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第6話 私と婚約者
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「お、覚えてなさいっ!フィーネッ!」
「落ち着きなさいっ!ジークハルト様がいらしているでしょうっ?!」
背後で私の名を憎々し気に叫ぶヘルマとそれを宥めるバルバラ夫人の声を聞きながら私とジークハルトはサロンを出た。
「それじゃ、ガゼボにでも行って話をしないかい?」
ジークハルトの提案に私も乗った。
「ええ、それがいいわ。あそこなら多分誰にも邪魔されないと思うから」
「…?そうかい?なら行こうか」
そして私とジークハルトは2人で並んで庭園へ向かった―。
****
空は雲一つない青空が広がり、初夏の心地よい風が木々を揺らしている。
ジークハルトは庭園にでるとすぐに私に質問してきた。
「フィーネ。廊下を歩いている時に気付いたのだけど、何だか使用人たちの君に対する態度が妙に感じたんだ」
ガゼボに向かって歩きながらジークハルトは私を見た。
「そう…やっぱり分った?半年前に両親が馬車の事故で亡くなって…叔父家族がこの城に住み始めてからは今までここで勤めていた使用人たちの総入れ替えが行われたのよ」
「何だって?どうしてそんな事を…?!」
「それは叔父家族が私をこの屋敷から孤立させる為よ。私から味方を全員奪いたかったのでしょうね…」
私はポツリと言った。
「でも確かに言われてみれば使用人の顔ぶれ…1人も見た事が無かったな…。」
「それに使用人の半分は叔父家族の屋敷で働いていた使用人達なのよ。だからもとより彼らは全員叔父家族の味方なのよ」
「それにしても酷い話じゃないか?この屋敷の正当な後継者はフィーネ、君なのに…離れで暮らしているなんて。それじゃ以前本館で使っていた君の部屋は今どうなってるんだい?」
その時、丁度ガゼボに到着した。
「まずは座ってから説明するわ」
「そうだね」
2人でガゼボに入り、隣同士に座ると話の続きをする事にした。
「私の部屋は…今、ヘルマが使っているのよ。それにお父様の執務室は叔父に、お母様の部屋は叔母に占拠されてしまったわ…。もう私は自由に出入りする事が出来なくなってしまったのよ…」
「フィーネ…。可哀相に…」
ジークハルトがそっと私の肩を抱き寄せた。
「それだけじゃないわ。私には面倒を見てくれる専属メイドが1人もいなくなってしまったの。洗濯と掃除はかろうじて面倒見て貰っているけれども、着替えや、お茶の支度は一切見て貰えないから自分で洗濯室へ行って洗濯済みの衣類を部屋に持って行ってるの。それに厨房にお茶を貰いに行っても誰も用意してくれないから自分でお湯を沸かしてお茶を入れているわ」
そんな状況なので、両親が亡くなってからは1日3回の食事とお茶のみとなってしまった。そして私に届いていたティーパーティーの招待状までヘルマに奪われるようになってしまった。
「何て酷い話なんだ…!」
私の肩を抱く手に力がこもる。
「叔父様は私が18歳の成人の誕生日を祝うまでは私の後見人となって、アドラー家を盛り立てると言っているけれど…実際は違うわ。3人でお金を湯水のように使っているのよ。このままでは…アドラー家は破滅してしまうかもしれない…」
そう思うとどうしようもなく悲しくなり、私は顔を覆い、涙を流した。
「フィーネ。僕はもう誕生日が来て18歳になっているけれども、フィーネの18歳の誕生日までは後半年ある。だけど、誕生日が来たらすぐに結婚式を挙げよう?うちの家紋のローゼンミュラー家とアドラー家が手を結べ、簡単にあの叔父家族を追い払う事が出来る。それまで…だから頑張ろう?」
ジークハルトが私を慰めてくれる。
「え、ええ…。ジークハルト様…」
そう、半年…後半年だけ我慢すれば…今の生活から抜け出せるのだ…。
けれど、その約束が果たされる事は無かった―。
「落ち着きなさいっ!ジークハルト様がいらしているでしょうっ?!」
背後で私の名を憎々し気に叫ぶヘルマとそれを宥めるバルバラ夫人の声を聞きながら私とジークハルトはサロンを出た。
「それじゃ、ガゼボにでも行って話をしないかい?」
ジークハルトの提案に私も乗った。
「ええ、それがいいわ。あそこなら多分誰にも邪魔されないと思うから」
「…?そうかい?なら行こうか」
そして私とジークハルトは2人で並んで庭園へ向かった―。
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空は雲一つない青空が広がり、初夏の心地よい風が木々を揺らしている。
ジークハルトは庭園にでるとすぐに私に質問してきた。
「フィーネ。廊下を歩いている時に気付いたのだけど、何だか使用人たちの君に対する態度が妙に感じたんだ」
ガゼボに向かって歩きながらジークハルトは私を見た。
「そう…やっぱり分った?半年前に両親が馬車の事故で亡くなって…叔父家族がこの城に住み始めてからは今までここで勤めていた使用人たちの総入れ替えが行われたのよ」
「何だって?どうしてそんな事を…?!」
「それは叔父家族が私をこの屋敷から孤立させる為よ。私から味方を全員奪いたかったのでしょうね…」
私はポツリと言った。
「でも確かに言われてみれば使用人の顔ぶれ…1人も見た事が無かったな…。」
「それに使用人の半分は叔父家族の屋敷で働いていた使用人達なのよ。だからもとより彼らは全員叔父家族の味方なのよ」
「それにしても酷い話じゃないか?この屋敷の正当な後継者はフィーネ、君なのに…離れで暮らしているなんて。それじゃ以前本館で使っていた君の部屋は今どうなってるんだい?」
その時、丁度ガゼボに到着した。
「まずは座ってから説明するわ」
「そうだね」
2人でガゼボに入り、隣同士に座ると話の続きをする事にした。
「私の部屋は…今、ヘルマが使っているのよ。それにお父様の執務室は叔父に、お母様の部屋は叔母に占拠されてしまったわ…。もう私は自由に出入りする事が出来なくなってしまったのよ…」
「フィーネ…。可哀相に…」
ジークハルトがそっと私の肩を抱き寄せた。
「それだけじゃないわ。私には面倒を見てくれる専属メイドが1人もいなくなってしまったの。洗濯と掃除はかろうじて面倒見て貰っているけれども、着替えや、お茶の支度は一切見て貰えないから自分で洗濯室へ行って洗濯済みの衣類を部屋に持って行ってるの。それに厨房にお茶を貰いに行っても誰も用意してくれないから自分でお湯を沸かしてお茶を入れているわ」
そんな状況なので、両親が亡くなってからは1日3回の食事とお茶のみとなってしまった。そして私に届いていたティーパーティーの招待状までヘルマに奪われるようになってしまった。
「何て酷い話なんだ…!」
私の肩を抱く手に力がこもる。
「叔父様は私が18歳の成人の誕生日を祝うまでは私の後見人となって、アドラー家を盛り立てると言っているけれど…実際は違うわ。3人でお金を湯水のように使っているのよ。このままでは…アドラー家は破滅してしまうかもしれない…」
そう思うとどうしようもなく悲しくなり、私は顔を覆い、涙を流した。
「フィーネ。僕はもう誕生日が来て18歳になっているけれども、フィーネの18歳の誕生日までは後半年ある。だけど、誕生日が来たらすぐに結婚式を挙げよう?うちの家紋のローゼンミュラー家とアドラー家が手を結べ、簡単にあの叔父家族を追い払う事が出来る。それまで…だから頑張ろう?」
ジークハルトが私を慰めてくれる。
「え、ええ…。ジークハルト様…」
そう、半年…後半年だけ我慢すれば…今の生活から抜け出せるのだ…。
けれど、その約束が果たされる事は無かった―。
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