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第42話 今宵、全ての者に復讐を決行する
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「成程…そういう事だったのね…」
私は日記を閉じ、右腕の袖をまくった。そこには黒い薔薇の模様が浮かんでいる。
「私も…グレン伯爵と同じ…闇落ちしたのね…」
どうりで、叔父家族に…そしてジークハルトに何を言われようが、少しも気にならなかったわけだ。目の前で人が死んだのを目にしても、感じる事は何も無かった。
それにしてもグレン伯爵はなんと哀れな人物だったのだろう。日記には続きが無かったが、私には分る。恐らく伯爵はこの城を襲った領民達を全員抹殺し…あの湖に身を沈めたのだろう。あの湖は美しいアドラー城を見る事の出来る場所だからだ。きっと愛する妻を思いながら静かに死んでいったのだろう。
「でも…いい事を知ったわ。満月が力を増幅させてくれるのね。それなら今夜、私も復讐を実行するわ。私には彼らを裁く資格があるのだから…」
そして私は笑みを浮かべた―。
****
部屋の扉を開けようとした時、背後から私を追いかけて来る足音が聞こえて来た。
「もしかして…フィーネ様ですかっ?!」
振り向くとそこには息を切らせてこちらを見るユリアンが立っていた。
「ユリアン…」
「フィーネ様…」
走って来たのだろうか。ユリアンは肩で息をしている。
「フィーネ様…そ、そのお姿は…?」
ユリアンは青ざめた顔で私を見ている。
「ユリアン…とりあえず中に入って」
「は、はい…」
ユリアンを部屋に招き、扉を閉めると彼を見た。
「気付けばこんな姿になっていたの。どう?この姿?私は本物の魔女になったのよ」
おどけた様子で言うとユリアンは首を振った。
「そんな事は言わないで下さい…」
その顔は今にも泣きそうだった。
「使用人たちが騒いでいたのです。この城に全身黒づくめの恐ろしい魔女が現れたと。そしてフットマンが1人亡くなったそうですね。黒い魔女が殺害したと皆が噂しておりました」
「ええ。あのフットマンは叔父に命じられて私を毒殺するように命じられて、毒の入ったお茶を淹れたのよ。でも私が殺害したことになっているのね」
でも、そんな事はもうどうでも良かった。何故なら私はこの城の者全員を殺害する事に決めたからだ。
「な、何ですって?!フィーネ様の毒殺を命じたのですかっ?!な、何て酷い…!」
ユリアンは本当に私の事を心配しているように見えた。
「だけど、私が死ななかったから本当に毒を盛ったのか、叔父は疑ったのよ。そこで毒を盛ったフットマンに飲むように命じたの。結局フットマンはその場で大量に血を吐いて死んでしまったわ」
「フィ、フィーネ様…」
青ざめた顔で私を見るユリアンに言った。
「私が怖いでしょう?ユリアン…。私はもう闇に落ちてしまったの。恐らくもう人間ではなくなったわ。この姿を見れば一目瞭然でしょう?」
しかし、ユリアンは首を振った。
「いいえ…私にはそうは見えません。フィーネ様は…今でも以前とは何ら変わらず…お美しい方です…自分をそんな風に卑下しないで下さいっ!」
ユリアンの言葉はありがたかった。
「ありがとう。貴方だけは他の人達とは違い、私に良くしてくれたわ。だから貴方だけは助けてあげる。いい?今すぐこの城を出るのよ。どこか遠くへ逃げて頂戴。今夜この城は大変な事になるから」
「え…?フィーネ様…い、一体何をするつもりですか…?」
ユリアンは震えながら私に尋ねた。
「今宵…この城に住む者全てに復讐する事を決めたからよ」
私は目を閉じると言った―。
私は日記を閉じ、右腕の袖をまくった。そこには黒い薔薇の模様が浮かんでいる。
「私も…グレン伯爵と同じ…闇落ちしたのね…」
どうりで、叔父家族に…そしてジークハルトに何を言われようが、少しも気にならなかったわけだ。目の前で人が死んだのを目にしても、感じる事は何も無かった。
それにしてもグレン伯爵はなんと哀れな人物だったのだろう。日記には続きが無かったが、私には分る。恐らく伯爵はこの城を襲った領民達を全員抹殺し…あの湖に身を沈めたのだろう。あの湖は美しいアドラー城を見る事の出来る場所だからだ。きっと愛する妻を思いながら静かに死んでいったのだろう。
「でも…いい事を知ったわ。満月が力を増幅させてくれるのね。それなら今夜、私も復讐を実行するわ。私には彼らを裁く資格があるのだから…」
そして私は笑みを浮かべた―。
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部屋の扉を開けようとした時、背後から私を追いかけて来る足音が聞こえて来た。
「もしかして…フィーネ様ですかっ?!」
振り向くとそこには息を切らせてこちらを見るユリアンが立っていた。
「ユリアン…」
「フィーネ様…」
走って来たのだろうか。ユリアンは肩で息をしている。
「フィーネ様…そ、そのお姿は…?」
ユリアンは青ざめた顔で私を見ている。
「ユリアン…とりあえず中に入って」
「は、はい…」
ユリアンを部屋に招き、扉を閉めると彼を見た。
「気付けばこんな姿になっていたの。どう?この姿?私は本物の魔女になったのよ」
おどけた様子で言うとユリアンは首を振った。
「そんな事は言わないで下さい…」
その顔は今にも泣きそうだった。
「使用人たちが騒いでいたのです。この城に全身黒づくめの恐ろしい魔女が現れたと。そしてフットマンが1人亡くなったそうですね。黒い魔女が殺害したと皆が噂しておりました」
「ええ。あのフットマンは叔父に命じられて私を毒殺するように命じられて、毒の入ったお茶を淹れたのよ。でも私が殺害したことになっているのね」
でも、そんな事はもうどうでも良かった。何故なら私はこの城の者全員を殺害する事に決めたからだ。
「な、何ですって?!フィーネ様の毒殺を命じたのですかっ?!な、何て酷い…!」
ユリアンは本当に私の事を心配しているように見えた。
「だけど、私が死ななかったから本当に毒を盛ったのか、叔父は疑ったのよ。そこで毒を盛ったフットマンに飲むように命じたの。結局フットマンはその場で大量に血を吐いて死んでしまったわ」
「フィ、フィーネ様…」
青ざめた顔で私を見るユリアンに言った。
「私が怖いでしょう?ユリアン…。私はもう闇に落ちてしまったの。恐らくもう人間ではなくなったわ。この姿を見れば一目瞭然でしょう?」
しかし、ユリアンは首を振った。
「いいえ…私にはそうは見えません。フィーネ様は…今でも以前とは何ら変わらず…お美しい方です…自分をそんな風に卑下しないで下さいっ!」
ユリアンの言葉はありがたかった。
「ありがとう。貴方だけは他の人達とは違い、私に良くしてくれたわ。だから貴方だけは助けてあげる。いい?今すぐこの城を出るのよ。どこか遠くへ逃げて頂戴。今夜この城は大変な事になるから」
「え…?フィーネ様…い、一体何をするつもりですか…?」
ユリアンは震えながら私に尋ねた。
「今宵…この城に住む者全てに復讐する事を決めたからよ」
私は目を閉じると言った―。
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