21 / 61
第21話 婚約者の耳を疑う言葉
しおりを挟む
部屋に戻るとすぐにノックの音が聞こえた。
「はい」
返事をすると先程叔父と一緒に現れたフットマン達が台車に私の荷物を乗せて現れた。
「フィーネ様、お荷物を運んで参りました」
1人のフットマンが声を掛けてくる。
「ええ、ありがとう。荷ほどきは自分でやるから床の上に置いといてくれる」
「はい。かしこまりました」
フットマン達は私の荷物を次々に下ろすと、まるで逃げるように部屋から去って行った。その様子に違和感を感じた。
「…一体、何なの…?叔父様に叔母様だけでなく使用人たちまで私を怯えた目で見るなんて…」
全くもって訳が分からない。でも気にしていても仕方がない。私は届けられた荷物に手をかけた―。
****
荷物整理を初めて30分程経過した時―。
ノックの音とともに、声が聞こえた。
「フィーネ、いるんだろう?僕だ、ジークハルトだ」
「え?!ジークハルト様っ?!」
時刻を見るとまだ10時を過ぎたばかりだった。まさかこんなに早くジークハルトが屋敷にやってくるとは思ってもいなかった。
「ジークハルト様!」
急いで駆け寄ると扉を開け放した。するとそこには愛しいジークハルトの姿があった。
「良かった、フィーネ。離からここに戻って来れたんだね?」
ジークハルトは私を胸に抱き寄せた。
「はい、私がここへ戻って来れたのは全てジークハルト様のお陰です」
ジークハルトの胸に顔を埋めた時…ふと気付いた。それは彼から今迄嗅いだ事のない香りを感じたからだ。
「あの…ジークハルト様」
「どうしたんだい?」
「何か香水をつけていますか?」
「え?!」
何故かその言葉に驚く彼。
「何故そんな事を尋ねるんだい?」
「いえ…何でもありません。多分気のせいだと思います」
その時、ジークハルトの顔が青ざめて見えたので私は追求するのをやめた。
「そうか?気の所為…だったんだね?」
「はい、そうです。それにしても驚きました。まさかこんなに早い時間に私の元に訪ねてきてくださるとは思ってもいませんでしたので」
「そうだね…。とりあえず座って話をしないか?」
「ええ、そうですね。どうぞこちらへ」
部屋に備え付けのソファにジークハルトを座って貰い、テーブルを挟んで私も向かい側に座るとすぐに彼が口を開いた。
「昨日、ローゼンミュラー家で火急の用件が持ち上がってね。その為に急いで城に帰らなければならなかったんだ。フィーネに挨拶せずに帰ってしまって本当に悪かったね」
「いいえ。こうして朝早くから来て頂いたのですから、それだけで嬉しいです」
「ありがとう…そう言って貰えると嬉しいよ。それで…実はフィーネに提案があるんだけど…聞いてくれるかい?」
「はい、どの様な提案ですか?」
「うん。来月フィーネは18歳で成人年齢になるけど…世間ではまだまだ18歳と言う年齢では大人と認めてくれない場合が多いんだ。実際僕自身まだまだ社交界では年若いと言う事で…甘く見られているしね…」
「そう…なのですか?」
一体…ジークハルトは何を言おうとしているのだろう?
私の心臓の鼓動が激しくなってくる。
「だからこれは僕からの提案なのだけど…せめてフィーネが20歳になるまでは伯爵に後見人を任せるべきだと思うんだ。結婚も僕達が20歳になった時にしよう」
「え…?」
私はその言葉に耳を疑った―。
「はい」
返事をすると先程叔父と一緒に現れたフットマン達が台車に私の荷物を乗せて現れた。
「フィーネ様、お荷物を運んで参りました」
1人のフットマンが声を掛けてくる。
「ええ、ありがとう。荷ほどきは自分でやるから床の上に置いといてくれる」
「はい。かしこまりました」
フットマン達は私の荷物を次々に下ろすと、まるで逃げるように部屋から去って行った。その様子に違和感を感じた。
「…一体、何なの…?叔父様に叔母様だけでなく使用人たちまで私を怯えた目で見るなんて…」
全くもって訳が分からない。でも気にしていても仕方がない。私は届けられた荷物に手をかけた―。
****
荷物整理を初めて30分程経過した時―。
ノックの音とともに、声が聞こえた。
「フィーネ、いるんだろう?僕だ、ジークハルトだ」
「え?!ジークハルト様っ?!」
時刻を見るとまだ10時を過ぎたばかりだった。まさかこんなに早くジークハルトが屋敷にやってくるとは思ってもいなかった。
「ジークハルト様!」
急いで駆け寄ると扉を開け放した。するとそこには愛しいジークハルトの姿があった。
「良かった、フィーネ。離からここに戻って来れたんだね?」
ジークハルトは私を胸に抱き寄せた。
「はい、私がここへ戻って来れたのは全てジークハルト様のお陰です」
ジークハルトの胸に顔を埋めた時…ふと気付いた。それは彼から今迄嗅いだ事のない香りを感じたからだ。
「あの…ジークハルト様」
「どうしたんだい?」
「何か香水をつけていますか?」
「え?!」
何故かその言葉に驚く彼。
「何故そんな事を尋ねるんだい?」
「いえ…何でもありません。多分気のせいだと思います」
その時、ジークハルトの顔が青ざめて見えたので私は追求するのをやめた。
「そうか?気の所為…だったんだね?」
「はい、そうです。それにしても驚きました。まさかこんなに早い時間に私の元に訪ねてきてくださるとは思ってもいませんでしたので」
「そうだね…。とりあえず座って話をしないか?」
「ええ、そうですね。どうぞこちらへ」
部屋に備え付けのソファにジークハルトを座って貰い、テーブルを挟んで私も向かい側に座るとすぐに彼が口を開いた。
「昨日、ローゼンミュラー家で火急の用件が持ち上がってね。その為に急いで城に帰らなければならなかったんだ。フィーネに挨拶せずに帰ってしまって本当に悪かったね」
「いいえ。こうして朝早くから来て頂いたのですから、それだけで嬉しいです」
「ありがとう…そう言って貰えると嬉しいよ。それで…実はフィーネに提案があるんだけど…聞いてくれるかい?」
「はい、どの様な提案ですか?」
「うん。来月フィーネは18歳で成人年齢になるけど…世間ではまだまだ18歳と言う年齢では大人と認めてくれない場合が多いんだ。実際僕自身まだまだ社交界では年若いと言う事で…甘く見られているしね…」
「そう…なのですか?」
一体…ジークハルトは何を言おうとしているのだろう?
私の心臓の鼓動が激しくなってくる。
「だからこれは僕からの提案なのだけど…せめてフィーネが20歳になるまでは伯爵に後見人を任せるべきだと思うんだ。結婚も僕達が20歳になった時にしよう」
「え…?」
私はその言葉に耳を疑った―。
12
お気に入りに追加
1,217
あなたにおすすめの小説
あなたの事は記憶に御座いません
cyaru
恋愛
この婚約に意味ってあるんだろうか。
ロペ公爵家のグラシアナはいつも考えていた。
婚約者の王太子クリスティアンは幼馴染のオルタ侯爵家の令嬢イメルダを側に侍らせどちらが婚約者なのかよく判らない状況。
そんなある日、グラシアナはイメルダのちょっとした悪戯で負傷してしまう。
グラシアナは「このチャンス!貰った!」と・・・記憶喪失を装い逃げ切りを図る事にした。
のだが…王太子クリスティアンの様子がおかしい。
目覚め、記憶がないグラシアナに「こうなったのも全て私の責任だ。君の生涯、どんな時も私が隣で君を支え、いかなる声にも盾になると誓う」なんて言い出す。
そりゃ、元をただせば貴方がちゃんとしないからですけどね??
記憶喪失を貫き、距離を取って逃げ切りを図ろうとするのだが何故かクリスティアンが今までに見せた事のない態度で纏わりついてくるのだった・・・。
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★ニャンの日present♡ 5月18日投稿開始、完結は5月22日22時22分
★今回久しぶりの5日間という長丁場の為、ご理解お願いします(なんの?)
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。リアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。登場人物、場所全て架空です。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
目を覚ました気弱な彼女は腹黒令嬢になり復讐する
音爽(ネソウ)
恋愛
家族と婚約者に虐げられてきた伯爵令嬢ジーン・ベンスは日々のストレスが重なり、高熱を出して寝込んだ。彼女は悪夢にうなされ続けた、夢の中でまで冷遇される理不尽さに激怒する。そして、目覚めた時彼女は気弱な自分を払拭して復讐に燃えるのだった。
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
(完)あなたの瞳に私は映っていなかったー妹に騙されていた私
青空一夏
恋愛
私には一歳年下の妹がいる。彼女はとても男性にもてた。容姿は私とさほど変わらないのに、自分を可愛く引き立てるのが上手なのよ。お洒落をするのが大好きで身を飾りたてては、男性に流し目をおくるような子だった。
妹は男爵家に嫁ぎ玉の輿にのった。私も画廊を経営する男性と結婚する。私達姉妹はお互いの結婚を機に仲良くなっていく。ところがある日、夫と妹の会話が聞こえた。その会話は・・・・・・
これは妹と夫に裏切られたヒロインの物語。貴族のいる異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。
※表紙は青空作成AIイラストです。ヒロインのマリアンです。
※ショートショートから短編に変えました。
妹に全部取られたけど、幸せ確定の私は「ざまぁ」なんてしない!
石のやっさん
恋愛
マリアはドレーク伯爵家の長女で、ドリアーク伯爵家のフリードと婚約していた。
だが、パーティ会場で一方的に婚約を解消させられる。
しかも新たな婚約者は妹のロゼ。
誰が見てもそれは陥れられた物である事は明らかだった。
だが、敢えて反論もせずにそのまま受け入れた。
それはマリアにとって実にどうでも良い事だったからだ。
主人公は何も「ざまぁ」はしません(正当性の主張はしますが)ですが...二人は。
婚約破棄をすれば、本来なら、こうなるのでは、そんな感じで書いてみました。
この作品は昔の方が良いという感想があったのでそのまま残し。
これに追加して書いていきます。
新しい作品では
①主人公の感情が薄い
②視点変更で読みずらい
というご指摘がありましたので、以上2点の修正はこちらでしながら書いてみます。
見比べて見るのも面白いかも知れません。
ご迷惑をお掛けいたしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる