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第21話 婚約者の耳を疑う言葉

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 部屋に戻るとすぐにノックの音が聞こえた。

「はい」

返事をすると先程叔父と一緒に現れたフットマン達が台車に私の荷物を乗せて現れた。

「フィーネ様、お荷物を運んで参りました」

1人のフットマンが声を掛けてくる。

「ええ、ありがとう。荷ほどきは自分でやるから床の上に置いといてくれる」

「はい。かしこまりました」

フットマン達は私の荷物を次々に下ろすと、まるで逃げるように部屋から去って行った。その様子に違和感を感じた。

「…一体、何なの…?叔父様に叔母様だけでなく使用人たちまで私を怯えた目で見るなんて…」

全くもって訳が分からない。でも気にしていても仕方がない。私は届けられた荷物に手をかけた―。


****

荷物整理を初めて30分程経過した時―。

ノックの音とともに、声が聞こえた。

「フィーネ、いるんだろう?僕だ、ジークハルトだ」

「え?!ジークハルト様っ?!」

時刻を見るとまだ10時を過ぎたばかりだった。まさかこんなに早くジークハルトが屋敷にやってくるとは思ってもいなかった。

「ジークハルト様!」

急いで駆け寄ると扉を開け放した。するとそこには愛しいジークハルトの姿があった。

「良かった、フィーネ。離からここに戻って来れたんだね?」

ジークハルトは私を胸に抱き寄せた。

「はい、私がここへ戻って来れたのは全てジークハルト様のお陰です」

ジークハルトの胸に顔を埋めた時…ふと気付いた。それは彼から今迄嗅いだ事のない香りを感じたからだ。

「あの…ジークハルト様」

「どうしたんだい?」

「何か香水をつけていますか?」

「え?!」

何故かその言葉に驚く彼。

「何故そんな事を尋ねるんだい?」

「いえ…何でもありません。多分気のせいだと思います」

その時、ジークハルトの顔が青ざめて見えたので私は追求するのをやめた。

「そうか?気の所為…だったんだね?」

「はい、そうです。それにしても驚きました。まさかこんなに早い時間に私の元に訪ねてきてくださるとは思ってもいませんでしたので」

「そうだね…。とりあえず座って話をしないか?」

「ええ、そうですね。どうぞこちらへ」

部屋に備え付けのソファにジークハルトを座って貰い、テーブルを挟んで私も向かい側に座るとすぐに彼が口を開いた。

「昨日、ローゼンミュラー家で火急の用件が持ち上がってね。その為に急いで城に帰らなければならなかったんだ。フィーネに挨拶せずに帰ってしまって本当に悪かったね」

「いいえ。こうして朝早くから来て頂いたのですから、それだけで嬉しいです」

「ありがとう…そう言って貰えると嬉しいよ。それで…実はフィーネに提案があるんだけど…聞いてくれるかい?」

「はい、どの様な提案ですか?」

「うん。来月フィーネは18歳で成人年齢になるけど…世間ではまだまだ18歳と言う年齢では大人と認めてくれない場合が多いんだ。実際僕自身まだまだ社交界では年若いと言う事で…甘く見られているしね…」

「そう…なのですか?」

一体…ジークハルトは何を言おうとしているのだろう?

私の心臓の鼓動が激しくなってくる。

「だからこれは僕からの提案なのだけど…せめてフィーネが20歳になるまでは伯爵に後見人を任せるべきだと思うんだ。結婚も僕達が20歳になった時にしよう」

「え…?」

私はその言葉に耳を疑った―。
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