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第99話 借り主判明
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この日も3人に接客業務についてレクチャーした。彼女たちは家でもラッピングの練習を怠っていなかったのだろう、始めて教えた時に比べると格段にスピーディーかつ、上手にラッピングすることが出来た。
「皆、ちゃんと練習してきたのね?偉いわ」
私が褒めると、3人は嬉しそうに笑っていた。そして17時まで接客の練習をした後、彼女たちは帰って行った―。
****
1人になった私は店の戸締まりをしっかり確認すると、持参してきた商品に値札を付ける作業を続けていた。
ボーン
ボーン
ボーン
やがて振り子時計が17時半を知らせる音を奏でた。
「デリク…どうしたのかしら?17時にはお店に来る約束だったのに…」
針仕事の手を休めて、時計を見ながらポツリと呟き…徐々に不安がこみ上げてきた。
まさか…また何者かに襲われてしまったんじゃ…。
「デリク…」
心配になり、思わず立ち上がった時。
コンコン
窓の外を軽く叩く音が聞こえ、振り向くとこちらを覗いているデリクの姿が目に映った。
デリクッ!
急いで鍵を外し、扉を開けるとデリクが目の前に現れた。
「デリクッ!」
私は思わずデリクに抱きついてしまった。
「アンジェラ…?」
「よ、良かった…。また貴方に何かあったんじゃないじゃないかと思って…心配で…」
自分の声が震えているのが分かった。
「ごめん…アンジェラ。遅くなって…」
私を抱きしめるデリクの腕の力が強まった―。
****
ガラガラガラガラ…
揺れる馬車の中、私とデリクは向かい合わせに座っていた。
「実は知り合いが不動産会社に勤めているんだよ」
デリクが私と別行動した後の話を始めた。
「そうだったの?」
「うん、それでニコラス達が住んでいる住所を見せたんだ。すると、あの家は運良く友人が勤めている不動産会社が管理している家だったんだよ」
「それは凄い偶然ね?」
「本当にそう思うよ。それで教えてもらったんだよ。あの家はいつ頃、誰が借りたのかを。そうしたら…見事に一致したんだよ。ニコラスがコンラート伯爵が住まわせてあげていた家を追い出された翌日にはあの家の賃貸契約が決まったって。しかも契約者はやはりコンラート夫人だったよ」
「では…伯爵が借りたわけでは無かったのね?」
「ああ、そうだよ。僕が思うに…ニコラスとパメラの件は多分夫人の独断で動いているんじゃないかな?恐らく…伯爵は何も知らないと思う。何しろ、未だにニコラスの事を怒っているし…」
「やっぱり…夫人は自分の息子を捨てる事が出来なかったって…事よね?」
「うん…恐らくは…」
「私、お父様に相談してみるわ」
「うん、その方がいいと思う。僕も立ち会わせて貰うよ」
デリクの言葉に私は頷いた。
「ええ、そうね。その方がいいと思うわ。デリクが暴漢に襲われた事や、私の店を誰かが覗いていたことも…解決させないといけないし」
全く…。
お店のオープンまで残り3日で、ニコラスやパメラを相手にするほど暇人ではないのに…一体何処まで彼等は私の妨害をしてくるのだろう…?
改めてニコラスとパメラに対し、怒りが募るのだった―。
「皆、ちゃんと練習してきたのね?偉いわ」
私が褒めると、3人は嬉しそうに笑っていた。そして17時まで接客の練習をした後、彼女たちは帰って行った―。
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1人になった私は店の戸締まりをしっかり確認すると、持参してきた商品に値札を付ける作業を続けていた。
ボーン
ボーン
ボーン
やがて振り子時計が17時半を知らせる音を奏でた。
「デリク…どうしたのかしら?17時にはお店に来る約束だったのに…」
針仕事の手を休めて、時計を見ながらポツリと呟き…徐々に不安がこみ上げてきた。
まさか…また何者かに襲われてしまったんじゃ…。
「デリク…」
心配になり、思わず立ち上がった時。
コンコン
窓の外を軽く叩く音が聞こえ、振り向くとこちらを覗いているデリクの姿が目に映った。
デリクッ!
急いで鍵を外し、扉を開けるとデリクが目の前に現れた。
「デリクッ!」
私は思わずデリクに抱きついてしまった。
「アンジェラ…?」
「よ、良かった…。また貴方に何かあったんじゃないじゃないかと思って…心配で…」
自分の声が震えているのが分かった。
「ごめん…アンジェラ。遅くなって…」
私を抱きしめるデリクの腕の力が強まった―。
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ガラガラガラガラ…
揺れる馬車の中、私とデリクは向かい合わせに座っていた。
「実は知り合いが不動産会社に勤めているんだよ」
デリクが私と別行動した後の話を始めた。
「そうだったの?」
「うん、それでニコラス達が住んでいる住所を見せたんだ。すると、あの家は運良く友人が勤めている不動産会社が管理している家だったんだよ」
「それは凄い偶然ね?」
「本当にそう思うよ。それで教えてもらったんだよ。あの家はいつ頃、誰が借りたのかを。そうしたら…見事に一致したんだよ。ニコラスがコンラート伯爵が住まわせてあげていた家を追い出された翌日にはあの家の賃貸契約が決まったって。しかも契約者はやはりコンラート夫人だったよ」
「では…伯爵が借りたわけでは無かったのね?」
「ああ、そうだよ。僕が思うに…ニコラスとパメラの件は多分夫人の独断で動いているんじゃないかな?恐らく…伯爵は何も知らないと思う。何しろ、未だにニコラスの事を怒っているし…」
「やっぱり…夫人は自分の息子を捨てる事が出来なかったって…事よね?」
「うん…恐らくは…」
「私、お父様に相談してみるわ」
「うん、その方がいいと思う。僕も立ち会わせて貰うよ」
デリクの言葉に私は頷いた。
「ええ、そうね。その方がいいと思うわ。デリクが暴漢に襲われた事や、私の店を誰かが覗いていたことも…解決させないといけないし」
全く…。
お店のオープンまで残り3日で、ニコラスやパメラを相手にするほど暇人ではないのに…一体何処まで彼等は私の妨害をしてくるのだろう…?
改めてニコラスとパメラに対し、怒りが募るのだった―。
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