上 下
116 / 119

第116話 きっと明日は大盛況

しおりを挟む
 パメラとニコラスが警察の馬車に乗せられて走り去って行くと、私はジムさんにお礼を述べた。

「ありがとう、ジムさん。警察を呼んできてくれて」

「いいえ、アンジェラ様のお役に立てて光栄です。それでは私は一旦ここで失礼させて頂きます」

ジムさんは頭を下げると、立ち去った。彼が去ると、次に私は駆けつけてきてくれたクラスメイト達に声を掛けた。

「皆、ありがとう。まさか来てくれるとは思わなかったわ。何てお礼を言えばいいのか…。本当にありがとう」

私は20名程のクラスメイト達に頭を下げた。

そう…クラスメイト達が駆けつけてきてくれるかどうかは…私の賭けだった。
ひょっとして1人もここへは来てくれない可能性があったけれども、私はクラスメイト達を信じた。
そして、女子学生たちは…全員来てくれたのだ。

するとクラス委員を務めている女子生徒が一歩進み出てくると私に言った。

「そんなのは当然じゃない?こんなに素晴らしい手作り品を私達にプレゼントしてくれたんだから」

彼女は私がプレゼントした、がまぐちポーチを手に笑みを浮かべた。
他のクラスメイト達もその言葉に頷く。

すると今迄呆気に取られていたお客様が私に声を掛けてきた。

「あの…本当にここに並んでいる品物も、あの人達が持っているのも全て貴女が1人で作ったのですか?」

「はい、そうです。でもこちらに並んでいる品物は…売りに出すほどの作品では無いのでお恥ずかしい限りです」

頭を下げると別のお客様が私に言った。

「そんな!ここにある品物だって…本当に素敵です!それなのに恥ずかしいなんて…絶対に自信を持って売るべきです!」

「本当に1人だけで作ったなんて…信じられません。こんなに沢山…」

そこで私はお客様達に言った。

「皆様にはご迷惑と、お見苦しい場面を見せてしまいまして、本当に申し訳ございませんでした。どうぞこれらの品物は私からの迷惑料として受け取って下さい」

するとお客様達が目を見開いて私を見た。

「ほ、本当に?!本当貰ってもいいの?!」

「嘘…信じられないわ…」

「貴女は…本当に先程の女とは比べ物にならない位、良い方ね」

「ええ。自分の商品を盗まれただけでなく、目の前で売りさばかれそうになっているのに冷静な態度を取れるのだから」

私はこの言葉に、自分の作戦が成功したと確証を得た。
まさに…これこそが私の狙いだったのだから。

ここに来てくれたお客達は、必ず私の常連客になってくれるはず。だからこそ、あの場で私はパメラや共犯者のニコラスに対して言いたい事は山程あったけれどもグッとこらえたのだ。
少しでも新規のお客様達が私と言う人間に対しての心象を良くする為に。
そして私の代わりにクラスメイト達がパメラを追い詰めてくれたのだ。

すると今まで事の成り行きを黙って見届けていたペリーヌがポケットから私のお店のビラを取り出すとお客様達に見せた。

「皆さん。こちらにいるアンジェラのお店が明日、10時にオープンします。是非足を運んで下さい!」

するとあちこちで騒ぎが起きた。

「あ!このビラ…昨日貰ったビラだわ」

「え?見せて見せて!」

「まぁ…『アンジュ』と言う名前のお店なのね?素敵だわ…」


終いにクラスメイト達まで巻き込み、噴水前広場は大賑わいになった。


そんな彼女たちの様子を見つめながらペリーヌが声を掛けてきた。

「やったわね、アンジェラ。宣伝効果、バッチリだったじゃない」

「ええ、そうね。こんなにうまくいくとは思わなかったわ」

「流石はアンジェラさんです。パメラの1枚も2枚も上手ですね」

グレタが感心したように言う。

「パメラは墓穴を掘っただけでなく、アンジェラさんの店の宣伝までしてくれたってわけですね」

「全く…二度と刑務所から出てこないでもらいたいわ」

最後にシビルが憎々しげに言う。

「本当ね…今度こそ、パメラは重い罰を受けて…反省してもらいたいわ」

私はシビルに同意した。
けれどパメラはどうしようもない位に愚か者だ。どんなに重い罰を受けても反省は出来ないだろう。

「パメラは馬鹿な女だから、反省なんかすると思えないわ。それなら一生刑務所から出てこなければいいのに。それよりも…この様子だと、明日は大盛況になるかもね?」

ペリーヌは未だにクラスメイトたちとお客様達が私の手作り品を見せ合いながら、盛り上がっている様子を眺めながら言った。

「ええ、そうね。」

楽しげに談笑しているクラスメイト達とお客様達を見つめながら、私は頷いた。

きっと…明日は大勢お客様達が来てくれるに違いない―と。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

【完結】今夜さよならをします

たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。 あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。 だったら婚約解消いたしましょう。 シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。 よくある婚約解消の話です。 そして新しい恋を見つける話。 なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!! ★すみません。 長編へと変更させていただきます。 書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。 いつも読んでいただきありがとうございます!

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

わたしの旦那様は幼なじみと結婚したいそうです。

和泉 凪紗
恋愛
 伯爵夫人のリディアは伯爵家に嫁いできて一年半、子供に恵まれず悩んでいた。ある日、リディアは夫のエリオットに子作りの中断を告げられる。離婚を切り出されたのかとショックを受けるリディアだったが、エリオットは三ヶ月中断するだけで離婚するつもりではないと言う。エリオットの仕事の都合上と悩んでいるリディアの体を休め、英気を養うためらしい。  三ヶ月後、リディアはエリオットとエリオットの幼なじみ夫婦であるヴィレム、エレインと別荘に訪れる。  久しぶりに夫とゆっくり過ごせると楽しみにしていたリディアはエリオットとエリオットの幼なじみ、エレインとの関係を知ってしまう。

【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。 お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。 これからどうやって暮らしていけばいいのか…… 子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに…… そして………

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。 何もしていないのに冤罪で…… 死んだと思ったら6歳に戻った。 さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。 絶対に許さない! 今更わたしに優しくしても遅い! 恨みしかない、父親と殿下! 絶対に復讐してやる! ★設定はかなりゆるめです ★あまりシリアスではありません ★よくある話を書いてみたかったんです!!

処理中です...