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第118話 伯爵夫人逮捕の理由
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「あの…伯爵夫人まで逮捕されたとは、一体どういう事なのでしょうか?」
私が尋ねると、デリクが手を上げた。
「それは、僕の方から話をしてもいいかな…?皆さんも宜しいでしょうか?」
デリクは私を見た後、父、母、兄に視線を移す。
「ええ。私共はそれでも構いませんが…」
「そうですか。では報告致します」
コホンと一度だけデリクは咳払いすると語り始めた。
「実は、この間僕が何者かに襲撃された事件ですが…犯人はコンラート夫人が雇った暴漢だったことが判明したのです」
「「「「えっ?!」」」」
あまりの話に、私達家族全員同時に声を上げた。
「ま、まさか…その話、本当なのですか?」
父が尋ねると伯爵が項垂れた。
「ああ…そうなのだよ。私は…少しも妻の心の内を知らなかった。ニコラスを切り捨てる事が出来なかったと言う事を…」
「コンラート夫人はニコラスを追放して、僕を養子として受け入れましたが…心の中では僕の事を酷く憎んでいたそうです。自分の子供を追い出し、遠縁とはいえ所詮赤の他人を受け入れる事が酷く苦痛だったそうです。それにこの事も後から分った事ですが…ニコラスとパメラの交際を陰で応援もしていたそうですね」
「そ、そんな…それでは私達の前で見せたのは…全て夫人の演技だったなんて…」
母はよほどショックだったのだろう。顔がすっかり青ざめている。私もショックではあったけれども、それ以上に怒りの方が勝っていた。まさか…私の大切なデリクを危険な目に遭わせたなんて…。
「我々には秘密で拘留中のパメラにも面会に行っていたそうだし、勝手に屋敷の金に手を付けて…ニコラスとパメラの為に住む場所まで手配していたとは…まさか妻がそこまで行動的だとは思いもしていなかったよ…」
伯爵は深いため息をついた。
「それでは、明日…あの家に突入すると言う話は?」
デリクに尋ねると彼は苦笑した。
「勿論、無くなったよ。何しろ全員逮捕されてしまったのだから」
「それだけじゃない。アンジェラ、君は明日自分の店をオープンさせるそうじゃないか。その商品をニコラスとパメラに盗まれた挙句…今日勝手に売りさばかれていたのだろう?全く…何て恐ろしい事を…。しかもその為の宣伝のビラは妻が印刷会社に事前に手配していたそうだし…」
すっかり憔悴しきった様子で語る伯爵はたった1日ですっかり老け込んでしまったように見えた。
「私は明日…警察から話を聞かせて貰いたいと言われているが…もう、こうなった以上…妻とは離婚だ。ニコラスは勘当だし…もうこれであの2人とは完全に終わりにするつもりだよ」
すると兄が尋ねた。
「ところで、デリクさんを襲った暴漢はどうなったのですか?」
「ああ、その人物も逮捕されたよ。何でも酒場の常連客で金に困っていると愚痴を言っている所を妻が偶然耳にし、金を雇って襲わせたらしい。襲撃方法は指定していなかったそうだから、いきなり背後からデリクを棒で頭を殴りつけたという話を聞かされた時はかなり焦ったそうだ」
「そうですか。でも…下手をすれば命に関わっていたかもしれないんですよね?」
私はつい、デリクの事を思って言ってしまった。
「ああ、アンジェラ嬢の言う通りだよ。一歩間違えれば大変だった。本当に申し訳無いことをしてしまった。私から謝罪させてくれないか?」
「い、いえ。すみません。こちらこそ生意気な事を申し上げてしまいました」
伯爵があまりに低姿勢だったので、私は即座に謝罪した。
「もう、これで我が家の評判は地に落ちてしまったよ。身内から2人も犯罪者を出してしまったのだから…。それでどうだろう…?コンラート家の評判は社交界で一気に悪くなると思う。デリクとアンジェラ嬢の婚約の話をこのまま続けてもいいのか考えあぐねているのだが…」
すると父が言った。
「私はアンジェラの意思に任せたいと思っています」
「私もですわ」
「勿論僕もです」
母の後に兄も続いた。
「では、アンジェラ嬢に尋ねよう。どうする?デリクとの婚約を解消するか、続けるか…」
「私は…」
勿論、私の答えは決まっている―。
私が尋ねると、デリクが手を上げた。
「それは、僕の方から話をしてもいいかな…?皆さんも宜しいでしょうか?」
デリクは私を見た後、父、母、兄に視線を移す。
「ええ。私共はそれでも構いませんが…」
「そうですか。では報告致します」
コホンと一度だけデリクは咳払いすると語り始めた。
「実は、この間僕が何者かに襲撃された事件ですが…犯人はコンラート夫人が雇った暴漢だったことが判明したのです」
「「「「えっ?!」」」」
あまりの話に、私達家族全員同時に声を上げた。
「ま、まさか…その話、本当なのですか?」
父が尋ねると伯爵が項垂れた。
「ああ…そうなのだよ。私は…少しも妻の心の内を知らなかった。ニコラスを切り捨てる事が出来なかったと言う事を…」
「コンラート夫人はニコラスを追放して、僕を養子として受け入れましたが…心の中では僕の事を酷く憎んでいたそうです。自分の子供を追い出し、遠縁とはいえ所詮赤の他人を受け入れる事が酷く苦痛だったそうです。それにこの事も後から分った事ですが…ニコラスとパメラの交際を陰で応援もしていたそうですね」
「そ、そんな…それでは私達の前で見せたのは…全て夫人の演技だったなんて…」
母はよほどショックだったのだろう。顔がすっかり青ざめている。私もショックではあったけれども、それ以上に怒りの方が勝っていた。まさか…私の大切なデリクを危険な目に遭わせたなんて…。
「我々には秘密で拘留中のパメラにも面会に行っていたそうだし、勝手に屋敷の金に手を付けて…ニコラスとパメラの為に住む場所まで手配していたとは…まさか妻がそこまで行動的だとは思いもしていなかったよ…」
伯爵は深いため息をついた。
「それでは、明日…あの家に突入すると言う話は?」
デリクに尋ねると彼は苦笑した。
「勿論、無くなったよ。何しろ全員逮捕されてしまったのだから」
「それだけじゃない。アンジェラ、君は明日自分の店をオープンさせるそうじゃないか。その商品をニコラスとパメラに盗まれた挙句…今日勝手に売りさばかれていたのだろう?全く…何て恐ろしい事を…。しかもその為の宣伝のビラは妻が印刷会社に事前に手配していたそうだし…」
すっかり憔悴しきった様子で語る伯爵はたった1日ですっかり老け込んでしまったように見えた。
「私は明日…警察から話を聞かせて貰いたいと言われているが…もう、こうなった以上…妻とは離婚だ。ニコラスは勘当だし…もうこれであの2人とは完全に終わりにするつもりだよ」
すると兄が尋ねた。
「ところで、デリクさんを襲った暴漢はどうなったのですか?」
「ああ、その人物も逮捕されたよ。何でも酒場の常連客で金に困っていると愚痴を言っている所を妻が偶然耳にし、金を雇って襲わせたらしい。襲撃方法は指定していなかったそうだから、いきなり背後からデリクを棒で頭を殴りつけたという話を聞かされた時はかなり焦ったそうだ」
「そうですか。でも…下手をすれば命に関わっていたかもしれないんですよね?」
私はつい、デリクの事を思って言ってしまった。
「ああ、アンジェラ嬢の言う通りだよ。一歩間違えれば大変だった。本当に申し訳無いことをしてしまった。私から謝罪させてくれないか?」
「い、いえ。すみません。こちらこそ生意気な事を申し上げてしまいました」
伯爵があまりに低姿勢だったので、私は即座に謝罪した。
「もう、これで我が家の評判は地に落ちてしまったよ。身内から2人も犯罪者を出してしまったのだから…。それでどうだろう…?コンラート家の評判は社交界で一気に悪くなると思う。デリクとアンジェラ嬢の婚約の話をこのまま続けてもいいのか考えあぐねているのだが…」
すると父が言った。
「私はアンジェラの意思に任せたいと思っています」
「私もですわ」
「勿論僕もです」
母の後に兄も続いた。
「では、アンジェラ嬢に尋ねよう。どうする?デリクとの婚約を解消するか、続けるか…」
「私は…」
勿論、私の答えは決まっている―。
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