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第9話 助けに現れたのは
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ホーッ…
ホーッ…
すぐそばでフクロウの無く声が聞こえて来る。すっかり外は夜になり、窓からは青白い月明かりがぼんやりと倉庫の中を照らしている。
「…」
疲労と絶望で私はもう何もする気力も無くなり、扉に寄りかかり床に座り込んでいた。
「あれから…どれくらい時間が経過したのかしら…」
ポツリと呟く。
内心、私はかすかな希望を抱いていた。ひょっとするとヘルマが私の所にやって来るのではないかと。
意地悪な笑みを浮かべながら『どう?これで少しは懲りたかしら?』とでも言って扉を開けてくれるのではないかと思ったのに…。
どうやら今回私がジークハルトに訴えていたことに相当腹を立てたのかもしれない。そしてきっと叔父夫婦にもその話を伝えたはずだ。それでもここから出してくれないと言う事は…きっと全員グルなのだろう。
「怖い…誰か…ジークハルト様…」
再び私の目に恐怖で涙が滲んでくる。それと同時に叔父家族に対して憎しみが湧いてくる。
でも駄目…憎しみを抱いては…。
私はまだ自分がうんと小さい頃に誰かにずっとそう言い聞かされてきた気がする。
誰かに対して強い恨みや憎しみを抱いては駄目だと。
例えどんな理由があったとしても、決してそのような感情を抱いてはいけないと…。
「だ、だけど…こんな目に遭わされても…私は…恨んではいけないの…?」
その時―
アアアア…
まるで地の底から聞こえてくるような苦し気な声がどこからか聞こえて来た。
「!!」
恐怖で全身に鳥肌が立つのが分った。恐る恐る声が聞こえた方角を振り返った時、私は叫びそうになってしまった。
黒い人の形をしたモヤが恐ろしいうめき声を上げながら、こちらへ向かってゆっくりと近付いてきているたのだ。間違いない…!怨霊だ…っ!
アアアアア…
「いやぁ…や、やめて…こ、来ないで…」
いっそのこと恐怖で気を失えればいいのに、人と言う者は真の恐怖を感じると気を失う事が出来ないのかも知れない。
アアアア…
モヤは段々私の方へ近づき、手を伸ばせば今にも触れそうな距離にまで近付いて来た。
「キ…キャアアアアアアアアッ!!」
私が激しく絶叫した時―。
「フィーネ様っ!!」
突然扉が開け放たれ、姿を現したのフットマンであるユリアンだった。
「ユリアンッ!!」
涙でグシャグシャになりながら私は彼の名を叫んだ。
「フィーネ様っ!」
ユリアンは私に駆け寄り、私に迫る黒いモヤの前に立ちはだかると指を開いて右手を悪霊の方に手を向けた。
その瞬間、まばゆい程の光がユリアンの手から放たれた。
ギャアアアーッ!!
耳をつんざくような恐ろしい悲鳴を上げ、怨霊はチリのように消失していった。
ああ…そうだった。
確かユリアンは神聖魔法の使い手だった。
怨霊が消え去ると、ユリアンが私を振り返った。
「大丈夫でしたかっ?!フィーネ様っ!」
そして私の前にひざまずいた。
「あ、ありがとう…。助けに来てくれて…」
怖い。
まだ先程の恐怖が身体に残っている。
自分の両肩を抱きしめ、ガタガタ震えながらもなんとかユリアンにお礼を述べた。
「いいえ…でも…間に合って…フィーネ様を助ける事が出来て良かったです」
ユリアンは笑みを浮かべて私を見た。
「立てますか?フィーネ様」
右手を差し伸べられたけれども、腰が抜けてしまったのか立つことが出来ない。
「だ…駄目…みたい…」
引きつった笑みを浮かべてユリアンを見ると、彼は突然私に背を向けてしゃがんだ。
「な、何のマネなの…?」
するとユリアンが言った。
「失礼を承知で申し上げます。フィーネ様。私の背中におぶさって頂けますか?」
「え?で、でも…いいの?」
「はい」
ユリアンは私の方を振り返ると笑みを浮かべた。
「ありがとう、ユリアン」
ユリアンの背中に身体を預けると、彼は私の両ひざを抱えて立ち上がった。
「では戻りましょう。離れの城へ」
「ええ」
そしてユリアンは私を背負うと離れの城へ向けて歩き始めた。
それは…とても大きな満月の夜の出来事だった―。
ホーッ…
すぐそばでフクロウの無く声が聞こえて来る。すっかり外は夜になり、窓からは青白い月明かりがぼんやりと倉庫の中を照らしている。
「…」
疲労と絶望で私はもう何もする気力も無くなり、扉に寄りかかり床に座り込んでいた。
「あれから…どれくらい時間が経過したのかしら…」
ポツリと呟く。
内心、私はかすかな希望を抱いていた。ひょっとするとヘルマが私の所にやって来るのではないかと。
意地悪な笑みを浮かべながら『どう?これで少しは懲りたかしら?』とでも言って扉を開けてくれるのではないかと思ったのに…。
どうやら今回私がジークハルトに訴えていたことに相当腹を立てたのかもしれない。そしてきっと叔父夫婦にもその話を伝えたはずだ。それでもここから出してくれないと言う事は…きっと全員グルなのだろう。
「怖い…誰か…ジークハルト様…」
再び私の目に恐怖で涙が滲んでくる。それと同時に叔父家族に対して憎しみが湧いてくる。
でも駄目…憎しみを抱いては…。
私はまだ自分がうんと小さい頃に誰かにずっとそう言い聞かされてきた気がする。
誰かに対して強い恨みや憎しみを抱いては駄目だと。
例えどんな理由があったとしても、決してそのような感情を抱いてはいけないと…。
「だ、だけど…こんな目に遭わされても…私は…恨んではいけないの…?」
その時―
アアアア…
まるで地の底から聞こえてくるような苦し気な声がどこからか聞こえて来た。
「!!」
恐怖で全身に鳥肌が立つのが分った。恐る恐る声が聞こえた方角を振り返った時、私は叫びそうになってしまった。
黒い人の形をしたモヤが恐ろしいうめき声を上げながら、こちらへ向かってゆっくりと近付いてきているたのだ。間違いない…!怨霊だ…っ!
アアアアア…
「いやぁ…や、やめて…こ、来ないで…」
いっそのこと恐怖で気を失えればいいのに、人と言う者は真の恐怖を感じると気を失う事が出来ないのかも知れない。
アアアア…
モヤは段々私の方へ近づき、手を伸ばせば今にも触れそうな距離にまで近付いて来た。
「キ…キャアアアアアアアアッ!!」
私が激しく絶叫した時―。
「フィーネ様っ!!」
突然扉が開け放たれ、姿を現したのフットマンであるユリアンだった。
「ユリアンッ!!」
涙でグシャグシャになりながら私は彼の名を叫んだ。
「フィーネ様っ!」
ユリアンは私に駆け寄り、私に迫る黒いモヤの前に立ちはだかると指を開いて右手を悪霊の方に手を向けた。
その瞬間、まばゆい程の光がユリアンの手から放たれた。
ギャアアアーッ!!
耳をつんざくような恐ろしい悲鳴を上げ、怨霊はチリのように消失していった。
ああ…そうだった。
確かユリアンは神聖魔法の使い手だった。
怨霊が消え去ると、ユリアンが私を振り返った。
「大丈夫でしたかっ?!フィーネ様っ!」
そして私の前にひざまずいた。
「あ、ありがとう…。助けに来てくれて…」
怖い。
まだ先程の恐怖が身体に残っている。
自分の両肩を抱きしめ、ガタガタ震えながらもなんとかユリアンにお礼を述べた。
「いいえ…でも…間に合って…フィーネ様を助ける事が出来て良かったです」
ユリアンは笑みを浮かべて私を見た。
「立てますか?フィーネ様」
右手を差し伸べられたけれども、腰が抜けてしまったのか立つことが出来ない。
「だ…駄目…みたい…」
引きつった笑みを浮かべてユリアンを見ると、彼は突然私に背を向けてしゃがんだ。
「な、何のマネなの…?」
するとユリアンが言った。
「失礼を承知で申し上げます。フィーネ様。私の背中におぶさって頂けますか?」
「え?で、でも…いいの?」
「はい」
ユリアンは私の方を振り返ると笑みを浮かべた。
「ありがとう、ユリアン」
ユリアンの背中に身体を預けると、彼は私の両ひざを抱えて立ち上がった。
「では戻りましょう。離れの城へ」
「ええ」
そしてユリアンは私を背負うと離れの城へ向けて歩き始めた。
それは…とても大きな満月の夜の出来事だった―。
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