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第17話 叔父の言い分
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「え?帰った?!」
「ああ、そうだ。この執務室についてすぐの事だった」
「そ、そんな…」
いくら急ぎの用事だからと言って、半月ぶりに婚約者に会えたのに?私に何一つ声を掛けずに…帰った…?
すると、叔父がニヤリと笑みを浮かべた。
「まぁ、彼も18歳になって、自覚が湧いたのではないか?良いではないか。どうせ今年中に2人は結婚するのだろう?そうなれば嫌でもずっと一緒に暮らしていけるのだから」
「私がジークハルト様をイヤになることなど決してありません」
叔父の言い方が気に入らず、強い口調で私は言う。
「それよりも、何故使用人たちに大掃除をさせているのですか?私がここへ戻る為の手伝いを寄越してくれる約束では無かったのですか?」
「ああ…その事だが、やはりフィーネをここへ戻すには見違えた様に綺麗にした場所出迎えたいではないか?だからお前の為に大掃除をさせているのだよ?」
妙に恩着せがましい言い方をする叔父。
「私は一度もそのようなお願いはしておりません。大掃除など必要ありません。一刻も早く手伝いを離れに寄越して下さい。すぐにここへ移りたいのです」
「それはならぬ。私はいわばお前の親代わりのような者だ。明日、必ずフィーネを移してやる。今夜一杯は離れにいてくれ。頼む」
叔父が頭を下げてきた。何故叔父はここまで私を離れに留まらせようとするのだろうか?しかし、使用人を寄越してくれなければ私はどうすることも出来ない。
「わ、分かりました…。明日は必ず使用人を手伝いに寄越してくれるのですね?」
「あ、ああ。そうだ。約束しよう」
叔父はやけに愛想笑いをしながら私を見る。その様子に訝しみながら私は頷いた。
「…分かりました。約束は必ず守って頂きますから…」
「ああ、勿論だ」
それならもうここに用は無い。それどころか、叔父と同じ空気をこれ以上吸うことに我慢出来なかった。
「では…離れに戻ります」
「ああ、気をつけてな」
「…?はい、では失礼対します」
叔父の言葉に違和感を感じながらも、頭を下げると執務室を後にした。
「ジークハルト様…」
離れに戻りながら、ポツリと愛しい婚約者の名を口にした。どうせ今日離れに移動する事が出来なかったのなら、片付けなどやめて彼と一緒に過ごせばよかった。
半月ぶりに会えたと言うのに。
お父様とお母様が生きていた頃はとても幸せだった。お茶会の誘いの招待状や晩餐会の招待状が山の様に届き、エスコート役は優しいジークハルトだった。それなのに両親が突然の馬車事故で亡くなり、叔父家族が城へ来てから私の生活は一転してしまった。婚約者であるジークハルトとは会うこともままならなくなり、否応なしにう離へと追いやられ…色々な物を奪われてきた。私の訴えは聞き入れて貰えず、悔しい想いをしたけれども、18歳になれば、全て解決する…。それを励みに今迄耐えてきたのだ。
「大丈夫、明日になれば…今より状況が改善されるはずよ…」
結局、この日の夜も質素な食事だった…。
そして、私はこの夜何者かに命を狙われる事になる。
その時になって始めて私は理解した。
何故、叔父が私を離れに留まらせようとしたのかを―。
「ああ、そうだ。この執務室についてすぐの事だった」
「そ、そんな…」
いくら急ぎの用事だからと言って、半月ぶりに婚約者に会えたのに?私に何一つ声を掛けずに…帰った…?
すると、叔父がニヤリと笑みを浮かべた。
「まぁ、彼も18歳になって、自覚が湧いたのではないか?良いではないか。どうせ今年中に2人は結婚するのだろう?そうなれば嫌でもずっと一緒に暮らしていけるのだから」
「私がジークハルト様をイヤになることなど決してありません」
叔父の言い方が気に入らず、強い口調で私は言う。
「それよりも、何故使用人たちに大掃除をさせているのですか?私がここへ戻る為の手伝いを寄越してくれる約束では無かったのですか?」
「ああ…その事だが、やはりフィーネをここへ戻すには見違えた様に綺麗にした場所出迎えたいではないか?だからお前の為に大掃除をさせているのだよ?」
妙に恩着せがましい言い方をする叔父。
「私は一度もそのようなお願いはしておりません。大掃除など必要ありません。一刻も早く手伝いを離れに寄越して下さい。すぐにここへ移りたいのです」
「それはならぬ。私はいわばお前の親代わりのような者だ。明日、必ずフィーネを移してやる。今夜一杯は離れにいてくれ。頼む」
叔父が頭を下げてきた。何故叔父はここまで私を離れに留まらせようとするのだろうか?しかし、使用人を寄越してくれなければ私はどうすることも出来ない。
「わ、分かりました…。明日は必ず使用人を手伝いに寄越してくれるのですね?」
「あ、ああ。そうだ。約束しよう」
叔父はやけに愛想笑いをしながら私を見る。その様子に訝しみながら私は頷いた。
「…分かりました。約束は必ず守って頂きますから…」
「ああ、勿論だ」
それならもうここに用は無い。それどころか、叔父と同じ空気をこれ以上吸うことに我慢出来なかった。
「では…離れに戻ります」
「ああ、気をつけてな」
「…?はい、では失礼対します」
叔父の言葉に違和感を感じながらも、頭を下げると執務室を後にした。
「ジークハルト様…」
離れに戻りながら、ポツリと愛しい婚約者の名を口にした。どうせ今日離れに移動する事が出来なかったのなら、片付けなどやめて彼と一緒に過ごせばよかった。
半月ぶりに会えたと言うのに。
お父様とお母様が生きていた頃はとても幸せだった。お茶会の誘いの招待状や晩餐会の招待状が山の様に届き、エスコート役は優しいジークハルトだった。それなのに両親が突然の馬車事故で亡くなり、叔父家族が城へ来てから私の生活は一転してしまった。婚約者であるジークハルトとは会うこともままならなくなり、否応なしにう離へと追いやられ…色々な物を奪われてきた。私の訴えは聞き入れて貰えず、悔しい想いをしたけれども、18歳になれば、全て解決する…。それを励みに今迄耐えてきたのだ。
「大丈夫、明日になれば…今より状況が改善されるはずよ…」
結局、この日の夜も質素な食事だった…。
そして、私はこの夜何者かに命を狙われる事になる。
その時になって始めて私は理解した。
何故、叔父が私を離れに留まらせようとしたのかを―。
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