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第93話 嫌な予感
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「あの日アンジェラからパメラの話を聞かされて、すぐに僕の知っている教会を訪ねたんだ。始めに訪ねたのは学園の一番近くにある教会だよ。だけどそこでは15歳未満の子供までしか預かっていなかったんだ。そこでシスターにこの町にある全ての教会の住所を聞いて、取りあえず訪ね歩いたんだけど…パメラを見つける事が出来なかったんだよ」
「え?」
「そんな…警察の人の話ではパメラは教会に身を寄せているって話だったのに?」
「うん、それで一番最後に訪れた教会の近くで途方にくれていたら、1人の男性が声を掛けて来たんだよ。その女性の居場所を知っているから案内すると言われて…。僕は疑うこと無くその人物の案内の通りに後ろからついて行ってしまったんだ。あの辺りは治安がいいから油断していたよ。そして路地に入った時、いきなり頭に強い衝撃を受けて…それきりだった。目が覚めたら病院のベッドの上だったんだよ」
「そ、そんな…」
「どうやら…気付かないうちに後をつけられていたのかもしれないな…」
「でも、それならやっぱり私のお店を覗いていたのはパメラだったのかもしれないわ…」
「でもニコラスの仕業かもしれない」
「え…?」
「僕自身もニコラスに恨まれているからね。彼は自分がコンラート家を出されたのは僕が原因だと思い込んでいるようだから」
「え?それは無いと思うわ。だって元々ニコラス様がコンラート家を出されたのは、私がニコラス様に婚約破棄を突きつけたからよ?」
「でもニコラスはこの家を出される時に…実は僕もあの場にいたのだけど、凄い目で睨みつけていったな…。挙げ句に『俺がこの家を出されるのはお前のせいだっ!』なんて言っていたし…」
「ニコラス…最低な男だわ…」
ついに、私はニコラスの名前を敬称無しで口にした。
「そうだね。アンジェラに酷いことばかりしてきたから…許せないよ」
デリクは悔しそうに言った。それが何よりも嬉しかった。
「貴方を襲った人物はまだ見つからないのかしら…」
「うん、そうだね。もう5日も経過しているからそろそろ犯人が見つかってもいい頃なのに…」
「本当よね。犯人が見つからなければ私、お店の方にも顔を出すことが出来ないわ。もうそろそろお店がオープンする時期が迫っているのに…」
その時―。
「アンジェラ、もうすぐ18時になるからそろそろ帰ろう。」
父がコンラート伯爵と共に部屋にやってきた。
「え?もうそんな時間だったのですか?」
私の言葉にコンラート伯爵は嬉しそうに言った。
「そうか、そうか。2人とも時間を忘れてしまうほど、話に夢中になっていたのだね?うん。仲が良くて宜しい」
「あ、ありがとうございます」
コンラート伯爵の言葉に思わず顔が赤くなってしまう。
「デリクさん。それではお大事になさって下さい」
人前だったので、私は敬称をつけて彼の名を呼んだ。
「うん、ありがとう。アンジェラ」
そうして私と父はデリクとコンラート伯爵に見送られて屋敷を後にした。
****
ガラガラと走り続ける帰りの馬車の中で、私は父に尋ねた。
「お父様、ニコラス様は…今どうされているのでしょう?確か監視をつけていたのですよね?」
「う~ん…実はその事なのだが…本日伯爵に聞いたのだが、ニコラス様はどうやら監視に気付かれたらしく、数日前に行方をくらましてしまったらしいのだよ。今、探しているらしい最中なのだが…まだ見つかっていないそうなんだ。やはり…監視が1人では足りなかったのだろうか…と伯爵は反省されていたよ」
「えっ?!そうだったのですかっ?!」
まさかニコラスもパメラも行方不明になっていたなんて…。
酷く嫌な予感がする。
そして、数日後…私の嫌な予感が的中する―。
「え?」
「そんな…警察の人の話ではパメラは教会に身を寄せているって話だったのに?」
「うん、それで一番最後に訪れた教会の近くで途方にくれていたら、1人の男性が声を掛けて来たんだよ。その女性の居場所を知っているから案内すると言われて…。僕は疑うこと無くその人物の案内の通りに後ろからついて行ってしまったんだ。あの辺りは治安がいいから油断していたよ。そして路地に入った時、いきなり頭に強い衝撃を受けて…それきりだった。目が覚めたら病院のベッドの上だったんだよ」
「そ、そんな…」
「どうやら…気付かないうちに後をつけられていたのかもしれないな…」
「でも、それならやっぱり私のお店を覗いていたのはパメラだったのかもしれないわ…」
「でもニコラスの仕業かもしれない」
「え…?」
「僕自身もニコラスに恨まれているからね。彼は自分がコンラート家を出されたのは僕が原因だと思い込んでいるようだから」
「え?それは無いと思うわ。だって元々ニコラス様がコンラート家を出されたのは、私がニコラス様に婚約破棄を突きつけたからよ?」
「でもニコラスはこの家を出される時に…実は僕もあの場にいたのだけど、凄い目で睨みつけていったな…。挙げ句に『俺がこの家を出されるのはお前のせいだっ!』なんて言っていたし…」
「ニコラス…最低な男だわ…」
ついに、私はニコラスの名前を敬称無しで口にした。
「そうだね。アンジェラに酷いことばかりしてきたから…許せないよ」
デリクは悔しそうに言った。それが何よりも嬉しかった。
「貴方を襲った人物はまだ見つからないのかしら…」
「うん、そうだね。もう5日も経過しているからそろそろ犯人が見つかってもいい頃なのに…」
「本当よね。犯人が見つからなければ私、お店の方にも顔を出すことが出来ないわ。もうそろそろお店がオープンする時期が迫っているのに…」
その時―。
「アンジェラ、もうすぐ18時になるからそろそろ帰ろう。」
父がコンラート伯爵と共に部屋にやってきた。
「え?もうそんな時間だったのですか?」
私の言葉にコンラート伯爵は嬉しそうに言った。
「そうか、そうか。2人とも時間を忘れてしまうほど、話に夢中になっていたのだね?うん。仲が良くて宜しい」
「あ、ありがとうございます」
コンラート伯爵の言葉に思わず顔が赤くなってしまう。
「デリクさん。それではお大事になさって下さい」
人前だったので、私は敬称をつけて彼の名を呼んだ。
「うん、ありがとう。アンジェラ」
そうして私と父はデリクとコンラート伯爵に見送られて屋敷を後にした。
****
ガラガラと走り続ける帰りの馬車の中で、私は父に尋ねた。
「お父様、ニコラス様は…今どうされているのでしょう?確か監視をつけていたのですよね?」
「う~ん…実はその事なのだが…本日伯爵に聞いたのだが、ニコラス様はどうやら監視に気付かれたらしく、数日前に行方をくらましてしまったらしいのだよ。今、探しているらしい最中なのだが…まだ見つかっていないそうなんだ。やはり…監視が1人では足りなかったのだろうか…と伯爵は反省されていたよ」
「えっ?!そうだったのですかっ?!」
まさかニコラスもパメラも行方不明になっていたなんて…。
酷く嫌な予感がする。
そして、数日後…私の嫌な予感が的中する―。
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