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第119話 プロポーズとその後の未来 <完>
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午後8時―
私とデリクは今、2人でベルモント家の中庭のベンチに座り、我が家自慢のライトアップされた美しい噴水を眺めていた。
あの後、伯爵は夫人との離婚協議に入る為にこれから弁護士事務所へ行くという事で先に帰っていた。ただ、デリクは私とどうしても2人きりで話がしたいという事でここに残った。
そこで私は彼を連れて2人で中庭へとやってきていたのだ。
「本当に美しい噴水だね」
噴水を見つめながら隣に座るデリクが話しかけてきた。
「ええ。そうよ。言った通りでしょう?」
私は笑みを浮かべながらデリクを見た。
「うん、こうやって2人で夜空の下に一緒にいると、前世の事を思い出すよ。あの頃も僕達がデートするのは夜が多かったよね」
デリクが私の手をそっと握りしめながら言った。
「そうね…2人ともとても忙しかったから、夜しか会えなかったものね」
「でもアンジェラは今だって忙しいだろう?明日だって店の準備があって忙しいはずなのに…僕の我儘を聞いてくれて、今こうして付き合ってくれているのだから」
「それはそうよ。だって貴方は私の大切な婚約者だもの」
私は笑みを浮かべながらデリクを見た。
するとデリクは神妙な顔つきになると尋ねてきた。
「でも…アンジェラ。本当に婚約者の相手は僕で良かったのかな?伯爵の言う通り、コンラート家の評判はガタ落ちするのは避けられないと思う。なのに…」
「何言ってるの?そんな事関係ないわ。私は貴方が好きだから…婚約を続けるのよ?」
「…ありがとう、アンジェラ」
そしてデリクは私をじっと見つめると言った。
「アンジェラ…学園を卒業したら、僕と結婚してくれるかな?」
「え?」
まさかの突然のプロポーズに驚いた。
「確かに卒業してもアンジェラはまだ18歳だし、結婚するのは早いのかもしれないけれど…前世で一緒になれなかった分、今世では少しでも長く君と一緒にいたいんだ。アンジェラはこれから店のオーナーとして忙しくなるかもしれないけれど…僕は君に妻としての役割を色々強制することなんてしないよ。それどころか、君の店をこれから色々手伝って上げたいとも考えている。だから…卒業後、どうか僕と結婚して下さい」
デリクは緊張の為か、一気に話し…そして私に頭を下げてきた。
勿論、私の返事は決まっている。
「ええ、喜んでお受けします」
私は笑みを浮かべた。
「アンジェラ…」
そして、私達は美しい夜空の下でキスを交わした―。
****
翌日―
ビラの効果と、前日のパメラとニコラスの宣伝効果?もあり、私の店は大盛況だった。お店には多くのお客様が押し寄せ、番号札を配って入場制限をかけなければならない程だった。
事前に納品しておいた商品は午後4時で売り切れてしまい、売り切れの張り紙をしなければならない羽目になってしまった。
翌日は前日の2倍の品物を納品して売りに出してしまったけれども、これもまたたく間に売り切れてしまい、午後3時で品切れになってしまった。
その後も私の店の評判は若い女性達の間で急激に広がり、とてもではないが1人で手が回らなくなってきた。
そこでやむを得ず、翌月からは暫くの間は月に2回だけの営業に切り替えることでお店を続けることにしたのだった―。
そして今、私は自室でペリーヌ、シビル、グレタ、イレーヌにアシスタントをしてもらいながら商品を作っていた。
「やっぱりアンジェラって凄いわよね。オープンしてたった3ヶ月で、今や知る人ぞ知る有名店にしてしまったのだから」
ペリーヌが布にハサミを入れながら私に声を掛けてきた。
「でも私は絶対にアンジェラさんの店は売れると思っていました!」
シビルは型紙に印付けをしながら言う。
「ええ、売れて当然ですよ。だってこんなに素敵な品物なんですから」
グレタは値札を付けている。
「アンジェラさん…でも本当にあんなに沢山アルバイト代貰っていいんですか?」
パッチワークをしながらシビルが申し訳なさげに尋ねてきた。
「何言ってるの?当然じゃない。だって貴女達の助けがなければお店は回っていかないもの。でも、ここまで話題になれたのはある意味パメラとニコラスのお陰かもしれないわ」
「そうね。あの2人はアンジェラを陥れるつもりだったのかもしれないけれど…今のアンジェラの店の反響ぶりを知ればさぞかし悔しがるでしょうね」
ペリーヌの言葉にシビルが続いた。
「でも、パメラもニコラスも…それに元伯爵夫人も全員刑務所に入っているから知らないんじゃ無いですか?」
「そうね。私の邪魔さえしなければ刑務所に入ることも無かったのにね」
でもこれでパメラもニコラスも…そしてニコラスの母親も仮に刑務所からでてこれたとしても、二度と私に手は出して来れないだろう。
何しろパメラは出所した直後に再び犯罪を犯し、ニコラスとニコラスの母親は窃盗及び、デリクへの殴打事件で驚くことに殺人未遂罪が適用されたのだから。
3人共恐らく最低でも10年は絶対に出所出来ないと聞かされた。
…尤もここまで3人の罪が重くなったのは…デリクが友人の弁護士に協力してもらった…と言う事は私とデリクだけの秘密だ。
そしてそのデリクは―。
「皆、お待たせ~。お茶を入れてきたから休憩しないかい?」
開け放たれた部屋にデリクがお茶とお茶菓子が乗ったワゴンを押して入ってきた。
「ありがとう、デリク」
私は笑顔でデリクを迎えた。
「いいんだよ。男の僕はこれくらいしか皆の役に立てないからね」
デリクはお茶を淹れながら返事をする。
「またまた~皆の、じゃなくてアンジェラの、間違いじゃないですか?」
ペリーヌがからかうように言う。
「ま、まぁ…そ、それはそうかも知れないね…」
デリクは顔を赤らめながら返事をする。
「それじゃ、皆。デリクの淹れてくれたお茶で休憩しましょう。そしたらまた作業を始めるわよ?何しろ私達は…」
「それほど暇人じゃないから…だろう?」
「ええ、その通りよ」
そしてデリクの言葉に私は笑みを浮かべて頷いた。
****
それから数年後―
デリクと結婚して一男一女をもうけた私は、今ではすっかり世の働く女性たちの憧れの女性実業家となり、幸せで充実した日々を過ごしている。
もしかすると、私の今の幸せはパメラとニコラスのお陰かもしれない。
今は、ほんの少しだけ彼等に感謝している。
何故ならあの2人の存在があったからこそ、私はデリクと結ばれ、お店も有名にすることが出来たのだから―。
<完>
私とデリクは今、2人でベルモント家の中庭のベンチに座り、我が家自慢のライトアップされた美しい噴水を眺めていた。
あの後、伯爵は夫人との離婚協議に入る為にこれから弁護士事務所へ行くという事で先に帰っていた。ただ、デリクは私とどうしても2人きりで話がしたいという事でここに残った。
そこで私は彼を連れて2人で中庭へとやってきていたのだ。
「本当に美しい噴水だね」
噴水を見つめながら隣に座るデリクが話しかけてきた。
「ええ。そうよ。言った通りでしょう?」
私は笑みを浮かべながらデリクを見た。
「うん、こうやって2人で夜空の下に一緒にいると、前世の事を思い出すよ。あの頃も僕達がデートするのは夜が多かったよね」
デリクが私の手をそっと握りしめながら言った。
「そうね…2人ともとても忙しかったから、夜しか会えなかったものね」
「でもアンジェラは今だって忙しいだろう?明日だって店の準備があって忙しいはずなのに…僕の我儘を聞いてくれて、今こうして付き合ってくれているのだから」
「それはそうよ。だって貴方は私の大切な婚約者だもの」
私は笑みを浮かべながらデリクを見た。
するとデリクは神妙な顔つきになると尋ねてきた。
「でも…アンジェラ。本当に婚約者の相手は僕で良かったのかな?伯爵の言う通り、コンラート家の評判はガタ落ちするのは避けられないと思う。なのに…」
「何言ってるの?そんな事関係ないわ。私は貴方が好きだから…婚約を続けるのよ?」
「…ありがとう、アンジェラ」
そしてデリクは私をじっと見つめると言った。
「アンジェラ…学園を卒業したら、僕と結婚してくれるかな?」
「え?」
まさかの突然のプロポーズに驚いた。
「確かに卒業してもアンジェラはまだ18歳だし、結婚するのは早いのかもしれないけれど…前世で一緒になれなかった分、今世では少しでも長く君と一緒にいたいんだ。アンジェラはこれから店のオーナーとして忙しくなるかもしれないけれど…僕は君に妻としての役割を色々強制することなんてしないよ。それどころか、君の店をこれから色々手伝って上げたいとも考えている。だから…卒業後、どうか僕と結婚して下さい」
デリクは緊張の為か、一気に話し…そして私に頭を下げてきた。
勿論、私の返事は決まっている。
「ええ、喜んでお受けします」
私は笑みを浮かべた。
「アンジェラ…」
そして、私達は美しい夜空の下でキスを交わした―。
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翌日―
ビラの効果と、前日のパメラとニコラスの宣伝効果?もあり、私の店は大盛況だった。お店には多くのお客様が押し寄せ、番号札を配って入場制限をかけなければならない程だった。
事前に納品しておいた商品は午後4時で売り切れてしまい、売り切れの張り紙をしなければならない羽目になってしまった。
翌日は前日の2倍の品物を納品して売りに出してしまったけれども、これもまたたく間に売り切れてしまい、午後3時で品切れになってしまった。
その後も私の店の評判は若い女性達の間で急激に広がり、とてもではないが1人で手が回らなくなってきた。
そこでやむを得ず、翌月からは暫くの間は月に2回だけの営業に切り替えることでお店を続けることにしたのだった―。
そして今、私は自室でペリーヌ、シビル、グレタ、イレーヌにアシスタントをしてもらいながら商品を作っていた。
「やっぱりアンジェラって凄いわよね。オープンしてたった3ヶ月で、今や知る人ぞ知る有名店にしてしまったのだから」
ペリーヌが布にハサミを入れながら私に声を掛けてきた。
「でも私は絶対にアンジェラさんの店は売れると思っていました!」
シビルは型紙に印付けをしながら言う。
「ええ、売れて当然ですよ。だってこんなに素敵な品物なんですから」
グレタは値札を付けている。
「アンジェラさん…でも本当にあんなに沢山アルバイト代貰っていいんですか?」
パッチワークをしながらシビルが申し訳なさげに尋ねてきた。
「何言ってるの?当然じゃない。だって貴女達の助けがなければお店は回っていかないもの。でも、ここまで話題になれたのはある意味パメラとニコラスのお陰かもしれないわ」
「そうね。あの2人はアンジェラを陥れるつもりだったのかもしれないけれど…今のアンジェラの店の反響ぶりを知ればさぞかし悔しがるでしょうね」
ペリーヌの言葉にシビルが続いた。
「でも、パメラもニコラスも…それに元伯爵夫人も全員刑務所に入っているから知らないんじゃ無いですか?」
「そうね。私の邪魔さえしなければ刑務所に入ることも無かったのにね」
でもこれでパメラもニコラスも…そしてニコラスの母親も仮に刑務所からでてこれたとしても、二度と私に手は出して来れないだろう。
何しろパメラは出所した直後に再び犯罪を犯し、ニコラスとニコラスの母親は窃盗及び、デリクへの殴打事件で驚くことに殺人未遂罪が適用されたのだから。
3人共恐らく最低でも10年は絶対に出所出来ないと聞かされた。
…尤もここまで3人の罪が重くなったのは…デリクが友人の弁護士に協力してもらった…と言う事は私とデリクだけの秘密だ。
そしてそのデリクは―。
「皆、お待たせ~。お茶を入れてきたから休憩しないかい?」
開け放たれた部屋にデリクがお茶とお茶菓子が乗ったワゴンを押して入ってきた。
「ありがとう、デリク」
私は笑顔でデリクを迎えた。
「いいんだよ。男の僕はこれくらいしか皆の役に立てないからね」
デリクはお茶を淹れながら返事をする。
「またまた~皆の、じゃなくてアンジェラの、間違いじゃないですか?」
ペリーヌがからかうように言う。
「ま、まぁ…そ、それはそうかも知れないね…」
デリクは顔を赤らめながら返事をする。
「それじゃ、皆。デリクの淹れてくれたお茶で休憩しましょう。そしたらまた作業を始めるわよ?何しろ私達は…」
「それほど暇人じゃないから…だろう?」
「ええ、その通りよ」
そしてデリクの言葉に私は笑みを浮かべて頷いた。
****
それから数年後―
デリクと結婚して一男一女をもうけた私は、今ではすっかり世の働く女性たちの憧れの女性実業家となり、幸せで充実した日々を過ごしている。
もしかすると、私の今の幸せはパメラとニコラスのお陰かもしれない。
今は、ほんの少しだけ彼等に感謝している。
何故ならあの2人の存在があったからこそ、私はデリクと結ばれ、お店も有名にすることが出来たのだから―。
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