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第29話 信じたくても…
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「ありがとう…ユリアン。送ってくれて…」
部屋の前に到着したので送り届けてくれたユリアンにお礼を述べた。
「いいえ…」
ユリアンは一瞬俯き、次に顔を上げると言った。
「フィーネ様…」
「何?」
「このお屋敷は…フィーネ様から見れば敵ばかりかもしれません」
「…」
私は何も言えず黙っていた。
「ですが…どうかせめて…私の事だけは信じて下さい」
「え?」
驚いてユリアンの顔を見上げた。
「信じて貰えないかもしれませんが…私はフィーネ様の味方です。この言葉に偽りはありません。フィーネ様をお守りする為なら命を懸ける事だって出来ます」
その顔はとても真剣で、嘘をついているようには見えなかった。けれど、私は叔父家族とジークハルトの件で人間不信に陥っていた。
「…どうして私にそこまでの事…言えるの?貴方にとって何の得も無いでしょう?むしろ私の味方をすれば貴方の立場が悪くなるわよ?」
自分でも可愛げのない事を言っているのは分っていた。けれど今の私は人を信じる事が出来なくなっていたのだ。
「フィーネ様の味方をする事によって、この屋敷中の人々を敵に回す事になったとしても構いません」
「ユリアン…何故…?」
何故そこまで私の見方をすると言ってくれるの?
「フィーネ様。今夜は私がこのお部屋の前で寝ずの番をします。何者かが襲って来たとしても私が必ずお守りしますから」
「え?」
その言い方はまるで私が誰かに狙われていることを知っているように思えた。
「ユリアン、貴方…一体何を知っているの…?」
するとユリアンは口元に笑みを浮かべると言った。
「いいえ。私は何も知りません。知っているのはフィーネ様がこの屋敷で独りぼっちだと言う事だけです。ですから私だけでもフィーネ様の味方でいたいのです。…迷惑でしょうか…?」
「…迷惑だなんて…思ってもいない…わ…」
ユリアンの気持ちが嬉しくて、再び涙が溢れそうになった。
「そうですか…。なら良かったです」
ユリアンはホッとしたように胸をなでおろした。
「それではフィーネ様、安心してお休みください」
ユリアンは扉を開けながら言った。
「ええ…おやすみなさい」
パタン…
扉が閉ざされ、私は溜息をついた。
どうしよう。ユリアンが寝ずの番をしてくれるのは心強いけれども、そうなるとこの城を出る事が出来ない。それに復讐する方法だって見いだせてはいないのに、この城を安易に出て大丈夫なのだろうか?
「まずは…叔父家族を騙して無害な人間だと思わせて、私は殺す必要も無い存在だと思わせておいたほうがよいかしら…?」
どうにも良い方法が見いだせず、ポケットに忍ばせた手鏡を取り出した。
「結局…あの部屋から持ち出せたのはこの手鏡だけね…」
そして鏡の中を覗き込んでみた。そこに映るのは疲れ切った自分の顔だった。
先程は奇妙な光景が映し出されたのに、今は全く変化が起きない。
「あれは一体何だったのかしら…。まさか幻覚…?」
だけど、幻覚だとはどうしても思いたくなかった。きっとこの鏡は1度だけ自分が望む光景を映し出してくれる魔法の鏡だったのだ。そうに違いない
「この鏡で…自分の運命を知ることが出来ればいいのに…」
ぽつりと呟いた時…。
「え…?」
再び鏡に異変が起こり始めた―。
部屋の前に到着したので送り届けてくれたユリアンにお礼を述べた。
「いいえ…」
ユリアンは一瞬俯き、次に顔を上げると言った。
「フィーネ様…」
「何?」
「このお屋敷は…フィーネ様から見れば敵ばかりかもしれません」
「…」
私は何も言えず黙っていた。
「ですが…どうかせめて…私の事だけは信じて下さい」
「え?」
驚いてユリアンの顔を見上げた。
「信じて貰えないかもしれませんが…私はフィーネ様の味方です。この言葉に偽りはありません。フィーネ様をお守りする為なら命を懸ける事だって出来ます」
その顔はとても真剣で、嘘をついているようには見えなかった。けれど、私は叔父家族とジークハルトの件で人間不信に陥っていた。
「…どうして私にそこまでの事…言えるの?貴方にとって何の得も無いでしょう?むしろ私の味方をすれば貴方の立場が悪くなるわよ?」
自分でも可愛げのない事を言っているのは分っていた。けれど今の私は人を信じる事が出来なくなっていたのだ。
「フィーネ様の味方をする事によって、この屋敷中の人々を敵に回す事になったとしても構いません」
「ユリアン…何故…?」
何故そこまで私の見方をすると言ってくれるの?
「フィーネ様。今夜は私がこのお部屋の前で寝ずの番をします。何者かが襲って来たとしても私が必ずお守りしますから」
「え?」
その言い方はまるで私が誰かに狙われていることを知っているように思えた。
「ユリアン、貴方…一体何を知っているの…?」
するとユリアンは口元に笑みを浮かべると言った。
「いいえ。私は何も知りません。知っているのはフィーネ様がこの屋敷で独りぼっちだと言う事だけです。ですから私だけでもフィーネ様の味方でいたいのです。…迷惑でしょうか…?」
「…迷惑だなんて…思ってもいない…わ…」
ユリアンの気持ちが嬉しくて、再び涙が溢れそうになった。
「そうですか…。なら良かったです」
ユリアンはホッとしたように胸をなでおろした。
「それではフィーネ様、安心してお休みください」
ユリアンは扉を開けながら言った。
「ええ…おやすみなさい」
パタン…
扉が閉ざされ、私は溜息をついた。
どうしよう。ユリアンが寝ずの番をしてくれるのは心強いけれども、そうなるとこの城を出る事が出来ない。それに復讐する方法だって見いだせてはいないのに、この城を安易に出て大丈夫なのだろうか?
「まずは…叔父家族を騙して無害な人間だと思わせて、私は殺す必要も無い存在だと思わせておいたほうがよいかしら…?」
どうにも良い方法が見いだせず、ポケットに忍ばせた手鏡を取り出した。
「結局…あの部屋から持ち出せたのはこの手鏡だけね…」
そして鏡の中を覗き込んでみた。そこに映るのは疲れ切った自分の顔だった。
先程は奇妙な光景が映し出されたのに、今は全く変化が起きない。
「あれは一体何だったのかしら…。まさか幻覚…?」
だけど、幻覚だとはどうしても思いたくなかった。きっとこの鏡は1度だけ自分が望む光景を映し出してくれる魔法の鏡だったのだ。そうに違いない
「この鏡で…自分の運命を知ることが出来ればいいのに…」
ぽつりと呟いた時…。
「え…?」
再び鏡に異変が起こり始めた―。
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