
「皆…相当飢えているようね?この森を抜けたところに城があるから思う存分飢えを満たしなさい」
するとその言葉に従うかのように狼たちは天を仰ぎ、声を揃えて遠吠えした。その姿を満足気に私は見つめ、更に彼らに命じた。
「あなたたち…後ろに下がっていなさい」
すると狼達は一斉に後ろに下がった。
「フフフ…いい子達ね…」
そして私は地面に手を当てると念じた。出てくるように命じた。するとボコボコと土が動き出し…やがて何十体もの骸骨たちが土の中から這い出て、私の前に並んだ。
私は骸骨の正体を知っている。彼らはグレン伯爵の手によって殺害された領民たちである。伯爵は領民たちを殺害後、この地面に埋めて辺り一帯を魔法で森に変えたのだ。
「あなた達はあの城の宝を全てかき集めなさい。そして逃げようとしたり、隠れている者達を全員捉えて狼達に差し出すのよ」
私の言葉に一斉に頷く骸骨達。私は美しい満月を見上げた。
「フフフ…ついに殺戮の宴が始まるわ。今宵は彼らにとって、特別な夜になること間違いないわ。皆…行くわよ」
すると、狼のリーダーが私の前でしゃがんだ。
「ありがとう。いい子ね」
私は頭を撫でると、彼の背にまたがる。
「さぁ…行きましょう。アドラー城へっ!」
ウォオオオオオオ―――ンッ!!
狼の群れは月に向かって大きく叫ぶと、骸骨達を背に乗せ、一斉に城へ向けて風のように走り出した。
叔父様…叔母様、ヘルマ…そしてジークハルト。
待っていなさい。
私から全てを奪ったあなた達に地獄の苦しみを今から味あわせてあげるから。
私は狼の背にまたがり、彼らの恐怖に震える顔を想像し…笑みを浮かべた―。
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