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第34話 魔女への目覚め
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ジークハルトは結局一度も私を振り返ることなく、ヘルマを抱きかかえて城のある方向へと消えて行った―。
「ジークハルト様…貴方も所詮叔父様達と同じ部類の人間だったのね…?」
髪が黒いと言うだけで、私を魔女と呼ぶなんて。そして今、私を捨ててお父様とお母様の城を奪おうとしている。
今やジークハルトは私の敵…そして憎むべき存在。
「許せない…私から全てを奪った人たちを…絶対に許さないわ…!」
両手を強く握りしめた時―。
ドクン
自分の心臓の音が大きくなった。そして次の瞬間身体の内部が熱くなる。それはまるで身体の中で熱い炎が燃えているような感覚だった。
熱い…身体の中にこもった熱で焼けてしまいそうだ。
ドクン
ドクン
ドクン
心臓の脈打つ音がますます大きくなり、焼けるような身体の熱で意識が朦朧として来る。
グラリ
身体が大きく傾き、立っていられなくなった私は地面に座り込んでしまった。
「はぁ…はぁっ…はぁ…」
胸を押さえて呼吸を整えていると森の奥から獣の声が聞こえて来た。それも1匹どころではない。気付けその声は私の方へ迫ってきている。
グルルル…
獣の声はますます近付き…やがて姿を現した。
「お、狼…っ!」
胸を押さえながら、思わず悲鳴を上げそうになってしまった。何と現れたのは10匹以上の狼の群れだったのだ。彼らは爛々と目を光らせ、大きな口からは牙が見える。
狼たちは飢えているのだろうか…半開きになった口からはヨダレが滴っていた。
ウウゥ…
グルルル…
狼たちはゆっくりと私の方へ向かって近付いて来る。
そ、そんな…私は復讐を果たす事も無く、こんなところで狼に喰われて死んでしまうの…?!
「い、いや…こ、来ないで…」
ガタガタ震えながら訴えても、当然狼たちに通じるはずはない。彼らは私が座り込んでいるのを見て、逃げる事は無いだろうと悟ったのか、ゆっくり距離を詰めて来る。
そして…。
「ガウッ!!」
群れの中で一際大きな狼が叫び、飛びかかって来た。
「イヤアアアアッ!!あっちへ行ってーっ!!」
恐怖にかられ、絶叫したその時―。
ビクンッ!!
狼たちの動きが一斉に止った。
「え…?」
驚いて狼たちを見渡すと、彼等は怯えたようにジリジリと後退していく。
「な、何故…?どうして狼達が…?」
しかも叫んだ途端、私の身体にも異変が起きていた。あんなにも身体の内部で燃え盛るような熱を感じていたのに、今では嘘の様に熱が引いている。
そして眼前の狼たちは怯えた様にじりじりと私から視線を逸らすことなく、ゆっくり退却していく。
「い、一体何が起こったのかしら…?」
ゆっくり立ち上がった時…。
「キャンッ!!」
まるで子犬のような悲鳴を上げた狼たちは踵を返し、逃げる様に森の奥へと走り去って行った。
「何…?今のは…?」
さっぱり訳が分からず首傾げた時、私は自分の異変に気が付いた。
「う、嘘でしょう…?私の髪が…」
背中までだった私の黒髪が、今ではふくらはぎに届く長さにまで伸びていたのだ。
黒髪には魔術が宿る…。ひょっとして、先程狼の群れが逃げて行ったのも、私の中に眠っていた魔力が突然目覚めたのだろうか?
けれども…。
「フフフフ…これではまるで…本物の魔女ね…?」
自嘲気味に私は笑った。
しかし、これはある意味私を魔女と罵った彼らに畏怖の念を抱かせるのに好都合かもしれない。
私が魔女なら、彼等はあの城に巣食う悪魔だ。
「待ってなさい…お望み通り本物の魔女になった私の姿を拝ませてあげるから…」
そう呟くと、私はアドラー城目指して歩き始めた―。
「ジークハルト様…貴方も所詮叔父様達と同じ部類の人間だったのね…?」
髪が黒いと言うだけで、私を魔女と呼ぶなんて。そして今、私を捨ててお父様とお母様の城を奪おうとしている。
今やジークハルトは私の敵…そして憎むべき存在。
「許せない…私から全てを奪った人たちを…絶対に許さないわ…!」
両手を強く握りしめた時―。
ドクン
自分の心臓の音が大きくなった。そして次の瞬間身体の内部が熱くなる。それはまるで身体の中で熱い炎が燃えているような感覚だった。
熱い…身体の中にこもった熱で焼けてしまいそうだ。
ドクン
ドクン
ドクン
心臓の脈打つ音がますます大きくなり、焼けるような身体の熱で意識が朦朧として来る。
グラリ
身体が大きく傾き、立っていられなくなった私は地面に座り込んでしまった。
「はぁ…はぁっ…はぁ…」
胸を押さえて呼吸を整えていると森の奥から獣の声が聞こえて来た。それも1匹どころではない。気付けその声は私の方へ迫ってきている。
グルルル…
獣の声はますます近付き…やがて姿を現した。
「お、狼…っ!」
胸を押さえながら、思わず悲鳴を上げそうになってしまった。何と現れたのは10匹以上の狼の群れだったのだ。彼らは爛々と目を光らせ、大きな口からは牙が見える。
狼たちは飢えているのだろうか…半開きになった口からはヨダレが滴っていた。
ウウゥ…
グルルル…
狼たちはゆっくりと私の方へ向かって近付いて来る。
そ、そんな…私は復讐を果たす事も無く、こんなところで狼に喰われて死んでしまうの…?!
「い、いや…こ、来ないで…」
ガタガタ震えながら訴えても、当然狼たちに通じるはずはない。彼らは私が座り込んでいるのを見て、逃げる事は無いだろうと悟ったのか、ゆっくり距離を詰めて来る。
そして…。
「ガウッ!!」
群れの中で一際大きな狼が叫び、飛びかかって来た。
「イヤアアアアッ!!あっちへ行ってーっ!!」
恐怖にかられ、絶叫したその時―。
ビクンッ!!
狼たちの動きが一斉に止った。
「え…?」
驚いて狼たちを見渡すと、彼等は怯えたようにジリジリと後退していく。
「な、何故…?どうして狼達が…?」
しかも叫んだ途端、私の身体にも異変が起きていた。あんなにも身体の内部で燃え盛るような熱を感じていたのに、今では嘘の様に熱が引いている。
そして眼前の狼たちは怯えた様にじりじりと私から視線を逸らすことなく、ゆっくり退却していく。
「い、一体何が起こったのかしら…?」
ゆっくり立ち上がった時…。
「キャンッ!!」
まるで子犬のような悲鳴を上げた狼たちは踵を返し、逃げる様に森の奥へと走り去って行った。
「何…?今のは…?」
さっぱり訳が分からず首傾げた時、私は自分の異変に気が付いた。
「う、嘘でしょう…?私の髪が…」
背中までだった私の黒髪が、今ではふくらはぎに届く長さにまで伸びていたのだ。
黒髪には魔術が宿る…。ひょっとして、先程狼の群れが逃げて行ったのも、私の中に眠っていた魔力が突然目覚めたのだろうか?
けれども…。
「フフフフ…これではまるで…本物の魔女ね…?」
自嘲気味に私は笑った。
しかし、これはある意味私を魔女と罵った彼らに畏怖の念を抱かせるのに好都合かもしれない。
私が魔女なら、彼等はあの城に巣食う悪魔だ。
「待ってなさい…お望み通り本物の魔女になった私の姿を拝ませてあげるから…」
そう呟くと、私はアドラー城目指して歩き始めた―。
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